KCON LA 2025レポート前編:『KPOPガールズ! デーモン・ハンターズ』の大ヒットに見るKカルチャーのグローバル展開
    
    
    
      
        公開日: 2025/08/29
      
  
  
    米ロサンゼルスで韓国の音楽、ビューティー、食、ドラマなどをテーマにした北米最大級のKカルチャーフェスティバル「KCON LA」が8月1日から3日にかけて開催されました。本特集では、K-POPを中心としたKカルチャーのグローバル展開と、 日本のPOPカルチャーに特化したコンベンション「Anime Expo」との比較から、イベントの更なる発展の可能性について考えます。
    第1回は、現地の様子をレポートするとともに、快進撃が続く『KPOPガールズ! デーモン・ハンターズ』の成功を紐解きます。
※本記事で触れられている内容は2025年8月時点の情報です。
- 巨大主催企業の取りまとめ力と時流を読んだモメンタムの掴み方
 - 2万人収容のCrypto.comアリーナで、K-POPを代表する37アーティストがライブを開催
 - 韓国の巨大コングロマリット、CJグループが主催
 - 「Kカルチャーの中心にはK-POPがある」(イ・ビョンホン)
 - Netflix史上最も視聴されたオリジナル映画『KPOPガールズ! デーモン・ハンターズ』
 
