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アニメイベント来場者をプロファイリング セミナーレポート~Animeasure/Interpret社による海外アニメファンリサーチプレゼンテーション
公開日: 2024/08/02

特集:Anime Expo 2024 第2回

米ロサンゼルスで日本のアニメやマンガなどのポップ・カルチャーに特化した北米最大級のコンベンション「Anime Expo」が7月4日から7日にかけて開催されました。今年は昨年を上回る来場者数で大いに盛り上がり、日本からも多数関係者が訪問しました。注目のイベントやセミナーについて紹介します。
第2回は世界14カ国、1.4万人に向けた消費者調査に基づきアニメファンの姿に迫った、Interpret社の調査レポート「Animeasure」についてのプレゼンテーション(ロサンゼルス時間2024年7月6日12時~12時50分)をレポートします。

※本記事で触れられている内容は2024年7月時点の情報です。

スピーカー
ジョン・マッカラム(John McCallum)
Interpret:ビデオゲーム・アニメ市場リサーチマネージャー
《目次》

 

 

ゲーム業界を専門とするグローバル調査会社Interpret社、2020年より世界のアニメファン調査を開始

今回のプレゼンテーションを行ったジョン・マッカラム氏は、世界5カ国、8カ所に拠点を持つグローバル調査会社Interpret社において、様々なリサーチプロジェクトをリードするシニアリサーチマネージャーです。同社は、メディア、ゲーム市場に関するシンジゲート調査やゲーム業界向けのカスタム調査を行っていますが、ゲームとアニメのクロスオーバーが増えるなか、2020年よりグローバルアニメ視聴者の調査分析(年次実施)に基づくレポート「Animeasure」の提供を開始しました。マッカラム氏は日本在住経験もあるアニメ好きで、本レポートの企画・調査・作成をリードしています。

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アニメの定義と市場調査の必要性

「アニメとは何か」これは案外難しい命題です。日本アニメのスタイルに寄せた映像を日本以外の国が作った場合、それはアニメなのか? 日本の制作者がハリウッドスタイルのアニメを作ったらそれはアニメなのか? アートスタイルで定義されるものなのか、制作者の拠点で定義されるものなのか、考え方は様々です。Animeasureでは「アニメ視聴者」にフォーカスしていますが、調査では「アニメを観た」と自認し、回答した人を「アニメ視聴者」と呼んでいます。

マッカラム氏は、そもそもこうした調査がアニメにおいて必要な理由として、グローバル化したアニメビジネスの世界各国に存在するファンの規模とその影響力を挙げました。同氏は「日本では雑誌が行うアンケートもあり、市場と需要が見えています。しかし、そういった仕組みがない海外市場においては、大きな存在となっているグローバルアニメファンについて理解するための分析が必要だ」と説きました。

 

消費者調査から見えるアニメ市場の現在

アニメの海外での盛り上がりを多くの人が実感していますが、相対的にその地位はどの程度のものなのでしょうか。マッカラム氏は「アニメ視聴者変化の軌跡」と題されたスライドを共有しつつ、「パンデミック真っ只中の2020年にアニメ視聴者数が爆発的に増加したのち、米国内の新たなファンのほとんどは視聴を続けており、2023年に初めてアニメを視聴した人も多い。2024年に向けてアニメの勢いに匹敵するジャンルは他になく、他の海外ジャンルをはるかに凌駕し、アメリカのアニメーションとも張り合っている」と解説。

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また、アニメの魅力の一つに、物語の多様性がありますが、各国で観られているアニメのジャンルにはかなりばらつきがある様です。「多くの国では、『アクション・アドベンチャー』『コメディ』『SF』がトップに入りますが、日本は独特です。ほとんどの国で上位にランクインしない『異世界』が最も人気なのです」。

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「どんなIPが観られているか」という点でも、日本では近年リリースされた作品が上位に入る一方、欧米ではTOP10を占める作品のほとんどが5年以上前に放送開始されたもので、『ドラゴンボール』シリーズ、『進撃の巨人』『NARUTO -ナルト-』『BORUTO-ボルト- -NARUTO NEXT GENERATIONS-』『DEATH NOTE』といった作品が人気だということも紹介されました。

