記事

第2章 “プラットフォーム”と“消費者”「1:消費者の対話に参加せよ!」
公開日: 2018/10/19

トップマーケターが語るマルチプラットフォーム戦略(5)
massive2018

 

消費者のメディア接触の傾向が変わるなか、マーケターが最適な結果を得られる戦略にはどのようなものがあるのでしょうか。ARやインタラクティブ端末の誕生により、オーディエンスや消費者にリーチできる新たなプラットフォームが登場しましたが、どのようにリーチすればよいのでしょうか。また、動画配信やSNSといったOTTの契約者数増加によってマーケターが手にするチャンスとは一体?

”MASSIVE The Entertainment Marketing Summit”で行われたパネル・ディスカッション“Marketing to the Multiplatform Fan”では、プラットフォーム間でファンを生み出す方法について、トップクラスのマーケターとマーケティング・パートナーが議論を交わしました。

 

※本記事で触れられているサービス内容はカンファレンス開催(2018年3月)時点の情報です。

 

モデレーター:
ゲイル・フギット(Gayle Fuguitt)
フォースクエア(Foursquare) 顧客インサイト/イノベーション担当部門長

パネリスト:
レベッカ・ドハーティ(Rebecca Daugherty)
ABC/ABC スタジオ(ABC and ABC Studios) 執行副社長兼マーケティング部門長
――米ウォルト・ディズニー・カンパニー傘下の放送ネットワーク/テレビ番組制作会社

JP・リチャーズ(JP Richards)
ワーナー・ブラザース・ピクチャーズ(Warner Bros. Pictures) ワールドワイドマーケティング担当執行副社長兼チーフ・データ・ストラテジスト
――映画製作・配給会社。

アダム・ロックモア(Adam Rockmore)
ファンダンゴ(Fandango)上級副社長兼マーケティング/コミュニケーション部門長
――FandangoやRotten Tomatoes、FandangoNOW、Flixsterなどのサービスを展開

 

※登壇したパネリスト全員の概要は、連載第1回「第1章 “科学“と“技術”「1:データを解釈してストーリーを描け! 不可欠な定性分析」」をご覧ください。

様々なプラットフォームを行き来する消費者を前に我々がすべき対策とは? トップマーケターが出した答えは、パートナーとの協働を通じて、消費者の“対話“に参加することでした。では、我々はどのようにパートナーと寄り添うべきなのでしょうか。さらに言えば、なぜ寄り添うべきなのでしょうか。ワーナー・ブラザース、ファンダンゴ、ABC/ABC スタジオのトップマーケターがその理由を明かします。

 

1:成功に不可欠なパートナーの存在

 

 モデレーター
意識していないかもしれませんが、本日この会場にお越しの皆さんは将来パートナーシップを組む相手と並んで腰をおろしているのかもしれません。今日、映像業界において単独で何かを成し遂げる者はいないと言っても過言ではないでしょう。そこで、今回はみなさんにパートナーシップのありかたについて伺っていきたいと思います。

 

 JP・リチャーズ(ワーナー・ブラザース・ピクチャーズ)
パートナーというものは、今日の我々の業務にとって重要かつ、欠かすことのできない存在です。今は彼ら/彼女らにとって非常に大変な時代かもしれません。2週間の間に20本の映画と18本の番組を手がける必要があったりしますからね。しかし同時に、不可能だと思っていたことができるようになったという点において、極めて輝かしい時代でもあります。

ワーナー・ブラザースは、映画製作会社が開始を宣言さえすれば、宣伝活動が自然に行われるとは思っていません。パートナーの力は必要不可欠です。例えばリソースを獲得する際、社内を説得するために彼らに頼らなくてはなりません。扱っている案件の価値を社内で認めてもらう必要があるのです。認めてもらって初めて映画製作が始まるので、ワーナーブラザースではかなり初期の段階からパートナーに参加してもらっています。

