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モバイル時代のマーケティング戦略:ユニバーサル事例【SXSW2016レポート】
公開日: 2016/03/14

SXSW(サウス・バイ・サウス・ウエスト)2016:Big Box Office: Marketing Films in a Mobile World

Author:星野 有香

 

ー Saturday, March 12 2:00PM - 3:00PM : "Big Box Office: Marketing Films in a Mobile World"  URL

Doug Neil (NBCUniversal)×Jim Underwood (Facebook)

 

 

昨年、全メジャートップ、スタジオ歴代年間最高興収をたたき出したNBCユニバーサルのデジタルマーケティングの責任者 Doug Niel 氏が、その成功の秘密をFacebook上でのマーケティング展開を例にあげて解説。聞き手はFacebookのグローバルエンターティメント戦略責任者の Jim Underwood 氏。

 


Jim Underwood:
エンタテインメント業界におけるデジタル・マーケティング、特にモバイルの重要性は高まっており、最近では映画の最初の予告編はモバイル上で立ち上がるのがもはや当たり前となったことにSXSWに参加者は当然気づいているだろう。Facebookでも動画コンテンツの視聴、それもモバイル上での視聴が爆発的に増えているのが現状だ。スマートフォンでメールや写真を送るだけでなく、気づけば、生活動線が "Digitized" "Mobalized"され、いまや人々は毎日平均3時間スマートフォンを視聴、操作している。
マーケッターはそこでどう注目を集め、自分の商品を知ってもらい、購買行動につなげるのか。

ユニバーサルピクチャーズのデジタル・マーケティング戦略、特に、Facebookをモバイル上でどのように使ったのか、Doug Niel氏に聞く。
 


Doug Niel
映画のマーケティングにおけるモバイル戦略は重要性が年々大きくなっている。従来のマス向け大量TVスポット投下とは違った、デジタル・マーケティング、特にモバイルでの戦略的なアプローチが必要だ。昨年公開し、全米年間No.1興行収入はもちろん、世界興収オープニング歴代No.1記録した『ジュラシック・ワールド』はデジタル・マーケティングに注力し大成功となった。

Facebookでのモバイル戦略のポイントについて、クリエィティブ例をあげながら説明する。


モバイルならではのクリェイティブ表現で重要なこと (Tailor Creative for Mobile)

  • スクエアに近い縦長フォーマット
  • 音が出ないのがデフォルト
  • 最初の10秒のアテンションが大事
  • フィード(In Feed)でどうコミュニケーションするのか
  • インスタグラム用のカスタマイズ表現
  • カルーセル広告、スワイパブルビデオなど新しい表現の挑戦
 

広いリーチと、セグメント化したターゲティングが可能 (Reach a Large & Segmented Audience)

伝説のヒップホップグループN.W.Aの成功と挫折を描いた『ストレイト・アウタ・コンプトン』は、Facebookだからこそ可能なセグメント化されたターゲティングを行い、クリエィティブ表現も変えて、それぞれのターゲットに映画の内容を訴求した。

 

(例)ターゲット毎にクリエィティブを変えて訴求
左から、「アフリカ系アメリカ人 語り口のテンポの良さ、黒人と白人の対立」「一般のアメリカ人 物語、成り上がり成功と挫折」「ヒスパニック系アメリカ人 (Instagram)」

 

テストし、分析から学び、最適化した展開へ


Doug Neil
デジタル・マーケティングの利点は、目標のゴール(興行収入、動員目標)に向けて、明確な効果測定を行いながら最適化しながらマーケティング展開が行えることだ。公開から6~9カ月前くらいに(ティーザー)予告編をモバイル上で公開し、そのテスト結果を分析し、ターゲティングやクリエィティブについての学びから、最適化されたターゲットとクリェイティブを再構築し、公開直前のマーケティング展開に活かしていく。

 



Doug Niel
『ジュラシック・ワールド』のようなブロックバスター作品でなくてもモバイル戦略は重要だ。製作費が100万ドル(約1.2億円)の低予算映画『UNFRIENDED(日本公開未定)』はオンラインテストの結果を受け、宣伝費の約60%をデジタルマーケティング費に投下した。全米のオープニング興収は1600万ドル、最終興収は3200万ドルと大きな収益を上げることが出来た。

『ヴィジット』はM・ナイト・シャマラン監督の久々のヒット作品となったが、そこでもメッセンジャーのテキストをイメージしたモバイルクリェイティブ広告が話題となった。
そのほか、『SISTERS(日本公開未定)』ではFacebookならではの高いターゲティング精度を活かした妹、姉がいる人に対するセグメントされたキャンペーンやクリエィティブが大きな効果をあげた。

昨年の大ヒット作『ワイルド・スピード SKY MISSION』では、製作の段階からソーシャルフレンドリーなキャスティングが意図的に行われている。主演のヴィン・ディーゼルはソーシャルアクティブなことでも有名だ。キャスト達のSNS発信と、映画公式とのSNSプロモーションの連動が大きな成果をあげている。

また、この夏に公開となる『ペット』もSNS上のポストで圧倒的に多いのは子供とペットの写真ということでもわかるように、モバイル上で様々な展開ができる作品だと思っている。ますます、映画マーケティングにおけるデジタル・マーケティング、及び、モバイル戦略の重要性は高まるばかりだ。

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