世界映画興行概況(前編)2016年世界興行統計数値から - CinemaCon 2017レポート
公開日: 2017/04/07
Author:梅津 文
世界中の興行企業向けのコンベンション、「CinemaCon」が2017年3月27日から30日までラスベガスで開催され、様々なトレードショー展示やセミナー、プレゼンテーションが行われました。ここではまず、 ”INTERNATIONAL DAY”と銘打たれた初日3月27日(月)の、20世紀フォックスインターナショナルの社長であるアンドリュー・クリップス氏による「世界興行市場概況」(International film business overview)の内容を、二回に渡ってお届けします。
前編:2016年世界興行統計数値から
後編:興行と配給と興行の協業を取り巻く4つのトレンド
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2016年の世界興行市場は、前年比の伸びが2015年と比べて鈍ったものの好調で、特に北米が伸びており、市場には楽観的なムードがある。
(2017年も『美女と野獣』が大ヒットとなり良いスタートを切っていてこのセッションに限らず、興行ビジネスの活況さにふれる場面は多かった。)
一方で留意すべき変化としては、観客の変化により既存のメディアで観客にリーチすることが難しくなっていることや、製作費・宣伝費の高騰、海賊版問題とともに、観客の余暇の選択肢が増えるなかで「映画鑑賞」が多くの選択肢のうちの一つになっていることを挙げられる。
2016年世界興行市場の統計数値
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【図1】世界興行市場の推移 出典:MPAA “THEATRICAL MARKET STATISTICS 2016” |
上の図1は、MPAA(Motion Picture Association of America)発表の世界興行市場の統計数値であるが、ドルベースでの2016年世界興行市場規模は前年比1%増となっており、北米市場は過去最高114億ドル($11.4billion)。2015年と比べると伸びがフラットとなった。
全体の伸びがフラットだった原因としては、これまで世界の興行市場の伸びをけん引してきた(アメリカ・カナダ以外の)「インターナショナル」の伸びがほとんど見られなかったことがある。しかし、この裏には2016年為替相場において、ドル高が進んだことが要因として大きい。
過去10年間を振り返ると、世界興行は年率平均では4.3%の伸びだった。しかし、内訳をみると「アメリカ・カナダ」が1.9%、「インターナショナル」市場が5.5%と、後者が市場をけん引しているのだが、この中から中国を除くと2.6%となる。また、中国は36.5%と著しい伸びを示している。
(参考 2016年の北米・世界興行市場統計 MPAA THEATRICAL MARKET STATISTICS 2016)
(世界興行統計における為替の影響について MPAA blog: MAKING SENSE OF THE DOLLAR’S EFFECT ON GLOBAL BOX OFFICE IN 2016)
各国別の興行収入
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【図2】各国別興行市場規模 出典:MPAA “THEATRICAL MARKET STATISTICS 2016” |
国別の興行収入を見ると、7か国で「10億ドル」を超えている。特に中国が圧倒的に強く、66億ドル。トップ3か国ともアジアであることから分かるように、「インターナショナル市場」の成長のドライバーは、アジア・太平洋地域から来ている。
ドルベースでは為替の影響があるので、上の図のトップ20か国の興行市場を現地通貨ベースで各国の伸びを見てみると、ブラジルの前年比+12.1%をはじめ、ほかメキシコ、ロシア、日本においては前年比ベースで大きな伸び。中国も前年比+3.3%となっている。一方、イギリスはほとんど変わらず、ドイツは10%ダウン。要因としては、ヒットに恵まれず、また、6月のサッカー大会の影響である。
また、近年の世界興行の構造変化としては、以下のとおり、世界の興行をけん引するのは中国を含めたアジア・太平洋地域であるが、それとは対照的に、ヨーロッパは全体的に縮小傾向にある。
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【図3】世界興行収入の内訳とシェア 出典:MPAA “THEATRICAL MARKET STATISTICS 2016” |
スクリーンの増加
スクリーン数は、前年比8%増、164,000近くになった。ここでは中国をはじめとしたアジア・太平洋地域がけん引(前年比18%増)している。またデジタルスクリーンも17%増加し、全体の95%を占める。IMAXなどのPLF(Premium Large Format)スクリーンも11%増加し、全体で2,330スクリーンとなっている。デジタル化がここまで進んだことは業界全体の快挙である。また、今後もPLFは増加していくであろう。
◇ ◇ ◇ ◇
以上のように、クリップス氏は2016年の世界映画興行は、興行収入ベースでも設備の増加・高度化という意味でも好調である、との見方を示しました。そのうえで今後映画ビジネスの発展に向け興行と配給がより協業を深めていくためのキーワードとなる「4つのトレンド」について言及していました。
<後編「世界映画興行概況(後編)配給と興行の協業を取り巻く4つのトレンド」に続く>
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