第2回:ヒットの公式はあるか?“バーベンハイマー”の成功が意味すること~特集:ユニバーサル、Netflixなどスタジオ幹部が語る映画マーケティングの現在
公開日: 2024/05/16
米ロサンゼルスで行われた「Variety Entertainment Marketing Summit 2024」(開催日:4月24日)に、米スタジオのマーケティング部門のトップが集合。劇場映画に欠かせないイベント性、リブート版戦略と文化的モーメントの創出、予告編の在り方などについて、議論を交わしたパネルディスカッションの模様をレポートします。
第2回は、リブート版を成功させるための戦略、文化的モーメントの創出について、各スタジオが具体的な例を挙げつつ、見解を共有しました。
※本記事で触れられている内容は2024年4月時点の情報です
ブレント・ラング(Brent Lang)
Variety:エグゼクティブ・エディター
パネリスト
ジョシュ・ゴールドスティン(Josh Goldstine)
ワーナー・ブラザース・ピクチャーズ・グループ:国際マーケティング部門代表
ドワイト・ケインズ(Dwight Caines)
ユニバーサル・ピクチャーズ:国内マーケティング部門代表
マリアン・リー(Marian Lee)
Netflix:マーケティング最高責任者
マーク・ワインストック(Marc Weinstock)
パラマウント・ピクチャーズ:国際マーケティング&配給部門代表
レベッカ・カーリー(Rebecca Kearey)
サーチライト・ピクチャーズ:国際マーケティング&事業オペレーション部門代表
- 草の根的に盛り上がった“バーベンハイマー”現象
- 『怪盗グルー』シリーズの#GentleMinions現象
- 草の根トレンドをデータで感知できるNetflix
- 『ビートルジュース』『グラディエーター』などクラシック作品のリブート版のヒット施策を考える
草の根的に盛り上がった“バーベンハイマー”現象
まずモデレーターが、歴史に残るマーケティング事象となった2023年の“バーベンハイマー”現象に言及。『オッペンハイマー』の配給元ユニバーサルと、『バービー』の配給元ワーナーはともに、この現象がTikTokをはじめとするソーシャルメディアで草の根的に盛り上がったと語りました。
ユニバーサルのドワイト・ケインズ氏は、「『オッペンハイマー』はシリアスな題材の作品であり、フィルムメイカーも作品自体も、楽しいお祭り騒ぎを望んでいたわけではない」と強調。そのうえで、「観客が、たまたま同日に公開される全く異なる2本の映画を自分ごとに感じている、何か文化的現象が起きている、と感じました。このようなことは、映画マーケッターのキャリアのなかで、一度あるかないかというほど希少な現象なのです」と語りました。
ワーナーのジョシュ・ゴールドスティン氏も、「この2本が同日に公開されることが、何らかの文化的神経を刺激したのです。フィルムメイカーや製作者側にとっても、素晴らしい瞬間でした」と振り返りつつ、この現象がもたらした最も興味深くポジティブな功績について、こう述べました。「インターネットというものは、私はこっち側、あなたはあっち側と、分裂のツールにもなりえます。それが今回は、インターネット上で人々が双方の味方になれることを証明し、魅力的なモーメントを作り出したのです」。
『怪盗グルー』シリーズの#GentleMinions現象
“バーベンハイマー”の成功は異例であり、すべての作品に計画的に応用することはできないものの、意識的なマーケティング戦略が思わぬトレンドを生むこともあります。
ユニバーサルのケインズ氏は、今夏に最新作『怪盗グルーのミニオン超変身』が公開予定の『怪盗グルー』シリーズに言及。「同フランチャイズは、観客が各々の思い入れを持てるブランドに育ち、私たちはそれを誇りに思っています。ただ、同ブランドをもうクールに感じず、自分たちは卒業したと感じている映画ファンもいるようです。そこで、私たちはキャンペーンのトーンや方向性を、彼らも思い入れが持てるものにするよう心がけています」。
そうしたなか、2022年の『ミニオンズ フィーバー』公開時に、オーストラリアで発生した現象を振り返りました。子どもの頃に怪盗グルーで育ったZ世代の男性ティーンたちが、かしこまったスーツを着て劇場に向かい、同作を鑑賞する様子をTikTokに投稿。5年振りのスピンオフを待つ間にすっかり成長した彼らが、同ブランドに敬意を示しているような、まだ自分たちも対象なのだと主張しているような行為が注目され、“ジェントルマン”をもじった「#GentleMinions」と名付けられ、ソーシャルメディアでミームが拡散しました。ケインズ氏は、「こうした現象は計画的に生み出せるものではないが、常に、観客が思い入れを持てるような流れを作りたい」と語りました。
@bill.hirst 🍌#fyp #minions #banana ♬ original sound - billh
草の根トレンドをデータで感知できるNetflix
こうした局地的なトレンドが、世界的な現象へと広がる様子をキャッチできるのは、各国のデータを観察できるNetflixの強みでもあります。同社のマリアン・リー氏は、……(以下、会員限定記事にて掲載)
※本記事はGEM Standard会員様限定となります。
新規登録(無料)いただくと閲覧いただけます。
新着記事
-
映像・書籍・音楽・ゲーム・ラジオ横断でリーチ力を調査、2024年のTOP3は『ポケモン』『ツムツム』『ONE PIECE』
(2024/12/20) -
サブスク、CD、Webほかチャネル横断で調査、2024年に最も聴かれた音楽アーティスト&サービス
(2024/12/20) -
単行本、雑誌、電子コミック、電子サービス横断で調査、2024年に最も読まれたマンガ&サービス
(2024/12/20)
新着ランキング
-
メディア横断リーチpt 急上昇TOP10(2024年12月第3週)
(2024/12/26) -
メディア横断リーチpt 週間TOP10(2024年12月第3週)
(2024/12/26) -
定額制動画配信サービス 週間リーチptランキングTOP20(2024年12月第3週)
(2024/12/26)