 

ますます期待高まるゲームとアニメのクロスオーバー

Netflixによる実写ドラマ『ONE PIECE』の大成功がアニメシリーズの視聴者のすそ野を広げたことに触れ、米国アニメ視聴者にとって実写化の需要が高いことを紹介。さらなるメディアクロスオーバーの可能性として、ゲームIPのアニメ化への関心度の高さについて具体的なデータを交えて説明しました。まず、ゲーマーの4分の1以上がプレイしているゲームを原作としたアニメを見たいと答えています。また、ビデオゲームIPのアニメ化に対する関心度の高いものをみると、ほとんどが日本発のものになっています。

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アニメファンセグメンテーションで真のアニメファンの姿に迫る

さらにアニメファンの本質を明らかにするマッカラム氏は、「アニメは様々な市場だけでなく、エスニシティを超えて人気がある。アニメはアメリカの多様なエスニシティの視聴者を共通のコミュニティに導き、多くのアフリカ系アメリカ人(たとえ彼らがアクティブな視聴者である可能性が少し低いとしても)だけでなく、他の少数エスニックグループにとってもポップ・カルチャーの強力なタッチポイントとなっている」と語りました。

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Animeasureでは、アニメファンの理解を深める上で単一のグループとして捉えるのではなく、多様なニーズ、動機、経験を踏まえてセグメンテーションを行うべきとのスタンスを取っており、独自の8つのセグメントに分けてアニメファンを捉えています。(詳細は、多様化する海外アニメファンの真の姿を浮き彫りに~海外アニメファン調査レポート Animeasure販売開始をご確認ください)。 

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ニーズベースでユーザーを掘り下げる重要性が分かる事例として、女性が多めのセグメントのなかでも、嗜好が全く異なることを紹介。「プリンセスは『アイドル』『恋愛』を好み、型破りシッパー※は『BL』『百合』を好みます。一方で刺激好きは『ドラマ』『コメディ』『スリラー』などのジャンルを視聴しています。一方で、「見ない」ジャンルとして、プリンセスは型破りシッパーが好む『BL』『百合』を挙げ、一方の型破りシッパーはプリンセスが好む『逆ハーレム』や『アイドル』を「見ない」ジャンルとして挙げています。また、『どこで見るのか』についてもセグメントで大きく異なります。どのセグメントでもアニメ視聴に最も利用されているのはNetflixですが、2位以下のCrunchyroll(クランチロール)、Amazonプライム・ビデオ、Hulu、ディズニープラス、Maxの順番はセグメントによって異なります」

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※型破りシッパーの「シップ」は、「関係(Relationship)」を意味するファンの間で使われる略語であり、「シッピング」は特定のキャラクターを恋愛関係に結びつける娯楽を表す動詞である。

 

Anime Expo来場者のプロファイルは?

Anime Expoを始めとしてファンが集まるイベントやコンベンションは、ファンによる草の根運動の様な役割を果たし、北米におけるアニメの浸透を大きく後押しした要素として挙げられます。マッカラム氏は「毎年ファンイベントやコンベンションに参加する人の割合は、アニメ非視聴者(3カ月以内にアニメを観ていない人)は20%であるのに対して、アニメ視聴者では33%を占めます」と語った上で、「では、こうしたアニメイベントに来場する人々のプロファイルはどの様なものでしょうか」と8つのセグメント別のイベント参加者の構成比を示すチャートを紹介しました。

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マッカラム氏は「会場には多くのプリンセスと型破りシッパーが来場しています。一番アニメ関与度の高いアニメ通は、その熱意とセグメントの規模の割にはさほど来ていません」など具体的なデータで来場者構成について解説。

プレゼンテーション後にQ&Aセッションが行われ、データ好きな熱心なアニメファンが調査の方法含め様々なことを質問しました。本セミナー参加者の関心度の高さが伺え、熱っぽい雰囲気で約1時間のセミナーが締めくくられました。


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