記事

好調のワーナーと23年No.1スタジオのユニバーサルの24年度の勝負作 ハリウッドスタジオプレゼンテーション【前編】ワーナー、ユニバーサル~特集:CinemaCon2024
公開日: 2024/04/19

特集:CinemaCon2024 第4回

米ラスベガスで行われたアメリカを中心に世界中の映画興行・配給関係者が集まる「CinemaCon2024」にて、目玉イベントともいえるハリウッドメジャースタジオによるラインナッププレゼンテーションが開催されました。本記事ではそのなかから前編としてワーナー・ブラザースとユニバーサル・ピクチャーズに焦点を当ててレポートします。
※本記事で触れられている内容は2024年4月時点の情報です

《目次》

 

 

懸念される供給不足、先行き不安のなかで実施された待望のスタジオラインナッププレゼンテーション

半年間にわたる脚本家と俳優組合のストライキの影響もあり、ハリウッドメジャースタジオ作品の多くが公開日を延期しており、興行側は一番の要望として作品供給を求めています。そのような状況のなか、今年はワーナー、ユニバーサル、パラマウント、ディズニー、ライオンズゲートに加えて、“Sound of Freedom”でスマッシュヒットを飛ばしたエンジェル・スタジオがラインナッププレゼンテーションを実施。そのほか、ソニーはグループ内のCrunchyrollの発表がありましたが、ソニー・ピクチャーズとしてのラインナップ発表はありませんでした。 それぞれのスタジオが置かれている状況は異なり、アピールポイントも様々です。スタジオ幹部からのメッセージと柱として打ち出したラインナップに関してレポートします。

 

ワーナー・ブラザース:24年第一四半期が好調、『ビートルジュース』と『ジョーカー』続編の魅力をアピール

昨年はバービーピンクのコスチュームで登壇し、会場を大いに沸かせたワーナー・ブラザースの米国内、国外配給トップの2人、ジェフ・ゴールドスタイン氏(Jeff Goldstein:President, Domestic Distribution, Warner Bros. Picture Group)とアンドリュー・クリップス氏(Andrew Cripps:President, International Distribution, Warner Bros. Picture Group)。今年はビートルジュースに扮して登場し、2023年の同社の実績について語りました。

特に『バービー』は2023年に世界興収1位を獲得しただけでなく、ワーナーの100年の歴史で史上最高の記録となったことをアピール。今後も、「映画を見るだけでなく体験する価値を鑑賞者に体感してもらうために努力をする」とともに、ワーナーにとっては「ストーリーテリングがコアにあり、たくさんの観衆が喜ぶ作品を今後も提供する」と多くの興行関係者の前で約束しました。

また、2024年に入ってからも好調で、『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』と『デューン 砂の惑星PART2』は世界興行収入6億ドル超え。さらに、“Godzilla x Kong: The New Empire(全米公開2024年3月29日/邦題『ゴジラxコング 新たなる帝国』日本公開2024年4月26日)”は3億7000万ドルを超えており、クリスマス以降30%超の興行収入シェアをワーナーが獲得していることを明かしました。 左からビートルジュースに扮したアンドリュー・クリップス氏とジェフ・ゴールドスタイン氏、
パメラ・アブディ氏、マイケル・デ・ルカ氏
Photo by Jerod Harris/Getty Images for CinemaCon 2024
 

ラインナッププレゼンテーションでは、マイケル・デ・ルカ氏(Michael De Luca:Chairperson & CEO, Warner Bros. Film Group)やパメラ・アブディ氏(Pamela Abdy:Co-Chairperson & CEO, Warner Bros. Film Group)、ピーター・サフラン氏(Peter Safran:Co-Chairman and CEO, DC Studios)が登壇し、多くの監督やキャストともにラインナップの魅力をアピールしました。

ラインナップ発表のトップバッターはジョージ・ミラー監督の「マッドマックス」シリーズ最新作“Furiosa(全米公開2024年5月24日/邦題『マッドマックス:フュリオサ』日本公開2024年5月31日、予告編)”。ミラー監督とともに主演のアニャ・テイラー=ジョイとクリス・ヘムズワースらが登壇し、フッテージ上映とともに作品の勢いを見せつけました。