巨大主催企業の取りまとめ力と時流を読んだモメンタムの掴み方
KCON /Courtesy of CJ ENM毎年7月初旬にロサンゼルスで開催されている「Anime Expo(通称AX)」と双璧をなすアジア系ポップカルチャーの祭典が「KCON LA」です。開催13年目の今年は3日間にわたりロサンゼルスのコンベンションセンターで行われ、参加者約12万5000人のうち40%は州外からの参加で、同市に多大な経済効果をもたらしました。
今年は、Amazon Musicとの独占パートナーシップにより、初めてグローバル配信を実施しました。北米・南米・ヨーロッパなどの地域ではPrime VideoとTwitch内のAmazon Musicチャンネルでコンサートのライブ配信が行われ、AmazonやYouTubeが標榜する「ライブイベントとデジタル体験の融合」という新しいエンタテイメント消費モデルを確立したのです。
また、6月にNetflixが配信開始したオリジナル映画『KPOPガールズ! デーモン・ハンターズ』が徐々に人気を集め、8月のKCON LAの頃には劇中曲がヒットし始めていました。8月中旬にはBillboard Hot 100の1位に、8月23、24日の週末に全米1700スクリーンで行われた「シンガロング上映(応援上映)」は約2000万ドル(約29億円)の興行収入を上げたと推測されています。北米でK-POPがイベントとして根付いていることも、配信開始から2カ月経ったアニメーション映画の興行的成功を後押ししたことでしょう。
KCON LAの成功は、巨大主催企業の取りまとめ力と、市場と時代を読むモメンタムの掴み方にあります。急成長するK-POP産業の海外戦略の中核拠点としてロサンゼルスを位置付け、輸出産業から経済共同体としての文化輸出に舵を切るイベントとなっていました。
2万人収容のCrypto.comアリーナで、K-POPを代表する37アーティストがライブを開催
AXはコンベンションセンターをフルに使ってパネルやブースを展開していましたが、KCON LAはメインイベントのカウントダウンコンサートを、隣接するCrypto.comアリーナ(約2万人収容)で開催しました。KCON LA初出演の『aespa』、『SEVENTEEN』のHOSHIとWOOZIによるユニットの『HxW』、完全体復帰の『MONSTA X』、そして2年連続ヘッドライナー(大トリ)を務める『NCT 127』など、K-POPの現在を代表する37アーティストが3日間にわたりライブパフォーマンスを行いました。
ラインナップの中でも、『JO1』と『IS:SUE』の参加は今年のKCON LAの特徴を際立たせるものでした。「Produce 101 Japan」から誕生した2組は、吉本興業とCJ ENMによる合弁会社LAPONEエンタテインメントがマネジメントを行い、活躍の場をグローバルに広げつつあります。Billboard Japan Hot 100で8作連続1位を獲得し、現在ワールドツアーを展開中の『JO1』は、ステージで『SEVENTEEN』の楽曲をカバーし、K-POPとJ-POPの融合を体現していました。KCON LAの会場でも「Produce 101 Japan」のブースが設けられ、その場でオーディション参加受付を行っていました。また、博報堂とCJ ENMが合弁会社を設立、新たなオーディション番組を共同制作するというニュースもあります。
他グループにも中国や北米出身のメンバーがいるなど、日本だけでなく世界のポップミュージック市場を取り込み、協働しています。これは、後述する『KPOPガールズ! デーモン・ハンターズ』や『KPOPPED』にもつながる、経済共同体としての動きだと捉えています。
韓国の巨大コングロマリット、CJグループが主催
KCONを主催するCJ ENMは、韓国のサムスングループに出自を持つCJグループの総合エンタテイメント企業です。映像コンテンツ製作、音楽、ケーブルテレビ事業、Eコマースなど、エンタテイメントにまつわる様々なサービスを手がけています。今年はCJグループのKビューティー小売チェーンのOLIVE YOUNGが冠スポンサーとなり、過去最大の430平方メートルのブースに60以上のブランドを集結させ、3万6000人超の来場者を集めました。OLIVE YOUNGは2026年上半期にロサンゼルス初出店を予定しており、Kビューティー市場の北米展開における重要な拠点となることを目指しています。
コンベンションセンター内の展示エリア「K-COLLECTION with KCON exhibition zone」では、韓国の中小企業50社以上が参加し、ビューティー、ファッション、食品、技術革新などを紹介しました。新興韓国ブランドの米国市場参入機会を提供する試みです。K-POPの周辺にあるものすべてをコンベンションで一気に見せるやり方は、点と点を繋ぐだけでなく面に広げる効果があります。推しK-POPアーティストを観に行ったら、新たな新人グループが気になるように。推しメンバーが出演するKドラマを観て、プロダクト・プレイスメントで紹介される食やビューティーに興味を持ち、訪韓へ。Kカルチャーの広がりは消費行動にも結びついています。
CJグループが展開する食品ブランド「bibigo」と『SEVENTEEN』のコラボKCON /Courtesy of CJ ENM
「Kカルチャーの中心にはK-POPがある」(イ・ビョンホン)
KCON LA初日、カウントダウンコンサートの幕開けに「I Love K-POP!私の世界を築く手助けをしてくれるチームやバンドを探しに来ました……」と『KPOPガールズ! デーモン・ハンターズ』のキャラクターに扮した台詞とともに登場した俳優の『イ・ビョンホン』は、「K-POP、Kドラマ、K映画、Kビューティー、Kフード……みなさんが愛してくださるKカルチャーの中心にはK-POPがあります」と開会を告げました。この夜、イ・ビョンホンがK-POPアーティストたちが集まるステージに立ったのは、K-POPとKカルチャーを取り巻く文脈として大きな意味がありました。
イ・ビョンホンKCON /Courtesy of CJ ENM
Netflix史上最も視聴されたオリジナル映画『KPOPガールズ! デーモン・ハンターズ』
『KPOPガールズ! デーモン・ハンターズ』から「HUNTR/X」Courtesy of Netflix
K-POPスターでありながら密かに魔物(デーモン)退治として活動するガールズグループ「HUNTR/X(ハントリックス)」の物語『KPOPガールズ! デーモン・ハンターズ』は、この夏のグローバルポップカルチャーを牽引しています。6月20日の配信開始以来、Netflix史上最も視聴されたオリジナルアニメーション映画だけでなく、8月26日付のチャートで歴代最多視聴英語映画作品となりました。10週間で2億3600万回の視聴を記録しています。
Netflixの歴史を作ったグローバル大ヒット作品『イカゲーム』で知られるイ・ビョンホンは、今作でデーモンの王「グウィマ」の声を演じています。劇中でK-POPガールズグループの「ハントリックス」が歌う「Golden」は、Billboard HOT100で1位を獲得し、K-POP関連楽曲として9作目、K-POPガールズグループによる楽曲としては史上初の快挙を達成しました。 アメリカのソニー・ピクチャーズ・アニメーションが製作した『KPOPガールズ!』は、韓国外からの視点で見たKカルチャーへの憧れがふんだんに取り入れられているところがグローバルヒットの理由と考えられ、このKCON LAはまさにそのファンの想いに応えるイベントでした。 イ・ビョンホンが声を演じたグウィマは、ボーイズグループの「Saja Boys(サジャ・ボーイズ)」を操りデーモン退治のハントリックスと戦うという設定で、K-POPアーティストを集結させたKCON LAに相応しい人選といえます。
『KPOPガールズ! デーモン・ハンターズ』から「Saja Boys」Courtesy of Netflix
コンサートでも、Mnetのサバイバルオーディション番組「I-LAND2 : FIN/αL COUNTDOWN」出身の『izna』(韓国出身の4人と日本出身の2人による6人組ガールズグループ)から、パン・ジミン、チェ・ジョンウン、そして日本出身のココの3人による「Golden」のカバーが披露されました。
「Golden」を歌う『izna』のメンバー。左から、チェ・ジョンウン、パン・ジミン、ココKCON /Courtesy of CJ ENM
彼女たちを発掘した「I-LAND2」の総合プロデューサーであるTHE BLACK LABELのTEDDY(テディ)が映画のために同曲をプロデュースした縁もあり、『izna』のスペシャルステージが行われました。6月20日の配信開始から、徐々に人気を博してきた映画からのヒットチューンを真っ先にK-POPファンに届ける、これこそがファンファーストなのです。
後半へ続く
取材・文/平井伊都子
- 第1回:KCON LA 2025レポート前編:『KPOPガールズ! デーモン・ハンターズ』の大ヒットに見るKカルチャーのグローバル展開
 - 第2回:KCON LA 2025レポート後編:KCON LAとAnime Expoから北米におけるアジア系カルチャーの持続的成長を考察する
 
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