第2回:ローカル・コンテンツの供給が増加する一方、鑑賞者の意思決定に変化
公開日: 2023/02/03
2022年12月、タイのバンコクで開催されたアジアの映画興行・配給事業者向けコンベンション「CineAsia(シネアジア)」より、APAC(アジア太平洋)地域の状況について、各国の配給、劇場業界のベテランが議論を交わした座談会「Executive Roundtable—Special Focus on the APAC Region」の模様をレポートします。
ランス・パウ(Rance Pow)
アーティザン・ゲートウェイ(Artisan Gateway):創始者兼CEO
パネリスト:
デヴァン・サムパット(Devang Sampat)
シネポリス・インディア(Cinepolis India):CEO
マーク・ショー(Mark Shaw)
ショー・シアターズ(Shaw Theatres):ディレクター
メイ・リー・コー(Mei Lee Koh)
ゴールデン・スクリーン・シネマズ(Golden Screen Cinemas):CEO
ユージーン・ヤン(Eugene Yang)
パラマウント・ピクチャーズ・インターナショナル(Paramount Pictures International):APAC配給&マーケティング部門シニアバイスプレジデント
スーピー・ラサナモンコルマス(Soupy Rathanamongkolmas)
ユニバーサル・ピクチャーズ・インターナショナル(Universal Pictures International):南アジア担当バイスプレジデント
特集連載第2回は、ローカル映画や地域に特化したコンテンツ、ハリウッド大作含め、多様な作品がラインナップされている2023年のアジア各国の作品供給状況と、公開日設定やリリースのペース配分におけるマーケティングの重要性に言及。配給側と興行主が強い協力体制を築くことが大切だという意見に注目です。
※本記事で触れられている内容は2022年12月時点の情報です
ローカル・コンテンツ含めて公開ラインナップが多様化
モデレーター
映画館に観客を呼び込むという課題には、2つの側面があります。一つは作品と供給の問題、もう一つは映画を見る習慣の活性化です。スタジオ側の2人にお聞きしますが、スタジオの作品ラインナップは回復しているのでしょうか?
スーピー・ラサナモンコルマス(ユニバーサル・ピクチャーズ・インターナショナル)
もちろんです。コンテンツ面では、パンデミック時に、作品によって公開が延期になるのか、それがいつなのか分からない部分もあり、少し苦労しましたが、すぐに回復しました。2023年には話題の大作だけでなく、多様な観客に向けた様々なタイトルがたくさん揃っており、私たちはとても強気で楽観的です。2024年のラインナップもほぼ決まっているはずです。観客の皆さんに、最高の会場で最高の映画鑑賞体験をしていただけると確信しています。
公開スケジュールの面でも、以前は、次の大作は何か、夏休みや感謝祭、クリスマス時期の公開作品は? といった話ばかりをしていた気がしますが、今は、年間52週分の充実した作品供給を考えています。
モデレーター
とても楽しみです。今後1~2年間のユニバーサルのアジア地域向け映画の公開本数はおおよそどのくらいでしょうか。
スーピー・ラサナモンコルマス(ユニバーサル・ピクチャーズ・インターナショナル)
ユニバーサルと仕事をしたことのあるパートナーなら、私たちの公開作品数が潤沢であることをご存じだと思います。それは今後も変わりません。数だけでなく、作品の規模や内容も充実させ、多様な作品を提供することで、特定の観客層だけを対象とするのではなく、すべての観客に楽しんでもらえるようにすることが、私たちの課題です。
(コンテンツの多様性という点で)今ほどエキサイティングな時はありません。ローカル・コンテンツはこれまで細々としたイメージがありましたが、今は大きな存在です。各市場向けのローカル・コンテンツ、地域に特化したコンテンツ、ハリウッドのスタジオ作品と、すべての種類の作品において成功が期待できるのです。ユニバーサルのみならず、業界全体として、さまざまな優れた作品が供給されるだろうと、私は非常に楽観的に考えています。
公開日設定とペース配分に工夫の余地
ユージーン・ヤン(パラマウント・ピクチャーズ・インターナショナル)
2023年に各スタジオが公開する作品は、2022年に比べて飛躍的に大きい可能性を感じます。また同時に、実は課題も浮かび上がってきます。パンデミック時や回復時には、……(以下、会員限定記事にて掲載)
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