左からアニャ・テイラー=ジョイとクリス・ヘムズワース
Photo by Jerod Harris/Getty Images for CinemaCon 2024
 

続いて、ジャンル映画・中小規模映画として、M・ナイト・シャマラン監督とその娘であるイシャナ・ナイト・シャマラン監督が登壇し、それぞれのホラージャンルの待機作“Trap(2024年8月2日全米公開)”と“The Watchers(全米公開2024年6月14日/邦題『ザ・ウォッチャーズ』日本公開2024年6月21日、予告編)”や、DCスタジオに関連してスーパーマンを演じた俳優のクリストファー・リーヴの知られざる物語に焦点をあてたドキュメンタリー“Super-Man: The Christopher Reeve Story”を紹介。そのほか、ポン・ジュノ監督とロバート・パティンソンが登壇し、「原作は主人公が10回死ぬのでMickey10だが、この映画では主人公があと7回多く死ぬので、Mickey 17という題名になった」と明かされた“Mickey17”が紹介されました。

左からポン・ジュノ監督とロバート・パティンソン
Photo by Alberto E. Rodriguez/Getty Images for CinemaCon 2024
 

北米で注目度が高いケヴィン・コスナー監督・主演で2作連続公開となる西部劇“Horizon: An American Saga(全米公開Chapter1:2024年6月28日、Chapter 2:2024年8月16日)”の紹介時には、ケヴィン・コスナーが登壇して作品の魅力を語った後、CinemaCon Visionary Awardが授与されました。

最後に今年後半のカギとなる2作品が続けて紹介されました。まず、“Beetle Juice Beetle Juice(全米公開2024年9月5日、予告編)”が発表され、監督・キャストら総勢6名(ティム・バートン監督、マイケル・キートン、キャサリン・オハラ、モニカ・ベルッチ、ジャスティン・セロー、ウィレム・デフォー)が華々しく登壇してフッテージ・予告を紹介しました。

左からマイケル・デ・ルカ氏、パメラ・アブディ氏、マイケル・キートン、ティム・バートン監督、
キャサリン・オハラ、ジャスティン・セロー、モニカ・ベルッチ、ウィレム・デフォー
Photo by Jerod Harris/Getty Images for CinemaCon 2024
 

次に、R指定作品として興行収入最高記録を樹立した『ジョーカー』の続編“Joker: Folie a Deux(全米公開2024年10月4日/邦題『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』日本公開2024年10月11日、予告編)”の紹介では、トッド・フィリップス監督が登壇し作品の魅力を語るとともに、このCinemaConで解禁となりYouTubeで記録的な再生数を記録した予告編が上映されました。

トッド・フィリップス監督
Photo by Jerod Harris/Getty Images for CinemaCon 2024
 

2025年以降のラインアップについては、キャストからのビデオを通じて、ジャック・ブラック主演“Minecraft(全米公開2025年4月)”、アン・ハサウェイとユアン・マクレガー出演の“Flowervale Street(全米公開2025年5月)”、DC studioの“Superman”、マギー・ギレンホ―ル監督“The Bride”などのほか、“Final Destination: Bloodlines”や『クリード』シリーズの続編が紹介されました。

 

ユニバーサル・ピクチャーズ:2023年No.1スタジオ獲得への感謝のほか、『怪盗グルー』シリーズ最新作や“Wicked”とともに「映画的なオリジナルストーリー」を提供し2連覇を狙うと宣言

2023年にスタジオとして興行収入1位の座を勝ち取ったユニバーサル。冒頭、米国内劇場配給のトップのジム・オア氏(Jim Orr:President, Domestic Distribution, Universal Pictures)が、昨年の世界興行収入のTOP3は『バービー』『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』『オッペンハイマー』であったが、これらはいずれもオリジナル作品であり、現在マーケットからは新しさが求められていると指摘。続けて、映画興行において必要なのは“Original Cinematic Story”だと結論付けました。

2023年は数多くの作品を配給した同社。オア氏は、特にオリジナル作品である『コカイン・ベア』や、ホラー映画として年間最高興収を記録した『ファイブ・ナイツ・アット・フレディーズ』『M3GAN/ミーガン』などの成功を称えました。一方で、今後は20作品を準備しており、うち75%が今後のフランチャイズ化を目指すオリジナル作品であることをアピール。今後も、芸術面での卓越性と商業面での成功のバランスを重視していくことともに、2023年北米1位のスタジオとなったが、2024年も同様に達成を目指すこと、年末の“Wicked”は特に大成功を目指すと宣言しました。

ヴェロニカ・クワン・ヴァンデンバーグ氏
Photo by Jerod Harris/Getty Images for CinemaCon 2024

続いて、インターナショナル配給トップのヴェロニカ・クワン・ヴァンデンバーグ氏(Veronika Kwan Vandenberg:President, Distribution, Universal Pictures International)より、『ワイルド・スピード/ファイヤーブースト』が中国で1位だったこと、『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』が日本で洋画1位だったことなど、2023年のインターナショナルマーケットでの成功をアピールしました。

