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映画業界発展のための業界団体のミッション
公開日: 2019/02/08

特集:米映画市場をめぐるMPAAの期待とIFTAの懸念(1)
afm2018

 

2018年11月、米国カリフォルニア州サンタモニカで開催された映画見本市アメリカン・フィルム・マーケット(AFM:American Film Market)より、映画業界団体のトップが登壇したカンファレンス“The Global Perspective”をレポートします。

米通信大手AT&Tとタイム・ワーナーや ウォルト・ディズニー・カンパニーと21世紀フォックスの事業統合、動画配信サービス大手ネットフリックスのアメリカ映画協会(MPAA)加盟など、産業構造の変化が進む映画業界。同カンファレンスでは、米メジャースタジオが加盟するMPAAのチャールズ・H・リブキン会長兼CEOと、インディペンデント系の映画/テレビプロデューサー、ディストリビューターが加盟するインディペンデント・フィルム&テレビジョン・アライアンス(IFTA)のジーン・M・プレウィットCEOが、双方の立場から激動の時代を迎えた映画業界の現状と展望に対する見解を話しました。

 

モデレーター:
エリック・シュワーツェル(Erich Schwartzel)
ウォール・ストリート・ジャーナル(The Wall Street Journal) 映画業界担当

パネリスト:
ジーン・M・プレウィット(Jean M. Prewitt)
インディペンデント・フィルム&テレビジョン・アライアンス(IFTA:Independent Film & Television Alliance) CEO

チャールズ・H・リブキン(Charles H. Rivkin)
アメリカ映画協会(MPAA:Motion Picture Association of America) 会長兼CEO

 

第1回は両団体が映画業界発展のためのしてきたこと、すべきことについてフォーカスしました。自社系配給網を持つMPAA会員とは異なり、第三者に委ねなくてはならないIFTA会員。立場の異なる業界団体のトップが現在の映画市場対して感じていることとは?
※本記事で触れられているサービス内容はカンファレンス開催(2018年11月)時点の情報です

 

IFTA:大手プラットフォームの影響を危惧

 

 ジーン・プレウィット(IFTA)
IFTAはインディペンデント系スタジオの連合であり、アメリカン・フィルム・マーケット(AFM)の主催者でもあります。インディペンデント系スタジオ最大の特徴は、第三者の手で作品を配給することです。彼らは日々、各国の市場関係者と協力してオーディエンスに作品を届けるべく奮闘しています。我々は、これまで一貫して市場に彼らがアクセスできるように注力してきました。

このように事業者団体として我々の市場に対する見方は、MPAA(アメリカ映画協会)とは若干異なります。MPAAの会員は、配給をコントロールするだけの力を持っているため、自社で製作した作品は何らかの形で公開にこぎつけることができます。しかし、インディペンデント製作者にとっては簡単なことではありません。

IFTAは常にローカル市場の状態に目を光らせています。海賊版の影響もそうですし、配給会社が我々の作品を買付・公開してくれる能力があるかどうかにも目を配っています。また、会員が製作する作品の買付の際、競合しうる配給会社を市場から追い出してしまう可能性のある大手プラットフォームの影響も気になるところです。

この点に関してIFTAは、社内に法務部門を持たないインディペンデント系スタジオに対し、彼ら特有のニーズに向けた様々なサービスを提供しています。彼らには調査部門もなく、自分たちが基本としている製作契約の締結を推し進めるだけの市場知識もありません。我々は事業者団体としてそこに介入し、関連サービスを提供するだけではありません。業界を標準化に向けて動かしていくことも、我々ならば可能です。事実、国際的に利用されている基本製作契約は我々が作成したものなのです。

 

 

MPAA:今こそが世界中の映画やTV作品を盛り立てる時期

 

 チャールズ・リブキン(MPAA)
IFTAとMPAAは世界中で協力して問題解決にあたってきました。実際、私は地球上のあらゆる大陸、数えきれないほどの国で、ジーンと共に仕事をしてきました。私の考えでは、MPAAとIFTAが組めば、どんな国のクリエーターであっても、手を差し伸べることができるでしょう。

また、創作に基づく強力なビジネスを推進する団体を率い、効果的な著作権法で創作物を保護し、海賊版を削減し、世界市場へのアクセス性を高め、映画やTVの作品製作を奨励し、アメリカを始めとする世界各国での雇用創出を図る役割を担っていることも、誇りに思っています。

今日、アメリカは驚くべきクリエイティビティの時代にあります。あらゆる境界線が広がり且つ曖昧になり、TVとは何かが再定義され、コンテンツを必要とする新たな配信プラットフォームが毎日のように誕生しています。映画館についても、未来は明るいと言えます。2017年の全世界興行収入は406億ドルに達し、2018年は更に上回る見込みで推移しています。

『クワイエット・プレイス』『ブラックパンサー』などの革新的な作品が、ジャンルの壁を書き換えつつあります。最近では、『クレイジー・リッチ!』のようにダイバーシティを反映した魅力的なストーリーや、『ファースト・マン』に代表される、我々が社会としてできることを感動的に描く作品等、映画史に残る作品が発表されています。今こそが、世界中の映画やTV作品を盛り立てる時期なのではないでしょうか。

特集:米映画市場をめぐるMPAAの期待とIFTAの懸念

 

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