第1回:ヒットの鍵はファンダムを中心としたエコシステムの育成(コンデナスト/ソニー編)~特集:“ヒット”の定義とは? 出版・音楽・映像分野のプロが語る各々の指標
公開日: 2023/11/01
米ロサンゼルスで行われた「Variety Entertainment & Technology Summit 2023」にて9月21日、パネル・ディスカッション「Building Hit Entertainment Across Platforms」が開催されました。出版、音楽、映像と多様なエンタテイメント分野のエグゼクティブが登壇し、雑誌記事の映像化、リアリティショーにみるファンの忠誠心、ポッドキャスト事情、音楽ライブ市場の成長など、幅広いエンタメのトレンドを通して、“ヒット”の定義と指標について語った様子をレポートします。
第1回は、Disney+の立ち上げに参画したコンデナスト・エンターテインメント社長やソニー・ピクチャーズ テレビジョンのエグゼクティブが、ファンダム、エコシステム、文化的会話というキーワードを交えながら、自社の考えを語りました。
※本記事で触れられている内容は2023年9月時点の情報です
マイケル・シュナイダー(Michael Schneider)
Variety/テレビ・エディター
パネリスト
アグネス・チュー(Agnes Chu)
コンデナスト・エンターテインメント(Condé Nast Entertainment):社長
イーライ・ホルツマン(Eli Holzman)
ソニー・ピクチャーズ テレビジョン(Sony Pictures Television):ノンフィクション部門プレジデント
ラッセル・ウォラック(Russell Wallach)
ライブ・ネーション(Live Nation):メディア&スポンサーシップ部門代表
リシェル・パラム(Richelle Parham)
ユニバーサル ミュージック グループ(Universal Music Group):グローバルeコマース&ビジネスデベロップメント部門代表
ジュリー・マクナマラ(Julie McNamara)
Spotify:グローバル・ボッドキャスト・スタジオ代表
- エンタテイメント・ブランドに欠かせないファンダム
- いま、ヒットの指標はメディア横断の相乗効果
- 『アメリカン・アイドル』にみる、コンテンツの寿命を延ばし、サポートするファンの忠誠心
- 『アメリカン・アイドル』では、アーティスト自身による
YouTube、TikTokでの粘り強い発信がスターを生んだ - グローバルスケールでの続編の需要がヒットの証
エンタテイメント・ブランドに欠かせないファンダム
世界的に有名な雑誌を多く抱える出版社コンデナスト・パブリケーションズの傘下で、映画やテレビ、ソーシャル&デジタル・コンテンツの製作・配給を行うコンデナスト・エンターテインメントの社長アグネス・チュー氏は、前職でDisney+の立ち上げに関わった経験を交え、エンタテイメント・ブランドにおける“ファンダム”の重要性を強調しました。
「以前はディズニーやマーベル、ピクサー、ナショナルジオグラフィックなどの映像ブランドに関わり、今は『ヴォーグ』や『ヴァニティ・フェア』『ザ・ニューヨーカー』『アーキテクチュラル・ダイジェスト』などの出版ブランドを対象に仕事をしています。メディアこそ違うものの、新しいテクノロジーとプラットフォームを活用し、ストーリーテリングを通じてグローバル・ブランドとファンのつながりを築く点は同じです。ヒットを生むうえで大切なのはファンダム。ファンダムが強いブランドには魂が宿り、文化的意義が生まれ、時代を超えて生き残ることができるのです」。
いま、ヒットの指標はメディア横断の相乗効果
その上で、コンデナストにおけるヒットの指標は、出版、映像、ソーシャルという複数メディアにおける相乗効果にあると語ったチュー氏。「最近の例では、『ヴァニティ・フェア』誌の一連の調査報道記事を基にしたドキュメンタリー・シリーズ『ヒルソング教会のヒミツ(原題:The Secrets of Hillsong)』(4話)を、同誌の編集者たちと協力し、FXとHuluと製作しました。雑誌で記事化できる内容には限度がありましたが、ドキュメンタリー制作においては、制作中に事件捜査が進展したこともあり、追加のストーリーや新たな情報を盛り込むことができました。さらに、同シリーズがプレミアされた後、『ヴァニティ・フェア』のソーシャルメディア全体で関心を高め、毎月10億ビューを超えるコンデナストのソーシャルネットワークでも、記事を再循環させました」。
また、米「ヴォーグ」編集長のアナ・ウィンターが主催するファッション業界の大イベント、「メットガラ(Met Gala)」では、イベントの様子を自社プラットフォームでライブ配信し、TikTokチャンネルなどのソーシャルメディアで映像クリップを拡散。多くの人々が同時に、ガラについて会話できるように仕掛けたといいます。このように、出版、映像、ライブイベント、ソーシャルメディアと、複数のメディアを通じてコンテンツを循環させるエコシステムこそが、ヒットを生むカギだと語るチュー氏。「もちろん、映像の再生数やエンゲージメント時間といった数字データも重要ですが、文化的会話がどれほど交わされているかが、大事な指標でもあるのです」。
『アメリカン・アイドル』にみる、コンテンツの寿命を延ばし、サポートするファンの忠誠心
ソニー・ピクチャーズテレビジョンでリアリティショーなどを手掛けるノンフィクション部門プレジデントのイーライ・ホルツマン氏も、ファンダムの大切さを強調。……(以下、会員限定記事にて掲載)
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