第2回:デジタル施策 VS 劇場予告 VS 屋外広告~『パラサイト』『トップガン』『スクリーム』の事例
公開日: 2023/08/04
米ハリウッドで4月に開催された「Variety Entertainment Marketing Summit」にて、パネルディスカッション「Entertainment Marketing Leaders Roundtable」を実施。パラマウント、ワーナー、ユニバーサル、ネオンからマーケティング責任者が登壇したほか、TikTokの北米代表も出席しました。映画のマーケティング方針や最新の戦略、成功事例を共有し合ったディスカッションの模様を5回に分けてレポートします。
※本記事で触れられている内容は2023年4月時点の情報です
クラウディア・エラー(Claudia Eller)
バラエティ(Variety):最高プロダクション責任者
パネリスト
マーク・ワインストック(Marc Weinstock)
パラマウント・ピクチャーズ(Paramount Pictures):世界マーケティング&配給部門代表
カレン・ブロンゾ(Karen Bronzo)
ワーナー・ブラザース・ディスカバリー(Warner Bros. Discovery):最高マーケティング責任者
ドワイト・ケインズ(Dwight Caines)
ユニバーサル・ピクチャーズ(Universal Pictures):米国マーケティング部門代表
クリスチャン・パークス(Christian Parkes)
ネオン(Neon):最高マーケティング責任者
キャサリン・ハラビー(Catherine Halaby)
TikTok:北米エンタテインメント部門代表
第2回は、経済不況の影響でマーケティング予算が限られるなか、デジタル施策、劇場予告、屋外広告にかけるリソースの比率やアメリカにおけるTikTokの影響力を、『パラサイト 半地下の家族』『トップガン マーヴェリック』『スクリーム』などの具体的な事例とともにトップマーケッターが共有しました。
- 『パラサイト』と“How to Blow Up a Pipeline”に見る屋外広告を打つ意味
- 『トップガン マーヴェリック』と『スクリーム』で異なるデジタル&TV戦略
- 作品があふれる今だからこそ、選択と集中を
- TikTokの影響力は以前のテレビ並み
『パラサイト』と“How to Blow Up a Pipeline”に見る屋外広告を打つ意味
ネオンのパークス氏は、同社のマーケティング予算規模がスタジオとは大きく異なると前置きしたうえで、「私たちはアートハウス分野で勝負していますが、なかでも若者をターゲットにした作品が多いため、マーケティングは、ほぼ100%デジタル施策で組み立てます。あえてデジタル以外の仕掛けをする場合は、何か特別な状況があるか、何かしらの声明を発信する目的で行います」と語りました。
その特殊ケースとして、『パラサイト 半地下の家族』と“How to Blow Up a Pipeline”の例をあげたパークス氏。「『パラサイト』では、アカデミー賞に向けたキャンペーンを行うと決めた段階で、デジタル以外の仕掛けを決行。統計的に投票者のアカデミー会員が多くいる郵便番号のエリアに屋外広告を展開し、テレビ広告も行いました。環境問題がテーマのエコ・スリラー映画“How to Blow Up a Pipeline”では、あえてステイトメント的にガソリンスタンドの上にビルボード広告を展開しました※」。※ガソリンなどの燃料がパイプラインで運ばれることを踏まえ、あえてガソリンスタンドの屋上に“How to Blow Up a Pipeline”=パイプライン爆破法という名前の映画の屋外看板を設置
もちろん、劇場予告も重要視し、十分な費用をかけているというパーク氏。「予告編は映画マーケティングの最も古く確実な手段で、劇場公開される自社映画に今後公開される作品の予告編をつけることは重要です。予告編は、スマートフォンで観るのもよいですが、座席に“囚われた”聴衆がリアルサウンドで観てこそ、作品の良さが本当に分かるのです」。
『トップガン マーヴェリック』と『スクリーム』で異なるデジタル&TV戦略
パラマウントのワインストック氏は、どの作品にも特定の観客がいるため、カスタムメイドのメディアミックス戦略を考えなければならないとしたうえで、『トップガン マーヴェリック』と『スクリーム』の例を共有。「『トップガン マーヴェリック』は他作品よりテレビ広告を多めに展開しましたが、『スクリーム』ではテレビはほぼ使いませんでした。『スクリーム』の観客層は、テレビのスポーツ中継を観るタイプも少しはいたかもしれませんが、大半は完全にデジタル派だったからです」。デジタル施策のプラットフォームについては、「TikTokは大きな存在ですが、MetaもYouTubeもGoogleも、すべてのプラットフォームが大切」と話しました。
作品があふれる今だからこそ、選択と集中を
ワーナーのブロンゾ氏も、ひとつの方法に頼るのではなく、いろいろな施策を組み合わせたカスタムメイドのマーケティング戦略を行うという点に同意。さらに、数十のブランドを抱えている当社ならではのポイントとして、……(以下、会員限定記事にて掲載)
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