【動画配信市場編】2018年映画・映像市場をマーケティングデータで振り返る
公開日: 2018/12/25
注目の高い動画配信市場。2018年の動きをGEM Standard発表のデータをもとに整理いたしました。
年初までの動画配信市場全体の動き
弊社が行った消費者調査によると、2017年の動画配信市場規模は1,829億円※となりました。このうち、配信タイプ別の市場シェアは、SVOD(定額制動画配信サービス:Subscription VOD)が75.6%、TVOD(レンタル型動画配信:Transactional VOD)が12.7%、EST(動画配信販売:Electric Sell Through)が11.7%と推計されました。また、動画配信市場規模は、2022年に2,594億円まで拡大するという試算結果も得られています。
本調査では、SVODに関するサービス事業者別の市場シェア推移の推計も実施しました。そのなかで特に4位の「Amazonプライム・ビデオ」、5位の「Netflix」の成長率が他サービスと比較して大きく、SVOD市場拡大の強い要因になっているだろうという結果となりました。なお、このSVOD市場のシェア分析は日経新聞でも取り上げられ、ご注目いただきました。本調査は、2019年2月に最新の分析結果の発表を予定しています。
2018年、SVODは有料放送の利用率を超えた
12月に今年で4年目の実施となる「動画配信/放送/ビデオソフト市場 ユーザー分析レポート」を発表しました。そのなかで、「定額制」の契約形態では、SVODの利用率上昇がめざましく、今回の調査で昨年比4.1ptアップし18.6%を記録。これまで常に利用率首位を誇っていた有料放送の利用率を超える結果となりました。
年代別の利用率をみると15歳から69歳まですべての年代で伸びていますが、特に若い年代、20代を中心したセグメントにおける伸びが全体の伸びをけん引していることが分かります。
SVOD各サービスの浸透度
SVODについては、月次でブランド・ロイヤリティ調査も実施しています。調査から各社の動きをひも解くと、1年の間にダイナミックな動きがあったことがうかがえます。
集計対象は、映画やドラマを配信する主要SVOD事業者。Abemaビデオ(プレミアムプラン)、Amazonプライム・ビデオ、DAZN、dTV、dアニメストア、Hulu、J:COMオンデマンド、Netflix、RAKUTEN TV、TSUTAYA TV、U-NEXT、アニメ放題、ひかりTVビデオサービス、ビデオパス)となります。
ブランド浸透度とユーザー層拡大傾向
サービス認知度は、各サービスともに右肩上がりであったことが分かります。
新規利用意向も基本的には大きく右肩上がりとなりました。特に9月以降各社がプロモーションを強化した様子がうかがえます。
ユーザーのロイヤリティは?
今後のサービス成功の継続には、新規顧客の獲得だけでなく、既存ユーザーをいかに惹きつけ続けるかも重要です。利用者におけるサービス利用の継続意向(1月から12月までの平均値)をみると、Netflixが96%で1位。半数の調査対象サービスにおいて、9割以上のユーザーが継続して使う意向を示しており、利用者の定着がうかがえます。
なお、継続意向を示す割合が高いサービスほど年間を通じてさらにその数値が上がっており、ユーザーのロイヤリティ度合いには開きが出始めています。市場は伸びていますが、どこかで成長が鈍化する可能性があります。既存サービスも新規獲得とともに、ユーザーの維持度が差を生むようになるでしょう。また、これからサービスを立ち上げる場合、SVODを初めて使う人だけでなく、既存サービス顧客からも獲得する競争が始めるものと思われます。この辺りは来年の注力ポイントといえるでしょう。
本当に“ロイヤル”なユーザーの割合
「動画配信サービスはこれしか使っていない」という、いわば本当に“ロイヤル”なユーザーの割合はどの程度なのでしょうか。下記のグラフのとおり、そういったユーザーの割合は各サービス間でさらに差があることが分かります。動画配信サービスが群雄割拠するなか、複数のサービスを利用している人も多いのですが、お財布も時間も有限。利用するサービスを無限に増やすよりは、だんだん絞られていく可能性もあります。このあたりも来年のポイントとなるでしょう。
このように、SVODがけん引する形で動画配信市場が拡大しつつある一方で、サービス浸透度の向上やユーザー維持の競争も深まりつつあります。2019年以降、各社とも大胆に差別化する一方で、よりきめ細かいマーケティング戦略を練っていくと考えられます。
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