さらにアニメーションでは興収上位12作品中8作品を配給したことを強調。今後はインターナショナル配給作品として、ユニバーサル、ドリームワークス、フォーカス・フィーチャーズ作品含めて29作品を予定しており、特に『ブリジットジョーンズ』シリーズ4作目、マイケル・ジャクソンの伝記映画“Michael”のインターナショナル配給(北米はライオンズゲート)を担当すること発表しました。また、インターナショナル配給部門はNBC Universal Studio Groupのピーター・レヴィンソン氏(Peter Levinsohn:Chairman of Global Distribution for NBCUniversal Studio Group)が率いるGlobal Distributionの傘下に入ったことを明かしました。

また、映画に限らない、NBC Universal Studio Group全体のChairman となったドナ・ラングレー氏(Donna Langley:Chairman, NBCU Studio Group & CCO, NBCUniversal Studio Group)も登壇し、2023年のNo.1スタジオとなった背景に多くの人の貢献があったことへの感謝の意を表しました。

ドナ・ラングレー氏
Photo by Jerod Harris/Getty Images for CinemaCon 2024

ラインナッププレゼンテーションではまず、この夏の最大注目作の一つ、『怪盗グルー』シリーズ最新作“Despicable Me 4(全米公開2024年7月3日/邦題『怪盗グルーのミニオン超変身』日本公開2024年7月19日、予告編)をピックアップ。制作会社イルミネーションCEOのクリス・メレダンドリ氏(Chris Meledandri:CEO, Illumination)が、これまでの同社作品の功績ともに紹介し、長めのフッテージ映像を上映しました。

クリス・メレダンドリ氏
Photo by Jerod Harris/Getty Images for CinemaCon 2024
 

続いて、北米ではユニバーサル配給となる“Twisters(全米公開2024年7月19日/邦題『ツイスターズ』日本公開2024年8月1日※ワーナー・ブラザース配給、予告編)”の紹介時は、『ミナリ』のリー・アイザック・チョン監督や『トップガン マーヴェリック』のグレン・パウエルらが登壇し、編集中のフッテージを初出し上映しました。

左からアンソニー・ラモス、デイジー・エドガー=ジョーンズ、リー・アイザック・チョン監督、
グレン・パウエル、アシュリー・ジェイ・サンドバーグ
Photo by Alberto E. Rodriguez/Getty Images for CinemaCon 2024
 

そのほか、『M3GAN/ミーガン』や『ファイブ・ナイツ・アット・フレディーズ』など、好調のホラー作品ラインナップとして、『ファイブ・ナイツ・アット・フレディーズ』の続編が発表されるとともに、ブラムハウス・プロダクションによる“Wolf Man(全米公開2025年1月17日)”のフッテージや、ジェームズ・マカヴォイ主演の“Speak No Evil(全米公開2024年9月13日※13日の金曜日、予告編)”の予告編が上映されました。

ユニバーサル・ピクチャーズ傘下でアートハウス映画を専門とするフォーカス・フィーチャーズからは、歌手エイミー・ワインハウスの伝記映画“Back to Black(全米公開2024年5月17日、予告編)”、ジョディ・カマー、オースティン・バトラー、トム・ハーディらが出演する“The Bike Riders(全米公開2024年6月21日、予告編)”、Netflix版『西部戦線異状なし』のエドワード・ベルガー監督、レイフ・ファインズら出演の“Conclave(全米公開2024年11月)”、『ノースマン 導かれし復讐者』のロバート・エガース監督最新作“Nosferatu(全米公開2024年12月25日)” などが紹介されました。また、ドリームワークス・アニメーションからは、声優を務めたルピタ・ニョンゴが登壇し、“The Wild Robot(全米公開2024年9月20日、予告編)”を紹介しました。

Photo by Jerod Harris/Getty Images for CinemaCon 2024  

ラインナッププレゼンテーションの最後には、“Wicked(Part One:全米公開2024年11月27日、Part Two:2025年11月26日、予告編)”が紹介されました。会場全体が緑とピンクの光とチューリップでいっぱいになる華やかな演出のなか、主演の2人であるアリアナ・グランデとシンシア・エリヴォが、ジョン・M・チュウ監督、ジェフ・ゴールドブラム、ミシェル・ヨー、 そしてジョナサン・ベイリーとともに登壇し、作品の魅力や意気込みを語り、長めのフッテージ映像を上映しました。

左からアリアナ・グランデ、シンシア・エリヴォ
Photo by Jerod Harris/Getty Images for CinemaCon 2024
 
特集:CinemaCon2024

レポート・データ解説