記事

強力な顧客データ×オリジナル作品が生む新たな広告手法
公開日: 2019/07/12

動画配信サービスの成功事例研究:大手小売り事業者による戦略(3)

 

米スーパーマーケット大手ウォルマートには、毎週1億5000万人が訪れます。さらにECサイトも運営するなど、保有する顧客データは膨大かつ強力。ウォルマート傘下にある動画配信サービス「Vudu」は、その顧客データを武器に、新たな広告手法を打ち出しました。連載第3回は、オリジナル作品の製作を推し進めるVuduが構築するAdVOD戦略の背景に迫ります。
※本記事で触れられているサービス内容はカンファレンス開催(2019年3月)時点の情報です

 

《目次》

 

商品を迅速に最安値で提供可能、ウォルマート傘下の強み

 

 モデレーター
オリジナル番組を通じて実際の商品購入を促す仕組みがあると伺いました。多くのブランドを抱えるウォルマート傘下として、どのような方法を用いるのか教えていただけませんか。

 

 ジュリアン・フランコ(ブードゥー)
先週読んだある記事で、「広告費に対する効果を測りたければ、購入できるようにすることだ」と書いてありました。我々もまさにそのとおりだと思っています。商品を売っているわけですからね。我々は商品配送に長けています。ロジスティクスが我々の得意分野であることに気がついたとき、「これは運がいい。やるべきことをやるのだ」と思いました。ウォルマートには、商品配送に長けた従業員が多くおり、可能な限り迅速に、そして最安値で提供できるわけですから。

広告ユニットに購入機能を実装すべきなのは明らかです。例えば、衣料用洗剤「タイド」の広告を見たとします。欲しいタイプが液体でも、シートでも、ジェルボールでもたやすくウォルマートのカートに入れられるようにすべきなのです。非常に基本的なことですよね。そして、その機能はすでに実装されています。

コンテンツ側での対応ですが、ウォルマート傘下のECサイト「Hayneedle」のパートナー企業の場合、オリジナル番組冒頭に登場するセットに彼らの商品を入れ込みました。その企業からは、「素晴らしい。だが、もう少し憧れるような要素があるといい。こういったものが見たいんだ」といって資料を提供してくれました。我々はその資料をロケーションスカウトチームに渡したのです。その資料は、ここロサンゼルスではなくシカゴを舞台にしており、そこではリーズナブルな価格で美しいキッチンを手に入れられるというストーリーが記されていました。

実際に実装する機能としては、クリックするとオーバーレイ表示で詳細な情報が表示されるようにすることです。そして次の段階ではメールを送り、そのキッチンについてより詳細な情報を手にしてもらい、さらに購入できるようになっているわけです。

 

 

ブランドの垣根を超えた多彩な広告枠

 

 モデレーター
どういったものを購入できるんですか? 台所用品のようなものでしょうか。

 

 ジュリアン・フランコ(ブードゥー)
Hayneedleでは家具を扱っており、キッチンのシーンに登場したスツールを購入できます。さらに登場したアクセサリーを購入できるページへ遷移するリンクもあります。シェリー・ハフがHayneedleを率いているのですが、彼女は家具を扱うHayneedleほかDot.ComやJet.comの責任者も務めています。つまり、エピソード毎に多彩な商品を登場させられることを意味しています。オフィスのシーンやリビングルームのシーンで買い物ができるわけですね。

 

 モデレーター
最後の質問です。VuduはAdVODサービスに注力していますが、どこかの段階でSVOD(定額制動画配信)サービスのローンチを検討していたことはありましたか。消費者をウォルマートのSVODサービスに囲うことはできないのでしょうか。

 

 ジュリアン・フランコ(ブードゥー)
上司のスコットと先程話していたのですが、彼はうまく説明していました。私は彼のように雄弁には語れません。我々がSVODサービスに参入するという噂がありましたし、参入しないとの噂もありました。どちらも真実ではありませんでした。

 

 モデレーター
推測にとどめておきましょう。ディスカッションはここで終わりとします。どうもありがとうございました。

 

動画配信サービスの成功事例研究:大手小売り事業者による戦略

 

レポート・データ解説