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第3回:マーベル・DCなどの“フランチャイズ疲れ”の正体とは?~特集:アジア映画市場発展の条件
公開日: 2024/02/08

特集:アジア映画市場発展の条件 第3回

タイのバンコクで開催されたアジアの映画興行・配給事業者向けコンベンション「CineAsia(シネアジア)」(開催期間:2023年12月4日~7日)より、APAC(アジア太平洋)地域の現状と今後の課題について、配給、興行業界のベテランが議論を交わした座談会「Executive Roundtable」の模様をレポート。第3回は、昨今のハリウッドで多く語られている“観客のフランチャイズ疲れ”について熱い議論が交わされました。
※本記事で触れられている内容は2023年12月時点の情報です

モデレーター
ランス・パウ(Rance Pow)
アーティザン・ゲートウェイ(Artisan Gateway):創業者兼CEO

スピーカー
■配給側
カート・リーダー(Kurt Rieder)
ワーナー・ブラザース・ピクチャーズ(Warner Bros. Pictures):APAC劇場配給部門シニアバイスプレジデント

ブレット・ホッグ(Brett Hogg)
ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント(Sony Pictures Entertainment):国際配給部門エグゼクティブバイスプレジデント

■興行側
グエン・ティ・マイ・ホア(Nguyen Thi Mai Hoa)
ギャラクシー・スタジオ(Galaxy Studios):CEO

ハビエル・ソトマイヨール(Javier Sotomayor)
シネポリス(Cinépolis):アジア&中東地域管轄ディレクター
《目次》

 

 

“観客のフランチャイズ疲れ”で一括りにしてはいけない理由

まず、モデレーターが、「スタジオの観点からすると、人々に親しまれ愛され、関心の高いキャラクターやタレントを起用した映画を作るというアイデアは、ごく自然なことだと思います。今、フランチャイズという言葉が否定的に使われる風潮がありますが、それは的外れではないでしょうか」と疑問を投げかけました。

ワーナー・ブラザース・ピクチャーズのカート・リーダー氏は、「フランチャイズ映画への感覚は各国の観客によって異なるため、一概に判断できない」としたうえで、総論だけを信じることに警鐘を鳴らしました。「マスコミは『人々はスーパーヒーローが嫌いか、退屈しているか、続編にうんざりしている』と決めつけたがります。でも、実際そんなことはなく、問題は続編が存在すべき理由とよい脚本があるかどうかということなのです。総論を述べて、観客が続編を望んでいないと思い込むべきではありません。今の観客は、家のテレビでも質の高い作品を観ることができるため、作品を観る目がより洗練されています。そのため、よりよい脚本と演出が求められるのです」。

 

“宿題”を強要することは避けるべき

同時に、フランチャイズにありがちな“宿題”に対して忠告をしたリーダー氏。「観客に、映画を観る前の下調べを強いることは避けたいものです。具体的なタイトル名はあげませんが、これから観る続編を理解するために、過去の作品をテレビで観たり、ネットで調べたりして、深く勉強しなければならないことがありました。このように、宿題を強要することはよくないと思います」。

シネポリスのハビエル・ソトマイヨール氏も、「宿題を強要すべきでない」というリーダー氏に同調。「たとえ第9弾の映画だとしても、ストーリーを理解したり、登場人物に親しんだりするために、前の8作を観る必要がないのであれば、フランチャイズ性はそこまで高くないのです。ある登場人物の男性が、もう1人の男性の孫であることを知っていなければならない、というのであれば、それは複雑すぎます」。

 

『マッドマックス』のジョージ・ミラー監督はなぜ続編を作ったのか?

ここで、『マッドマックス 怒りのデス・ロード』の前日譚とされる『マッドマックス:フュリオサ』の例をあげたリーダー氏。「なぜ、ジョージ・ミラー監督はあの映画を作ろうと思ったのか?(以下、会員限定記事にて掲載)

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