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「100億円クラブ」の条件
公開日: 2017/05/26

2017年5月26日付毎日新聞夕刊映画欄において掲載された記事の転載です。
(C)2016「君の名は。」製作委員会

(C)2016「君の名は。」製作委員会

 

ディズニーの『美女と野獣』が、累計興行収入100億円突破も間近だ。過去5年間で100億円を超えた作品は『風立ちぬ』『アナと雪の女王』『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』『君の名は。』の4作品だけ。これら「100億円クラブ」の特色を、鑑賞意向者の調査データで見てみよう。

性別・年代別の意欲度は、それぞれ傾向がある。「アナ雪」は女性中心、年代は10~50代まで幅広い。「スター・ウォーズ」は男性中心、特に50、60代がやや強めだ。『君の名は。』は男女10代が圧倒的に高く20代が続くが、30代以降は急激に低くなる。『風立ちぬ』は女性10、20代が高めであることを除けば性別・年代別の差が小さく、まんべんなく広がる。『美女と野獣』は女性が高めで、年代別には10、20代と50、60代が高めというサンドイッチ構造だ。各作品とも上映中、変化はあまり起こらない。「アナ雪」は世代格差が小さくなったが、おおむね性別・年代別の傾向は変わらない。

一方、鑑賞頻度別では、年間12本以上映画館で見るヘビー層の鑑賞意向が、公開週では「100億円クラブ」でもライト層よりも高い。しかし、他作品よりその差が小さく、ロングヒットの中でさらに縮まる。

つまり、社会現象的な広がりには、コアな映画ファンの垣根を越えていることは必要だが、特定の性別・年代別をターゲットにして、話題度を高めるやり方もあるということだ。
 

(GEM Partners代表、梅津文)=毎月最終金曜日掲載

 

◆掲載元◆
毎日新聞:シネマの週末・データで読解 「「100億円クラブ」の条件」 (毎日新聞2017年5月26日 東京夕刊)

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