第5章 『アナ雪』『ファブル』他から成功パターンを探る!

「意欲/認知」の理解で“攻めの宣伝戦略”
第5章 『アナ雪』『ファブル』他から
成功パターンを探る!

「CATS」データの重要な指標である認知意欲意欲/認知に焦点を絞り、有用性を紐解くコラムの第5章。前章では意欲/認知の重要性が増してきていることをご紹介しましたが、今回は実際に意欲/認知を高めることができた作品の傾向を探り、成功パターンを分析していきます。

第5章 目次

公開週にむけた躍進! 『アナと雪の女王』はやっぱり凄かった

第3章で「意欲/認知は全体の平均値をとると、『ほぼ横ばい』になっている」と述べました。しかし、これはあくまで全作品の平均値の話であり、すべての作品の意欲/認知が”横ばい“、ということを意味するわけではありません。例えば以下のグラフは、『アナと雪の女王』(2014年公開)における、公開12週前から公開週までの意欲/認知の推移です。

本作では公開が近づくにつれて意欲/認知が大幅に上昇しています。『アナと雪の女王』の大ヒットの予兆は、意欲/認知の推移にもすでに現れていたというわけです。このように、全体平均では“横ばい”傾向の意欲/認知ですが、作品毎にみると大幅に上昇したケースもあります。

『アナと雪の女王』は、意欲/認知とともに認知も大きく伸ばした作品でもありました(下グラフ参照)。そのため、その相乗効果で意欲が上昇し、公開にむけて期待される興収を効率的に高めたと言えます――もちろん、最終興行収入255億円の背景には、公開後の評判やリピートの効果もあります。

意欲/認知の上昇ランキング首位は『インセプション』

意欲/認知を大幅に上げることに成功した作品には、他にどのようなものがあるのでしょうか? 実写作品、アニメ作品分けて意欲/認知の上昇ランキングをみると、下記のような順位となりました。ご覧のように、実写作品のランキング上位は、ほぼ洋画作品で占められています。

実写の1位は『インセプション』、2位は『ダーク・シャドウ』、3位は『マネーボール』、以下『グレイテスト・ショーマン』『インビクタス/負けざる者』……と続いていきます。一方、アニメの1位は宮崎駿監督の(当時は)最後の作品とされた『風立ちぬ』、そして2位は前述の『アナと雪の女王』となりました。

それでは実写・アニメ合わせて1位となった『インセプション』の意欲/認知の推移を具体的に見てみましょう。以下のグラフをご覧ください。公開3週前から意欲/認知が大きく高まっているのが分かります。

本作の意欲/認知の動きを、認知、意欲、およびテレビ露出の推移と合わせてみると以下のグラフのようになります。※本作公開当時(2010年)はYouTubeデータを取得していませんでした

公開10週前、8週前の番組露出のタイミングでは認知の上昇は小さいですが、意欲/認知がしっかり高まっているのが読み取れます。つまり、このタイミングの露出効果は、認知者内における意欲の獲得であったことが分かります。本作のクリエイティブ/訴求内容の効果の高さが、このタイミングですでに表れていたのです。

そして公開3週前からテレビCMの露出が本格化すると、意欲/認知が一段高まるとともに、認知も跳ね上がり、意欲が大きく上昇しました。このように本作はテレビでの訴求が非常に効果的であった例と言えます。

『インセプション』の最終興行収入は35億円でした。もし、意欲/認知が公開12週前付近の4~6%程度のまま伸び悩んだとしたら、公開週の認知率は同じだったとしても、意欲率は1/3強となり最終興行収入は10~15億円程度に留まった可能性があります。このように本作は意欲/認知を大きく伸ばすことで、意欲を効果的に高められ、最終興行収入に大きなインパクトを与えられた作品と言えます。

アカデミー賞受賞をきっかけに上昇した『グリーンブック』

2019年に絞った意欲/認知の増減値ランキングを見てみましょう。今度は、洋画・邦画にランキングを分けてみました。まずは洋画のランキングから見てみましょう。

2019年の意欲/認知の上昇ランキング洋画1位は『グリーンブック』でした。本作の意欲/認知の推移は以下のグラフの様になっており、公開3週前に意欲/認知が一段高まっています。

本作の動きを、認知、意欲、テレビ露出、YouTube再生数の推移と合わせてみると下記のようになります。

本作が第91回米アカデミー賞にノミネートされたのは、本作の公開5週前のタイミングで、5~4週前の2週にわたり番組露出がありました。しかし、このタイミングでは意欲/認知、認知ともに特に反応は見られず、少し遅れて公開3週前で意欲/認知が一段高まっています。本作は露出一発で意欲を獲得する分かりやすい作品というより、露出後に意欲/認知が高まっていることから、情報が広まるにつれて市場がじわじわと”温められる”タイプの作品だったと推察されます。

――2019年の米アカデミー賞では、『未来のミライ』『万引き家族』と言った邦画作品のノミネート、『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』での日本人ノミネート・受賞、さらに動画配信作品で話題となった『ROMA/ローマ』など、本作以外でも話題を集めた作品が多くありました。あくまで推察ですが、情報過多により、本作への意欲浸透にタイムラグがあったのではないでしょうか。

そして、ちょうど公開週に見事、米アカデミー賞作品賞を受賞。テレビ番組露出が1,200GRP以上出るとともに、CMGRPも約400GPR、YouTube再生数も前週の10倍と一気に露出が拡大しました。結果、意欲/認知をキープしたまま認知が一気に拡大することで、効率的に意欲が上昇するという動きとなりました。

デジタルとテレビ露出の組み合わせで引き上げた『ザ・ファブル』

続いて邦画のランキングを見てみましょう。

2019年の邦画における意欲/認知の上昇ランキング1位は『ザ・ファブル』でした。本作の意欲/認知の推移をみると、公開8週前、5週前、2週前で意欲/認知が一段高まっています。

本作の動きを、認知、意欲、テレビ露出、YouTube再生数と合わせてみると下記のようになります。

公開の10~8週前にYouTubeとテレビ番組で、「レディー・ガガ」の主題歌情報解禁の露出がありました。即時の意欲/認知への反応は見られませんが、YouTubeでの10~8週前の露出の蓄積が8週前の意欲/認知の上昇に寄与した可能性があります(他メディアでの露出もあるため、この分析のみで結論づけることはできません)。

次に公開5週前に実施された完成披露イベントの露出で、意欲/認知を高めています。そこから、YouTubeなどでの新動画の露出により意欲/認知を維持しつつ、公開2週前にテレビ番組・CM露出で意欲/認知を大きく上昇させました。そして、そのまま公開週に向けて、テレビ番組・CMでの露出を増やすことで、一気に意欲を高めたという流れとなっています。本作はこのようにデジタルとテレビ露出をうまく組み合わせ、意欲/認知を高めた好例になっています。


2019年の洋画・邦画それぞれでにおける意欲/認知の上昇ランキング1位の『グリーンブック』『ザ・ファブル』について、意欲/認知が上昇する流れを検証しました。一方はアカデミー賞受賞の洋画ドラマ、他方は邦画アクションと、作品特性としては大きく異なりますが、どちらも認知の本格的上昇の前に意欲/認知の底上げに成功しています。そして、この底上げにより高まった意欲/認知(温まった市場)を前提に、公開直前に認知を一気に拡大することで効率的に意欲を高めたという点においても共通した流れとなっており、ひとつの成功パターンと言えます。

次章では、意欲/認知の上昇ランキング上位作品を分析し、上昇幅の大きい作品傾向をご紹介します。


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