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第1回:変化する映画市場において、いま最も大事なこと~特集:ユニバーサル、Netflixなどスタジオ幹部が語る映画マーケティングの現在
公開日: 2024/05/10

特集:ユニバーサル、Netflixなどスタジオ幹部が語る映画マーケティングの現在 第1回

米ロサンゼルスで行われた「Variety Entertainment Marketing Summit 2024」(開催日:4月24日)に、米スタジオのマーケティング部門のトップが集合。劇場映画に欠かせないイベント性、リブート版戦略と文化的モーメントの創出、劇場予告編の在り方などについて、議論を交わしたパネルディスカッションの模様をレポートします。
第1回は、映画の劇場公開において、イベント性と文化的緊急性の創出が重要である点が強調されました。

※本記事で触れられている内容は2024年4月時点の情報です

モデレーター
ブレント・ラング(Brent Lang)
Variety:エグゼクティブ・エディター

パネリスト
ジョシュ・ゴールドスティン(Josh Goldstine)
ワーナー・ブラザース・ピクチャーズ・グループ:国際マーケティング部門代表

ドワイト・ケインズ(Dwight Caines)
ユニバーサル・ピクチャーズ:国内マーケティング部門代表

マリアン・リー(Marian Lee)
Netflix:マーケティング最高責任者

マーク・ワインストック(Marc Weinstock)
パラマウント・ピクチャーズ:国際マーケティング&配給部門代表

レベッカ・カーリー(Rebecca Kearey)
サーチライト・ピクチャーズ:国際マーケティング&事業オペレーション部門代表
《目次》

 

 

劇場鑑賞のイベント性で「”あの”映画を見に行こう」と説得

まず、モデレーターを務めたVarietyのエグゼクティブ・エディター、ブレント・ラング氏が劇場公開映画のマーケティングにおける昨今の変化を問うと、全員が「劇場公開には“イベント性”がますます重要となってきた」と口をそろえました。

ワーナーのジョシュ・ゴールドスティン氏は、たくさんのことが起こり、たくさんの変化があったと語ったうえで、特に「誰かのためのイベント映画でないなら、誰の映画でもない」ということが明確化したと断言。「いまや計1,000億ドル規模の価値がある配信コンテンツに打ち勝つためには、劇場公開映画は、キャストを含む、あらゆる要素を総動員して、文化的なモーメントや観客とのコネクションを生み出さなければならない」と語りました。

ユニバーサルのドワイト・ケインズ氏も、「以前の観客は、『何か映画を観に行こう』と劇場に向かったものですが、今は『“あの”映画を観に行こう』と目的が明確になっています。そのため、劇場公開映画はすべて、『“あれ”が観たい』と思ってもらえるようなイベント性を持たせています」と同調。さらに、自身がパンデミック中にテレビドラマ『HOMELAND』の全8シーズンをはじめとする数々のドラマを制覇したことを振り返り、「私たちが対象としている映画ファンは、(家や端末で)これらの作品を一気見できる選択肢を持っており、常に『お金や時間をかけるに値するものは何か?』と考えています。そうした人々をソファから起き上がらせるには、圧倒的な大画面や没入的体験を売りにすべきです」。

 

鑑賞者数の減少だけでなく、頻度も減少する中、“文化的な緊急性”が必須

ここでモデレーターが、「パンデミック以来、20%の観客しか劇場に戻ってきていないというのは本当か? 残りの観客は今後戻ってくるのか?」と問いました。

ワーナーのゴールドスティン氏は、パンデミック前のレベルまで観客が戻っていないことを認めつつ、単に観客数を比較することに警鐘を鳴らしました。「私たちはパンデミックを境として、『映画ファンが劇場に戻ってきたか? いつかは戻ってくるのか?』と議論しがちですが、むしろ注目すべきなのは、劇場に足しげく通う人たち、『高頻度の映画鑑賞者が減っている』ということなのです」。一方で、今、興行を稼いでいる劇場映画の成功レベルが記録的に大きいことを指摘し、「映画鑑賞頻度が低い人々に来てもらう上での肝は、文化的な緊急性を訴求すること」だと語りました。

パラマウントのマーク・ワインストック氏も、文化的な緊急性の重要さに同調。「ストライキの影響で作品数が少なくなっているなかで、配信で膨大な選択肢がある低頻度の映画鑑賞者に来てもらう上では、『この映画、観たいと思ってた! レビューもいいし、皆が話題にしているよね。見るべき映画であることは疑いようがない』とまで思ってもらうことが必要」だと話しました。

 

インディ映画はニッチなコミュニティを追跡

サーチライト・ピクチャーズのレベッカ・カーリー氏は、インディペンデント映画の視点から見解を共有しました。「映画によって、適切なサイズや期待値、ターゲットは異なり、1つのやり方がすべてに当てはまることはありません。様々な映画への需要はありますが、小規模な映画にとってはその作品を求めているニッチな観客をしっかりと見極めることが大事です。最近では、……(以下、会員限定記事にて掲載)

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