第2回:データから見る映画興行市場の構造変化
公開日: 2022/11/04
「興行収入の復興度合い」「市場の構造変化」「さらなる盤石な復興に向けた提案」の3点から2022年の映画興行市場を紐解く本特集。第2回は、日本の映画市場の構造変化に着目しました。過去1年間に映画館で1本以上映画を観賞した「映画参加者人口」の推移を全体、ジャンル別、性年代別に掲載したほか、2017年から2022年に公開された映画の観客層を年代割合と男女割合の2軸で分析。映画参加者人口の推移とコロナ禍を通じて観客層に起きた変化から、市場の復興具合を明らかにします。
映画参加者人口の変化:2022年に入りついに増加傾向へ
※映画参加者:過去1年間に映画館で1本以上映画を観た人
映画参加者人口は、2020年1月から2021年1月にかけて-25.0%と大きく減少した後、2021年は停滞状況が続いていましたが、2022年4月以降増加傾向に転じました。特に2022年5月以降は4カ月連続で前月比プラスとなりました(橙色枠参照)。
邦画鑑賞者、洋画鑑賞者、アニメ好きとも、2022年に入り増加しています。
性年代別では、減少幅が大きかった年配層でも増加傾向がようやく見えてきました。
ただし、コロナ前の2020年1月と2022年9月を比較すると、依然大きく減少しており、年齢が高くなるに連れてその傾向が高くなります。特に60代では40%以上減少しています。
観客層の変化(2017年~2022年)
洋画:年齢層高め、男性多めの傾向、フランチャイズでより顕著
邦画:観客層に大きな変化なし
2017年以降に劇場公開された作品の公開週以降の意欲者・鑑賞者の年代別割合、男女別割合に関して、各年毎にポジショニング分析を行いました。下記のチャートにおいて、縦軸は年代割合で、上に行くほど若年層比率が高く、下に行くほど年配比率が高い作品になります。一方、横軸は男女割合で、右に行くほど男性比率が高く、左にいくほど女性比率が高い作品になります。
各年毎に年代割合、男女割合の平均線を境に4象限に分割しました。各作品のマッピング箇所が濃い青なら「年齢層高め、男性多め」、薄い青なら「年齢層若め、男性多め」、濃いピンクなら「年齢層高め、女性多め」、薄いピンクなら「年齢層若め、女性多め」となります。
洋画:年齢層高め・男性多めの傾向、フランチャイズでより顕著
※画像クリックで拡大
洋画の意欲者・鑑賞者の構成比は、2017年以降、各年の15歳~29歳割合平均は36%前後、男性割合平均は55%前後と「年齢層高め・男性多め」の傾向にあります。2021年には、『トムとジェリー』『クルエラ』『ボス・ベイビー ファミリー・ミッション』などの影響で、15歳~29歳割合平均が44%と若年層に寄りましたが、2022年には36%へと戻っています。
フランチャイズ作品に注目すると、「年齢層高め・男性多め」の傾向が進んでいることが分かります。上記チャートは、2017年から2022年のコロナ前後に公開されたフランチャイズ作品の意欲者・鑑賞者の構成比の変化を記したものです。多くの作品で矢印が右側を向いており、男性比率が高まっていることが分かります。また、赤い線は前作よりも「年齢層高め・男性多め」となった作品となり、掲載した18シリーズ中8シリーズが該当しました。
邦画:観客層の傾向に大きな変化なし
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邦画は2017年以降、各年の15歳~29歳割合平均は48%前後、男性割合平均は50%前後と観客層の構成比の偏りが少なく推移しています。また、洋画と比較すると、どの年代においても「若年層寄り・女性多め」であることが分かります。
上記はコロナ前後に劇場公開されたフランチャイズ作品の構成比の変化を記したチャートです。作品ごとにみると、2017年から2019年に劇場公開された『ドラえもん』は構成比に変化はありませんでしたが、コロナ禍の2020年から2022年にかけて、男性比率が高まっていることが分かります。また、『ドラゴンボール』は2018年公開作から2022年公開作において年齢層高め、男性多めに変化しています。一方、『ONE PIECE』や『僕のヒーローアカデミア』はコロナ前よりも女性割合が高まりました。このように作品ごとに変化はありますが、全体的な傾向はありませんでした。
◆
第3回では、これまで整理した市場の変化を踏まえて、日本映画市場の復興を越えて発展を目指す施策につき、3つの視点に立って考えます。
- 第1回:2022年映画総興行収入はコロナ前の水準となる見込み、邦画アニメがけん引
- 第2回:データから見る映画興行市場の構造変化
- 第3回:日本映画市場のさらなる盤石な復興に向けて
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