記事

第1章 “科学“と“技術”「2:『精緻さ VS 規模』、米大手ラジオ局が訴える両立の難しさ」
公開日: 2018/09/07

トップマーケターが語るマルチプラットフォーム戦略(2)
massive2018

 

消費者のメディア接触の傾向が変わるなか、マーケターが最適な結果を得られる戦略にはどのようなものがあるのでしょうか。ARやインタラクティブ端末の誕生により、オーディエンスや消費者にリーチできる新たなプラットフォームが登場しましたが、どのようにリーチすればよいのでしょうか。また、動画配信やSNSといったOTTの契約者数増加によってマーケターが手にするチャンスとは一体?

”MASSIVE The Entertainment Marketing Summit”で行われたパネル・ディスカッション“Marketing to the Multiplatform Fan”では、プラットフォーム間でファンを生み出す方法について、トップクラスのマーケターとマーケティング・パートナーが議論を交わしました。

 

※本記事で触れられているサービス内容はカンファレンス開催(2018年3月)時点の情報です。

 

 

デジタルマーケティングにおいて、「ターゲティングの『精緻さ』」と「リーチの『規模』」は両立するのでしょうか。広大な規模にリーチできる媒体”ラジオ局”を運営する大手アイハートメディアが、現在の方法論に疑問を呈しました。ターゲティングが意味をなさないのか。そもそも事前に想定したターゲティングが誤っているのか。その判断の一助となる例にご注目ください。

 

モデレーター:
ゲイル・フギット(Gayle Fuguitt)
フォースクエア(Foursquare) 顧客インサイト/イノベーション担当部門長

パネリスト:
ゲイル・トロバーマン(Gayle Troberman)
アイハートメディア(iHeartMedia) 最高マーケティング責任者
――米大手ラジオ局運営会社。

 

※登壇したパネリスト全員の概要は、連載第1回「第1章 “科学“と“技術”「1:データを解釈してストーリーを描け! 不可欠な定性分析」」をご覧ください。

 

「精緻さ」がもたらしたもの

 

 モデレーター
極めて大量のデータを取得できるようになったことで、私たちは精緻なターゲティングができるようになりました。しかしながら、ラジオは広範囲なリーチ規模を可能としており、広く普及していいます。ブランドマーケティングに携わるものがすべきことはなんでしょうか。

 

 ゲイル・トロバーマン(アイハートメディア)
私はインターネット黎明期、そしてデジタルマーケティング時代のマイクロソフトで働いてきました。12年前、今回のようなパネル・ディスカッションに参加して、「これからはあらゆるデータが手に入るので、精緻なマーケティングが可能になり、無駄な投資は一切なくなります。素晴らしい時代になるでしょう」と言ったのを覚えています。そこから大きく進歩してきたのは確かです。

しかし、正直に申し上げると、精緻なターゲティングを行っても、すべてが売上に直結しているわけではありません。どれだけデータを集めて最適化しても、マーケターはマーケティングの重要なパーツを失ったと考えてしまうのです。それは、規模です。そう思いませんか?

 

新たな課題

 

 ゲイル・トロバーマン(アイハートメディア)
放送媒体は今でも広範囲にリーチできるので、バランスが大切となります。あるリサーチによると、売上の半分ほどが想定したターゲット層以外の購入から来ているブランドがほとんどだそうです。我々は自分たちが想定したターゲット層以外も購入・利用してくれる可能性がある事実から目を背けて、精緻に設定したターゲット層だけに照準をあててメッセージを発信してきました。層を限定していることで、多くの消費者を失っているのです。

アイハートメディアは米国で毎日、毎週、毎月、2億7100万人のリスナーにリーチしています。これはフェイスブックやグーグルよりも多い数値です。しかし、このデータ時代にリーチ規模は軽視されています。とはいえ、事前に想定したターゲット層以外にリーチした際の影響力を改めて測ると、その大きさには大変驚かされるのです。



第1章 “科学“と“技術”
3:自社サービスで映画業界エコシステムを確立

 

 

トップマーケターが語るマルチプラットフォーム戦略

 

レポート・データ解説