パートナーには初期段階から撮影現場に来ていただいているのですが、私はこれを非常に誇らしく思っています。実際に製作者と言葉を交わし、タレントに会い、戦略を一から十まで知ってもらうことで、我々のプロセスの一部になってもらうためです。我々にとっての成功はパートナーにとっての成功であり、ともにウィニングランを迎えるべきなのです。そうすることで一連の流れにしっかりと取り組んでもらえるのです。

映画製作において何らかの問題に直面したり、絶好の機会に恵まれたり、そのほかのことでも何かがあれば、パートナーに伝えなければいけません。知らせておかなければ、質問をぶつけてもベストな回答は得られないからです。クリエイティブ面においても、データ面においても、パートナーは必要です。デジタル面でのパートナーだけではありません。パートナーとは、我々の考えを熟知し、宣伝活動をスケールアップするために仕事をともにするすべての人なのです。消費者のタッチポイントや消費者へのアプローチ方法が無数にあるなか、パートナーは今まで以上に我々の成功に不可欠になってきているのです。

 

パートナーシップ

 

 

2:消費者を自社サイトに呼び込むだけでは不十分

 

 アダム・ロックモア(ファンダンゴ)
これまで多くのパートナーと提携できたという点で、我々は幸運です。映画製作会社や劇場、家電メーカー、そしてプラットフォーマーなどといった企業とパートナーシップを築いてきました。現在、我々が注目しているのは、アクセス数を伸ばし、消費者を自社のプラットフォームに呼び込むだけでは不充分であるということ。つまり、様々な場所で消費者が展開している“対話“に参加していなければならないということです。

消費者はFacebook上で活動したり、アマゾンのスマートスピーカー「Echo」を利用したり、アップル端末でメッセージのやりとりをしています。彼ら/彼女らはこのように様々な場所で“対話”を終始行っているのですから、我々もそこでビジネスを行わなければならないのです。例えば、アップルやフェイスブックとパートナーシップを組んだ場合、最も自然な宣伝方法は相互協力です。三者三様の活動をする代わりに、映画素材を提供したり、上映スケジュールを知らせたり、果てはチケットを購入できるようにもする。つまり、すべてをひとつの“対話“のなかで完結できるようにするのです。

パートナーとの協働において我々が重視しているのは、消費者体験やパートナー体験が自然な流れに沿っているかを見極めることです。消費者を自社サイトに呼び込むだけでは、もはや充分ではありません。消費者が望む場に自分の製品や体験を持っていくことが重要なのです。この意味でも、パートナーシップは不可欠であると言えるのではないでしょうか。

 

3:成功につながる唯一の方法とは

 

 レベッカ・ドハーティ(ABC/ABC スタジオ)
ここで少しだけ話題を変えましょう。私にも日々感謝してもしきれない社外のパートナーが大勢います。しかし、ここで社内のパートナーにも少し目を向けてみませんか。今の会社ほど密に広報部とマーケティング部がつながっている組織で働いたことはありませんでした。文字通り足並みをそろえて仕事に取り組み、お互いの業務の成果をより大きなものにするようサポートし合うことで、非常に高い効果をあげています。

実は我々は長年にわたって「デジタル要員が不足している!」とばかりに増員を繰り返した結果、お互いを認識できず連携が取れない状況になっていたのです。もちろん、他の要因もあるでしょう。とはいえ、我々は大変な努力を重ねて「彼らはデジタルチームの人でしたっけ?」という状況を脱しました。放送媒体チームであっても、PRチームであっても、何チームであっても、全員がマーケティングチームなのです。それぞれのスキルをお互いのために発揮し、一緒に動いていかなければならないからです。ひとつのチームとして働くことが、成功につながる唯一の方法だと私は固く信じています。



第2章 “プラットフォーム”と“消費者”
2:「消費者」を超える「ファン」

 

 

トップマーケターが語るマルチプラットフォーム戦略

 

レポート・データ解説