ハリウッドでのターゲティングとクリエイティブにおけるデジタルマーケティング活用
公開日: 2017/11/02
この連載は、2017年春に、ロサンゼルスで開催された米バラエティ誌主催の映像業界関係者向けのカンファレンス”MASSIVE The Entertainment Marketing Summit”において、デジタルマーケティングのトップやプラットフォームパートナーたちが、モバイルメディアでのマーケティングコミュニケーションの事例を語ったセッションレポートです |
スピーカーやセッションの概要は、連載1回目「モバイル時代にヤフーが唱える「コミュニテインメント」」をご覧ください。
※本記事で触れられているサービス内容はカンファレンス開催(2017年春)時点の情報です
◆ ◆ ◆ ◆
デモグラだけじゃない、もっと心理的な面にも着目したターゲット選定
ゲイル・フギット(モデレーター)
エリアス(ソニー・ピクチャーズ)、あなたのおっしゃったことで目からウロコが落ちる思いがしました。「ブランディングはターゲットを設定せずに開始すべきである」という言葉だったのですが、それについてもう少し詳しくご説明いただいて、それをプラットフォームとしてどう推進していくのか教えてください。
エリアス・プリッシュナー(ソニー・ピクチャーズ)
映画宣伝の第一歩まで戻るとすれば、一般的には予告編の公開ということになります。劇場公開の何ヶ月も前にリリースするのですが、映画館で目にしてくれた人の注意をひいたとしても、それ自体は喜ばしいことですが、誰が興味を持ってくれたかについてはほとんどわかりません。
それに対し、現在私のチームが注力しているのは、「モバイルを中心としたオンライン上でコンテンツを公開すること」です。ツイッターのフィード等で消費者の反応がわかるだけでなく、顧客についての情報収集の第一歩となることが大きなメリットです。我々のブランドとすでに接触しているため、様々な方法で抵抗なく興味の有無を示してくれます。
わかるのはデモグラフィックだけではありません。よく耳にするのが「ターゲットは○~○歳」という表現ですが、たとえば18~34歳の人を20人連れてきたとして、その全員が我々の映画を観たいと思っているなんてありえないと、私は常々言っています。嗜好も違えば人生のどんなステージに立っているかも違うからです。
ですから、我々はもっと深掘りし、心理的な面に注目します。何に興味があり、我々のどこに親近感を抱くのか。そして、それをもとに宣伝活動のターゲットを選定します。
消費者は自分の都合に合わせた形で、自分たちの生活圏で、我々と接触してくれる
エリアス・プリッシュナー(ソニー・ピクチャーズ)
ターゲットを設定せずに宣伝活動を開始し、コンテンツをプランニングして公開する中で、その映画の本当のターゲットを絞り込んでいくのが妥当です。そして、消費者は自分の都合に合わせた形で、自分たちの生活圏で、我々と接触してくれます。ジオロケーション・インプリントを使えば、彼らのいる場所はすぐにわかります。
そのコンテンツはモバイルでの視聴に最適か?
エリアス・プリッシュナー(ソニー・ピクチャーズ)
もうひとつ私が重視しているのは、実際のモバイルコンテンツ制作です。経営陣に最初に予告編を観せる際には、会議室の大きなスクリーンを使用します。灯りを暗くし、ボリュームを上げた状態でレビューするのです。それから言います。「90%の視聴者は今のような環境で観ることはありません。むしろ、こちらで観るでしょう」
私のスマホをプラグインします。いつも経営陣にはこうやって確認してもらいます。デバイス上で観てもらうのです。そうすることで、実際の消費者の視聴状況を理解させます。つまり、我々は予告編だけでなく、その他のコンテンツもモバイルに最適化したものを制作します。まったく変えるのです。多様なサイズでフォーマットし、音声をオンにして視聴する場合もオフにする場合もあることを念頭においたコンテンツ制作を心がけます。
音声がなくても映画のポイントを伝えられるよう、特別な工夫をします。例えばTV 広告ではつかみのシーンを最後に持ってきます。しかしオンライン、特にモバイルでは、最後まで視聴しないことが想定されます。そこで、つかみのシーンは最初に提示します。つまり、この3つのポイントが鍵です。オンライン用、特にモバイル用の最適化にあたっては、サイズ、音声、そして最初の3秒に注意を払うのです。
マーク・ヤング(ファンダンゴ)
まったく同感で、この線に沿って少々付け加えさせていただきます。モバイル上のキュレーションやリージョナルコンテンツに関しても、自動再生や音声のオン/オフ、消費者の文脈に対する理解などすべての要素を最適化することが重要です。我々のビジネスは映像クリップを中心にしたビジネスですが、我々の持つ映像クリップは、映像ライブラリに収められた映画の予告編だけでなく象徴的なシーンやお気に入りシーン、そして映像ヒストリーを収めたものなど70,000にも上ります。
つまり、我々は消費者との間に深いエンゲージメントがあるのです。まず映画に対する情緒的な反応があり、ハンドレイズする者がいれば皆が「観に行きたい」となるわけです。
我々がやろうとしているのは、その関心をチケット購入であれ有料視聴であれ購買行動に結びつけることです。従って、フォーマット要件を満たし、かつ視聴環境に合った内容で短いバージョンのコンテンツは非常に重要です。
あなたの興味に沿って、きっと共感されると思うものがここにある
エリアス・プリッシュナー(ソニー・ピクチャーズ)
そうですね。ほとんどの映画に対して、我々は消費者を40ほどの心理グループに分類し、公開日が近づいたところでターゲットごとにコンテンツを用意します。
クルマ好き向けのものあれば、音楽ファンや出演者のファン向けのものもあります。率直に言うと、それぞれがまるで違う映画の予告編のように見えるのです。なぜならば、伝えるべきメッセージは「あなたが何に興味があるかわかっています。興味に沿ってお話ししていて、きっと共感されると思うものがあるので、ぜひお勧めしたいのです」だからです。これにより、心理的情報が有効なマーケテイングツールになるのです。
<次回、本連載のまとめ に続く >
GEMのデジタルマーケティングソリューション
今回の記事に登場するような「心理的な面に注目したデジタルマーケティング」に近づくべく、蓄積した膨大なデータと独自の分析をもとにした、映画宣伝のデジタルマーケティングのプランニング実行を行っています。
ビッグデータや映画鑑賞者のインサイトを活用した宣伝にご興味のあるかたはお問い合わせください。
狙い通り!モバイル時代のターゲットプロモーション
- (1)モバイル時代にヤフーが唱える「コミュニテインメント」
- (2)ファンダンゴの「デジタルエコシステム」創造と既存顧客ベースの「映画ファン向けEC」
- (3)つぶやきに「コンテンツ」が加わったTwitterの変化
- (4)テレビ視聴行動の再発明?誰が番組を視聴し、TV広告に接触したのか
- (5)データと効果測定で知る顧客行動 - 広告を見た人のうちどれだけの人が映画館に足を運んだのか
- (6)ハリウッドでのターゲティングとクリエイティブにおけるデジタルマーケティング活用
- (7)マーケッターはいま、どうお金を使うべきか?
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