世界のアニメーションの潮流~日米の配給会社、ニューディアーとGKIDS対談
公開日: 2023/03/27
商業長編アニメーションを対象とした「新潟国際アニメーション映画祭」にて、「世界の潮流部門」の関連トーク企画「【トーク】世界の長編アニメーション」が3月19日に開催されました。同企画では、日米の配給会社、ニューディアー※1の土居伸彰氏と米GKIDS※2のデヴィッド・ジェステット氏が対談し、世界の長編アニメーションの現状を紐解きました。

対談ではまず、海外における日本アニメが置かれた状況から始まりました。土居氏はアニー賞を例に出し、ほとんどの日本アニメが長編作品賞ではなく、長編インディペンデント作品賞にノミネートされていることを指摘。その話を受け、ジェステット氏はGKIDSが配給を手掛けたスタジオジブリ作品の経験を踏まえ、「実際にはポテンシャルはあるものの、大都市でしか上映されない。日本やアジアでヒットしたとしても、アメリカではインディペンデント作品として捉えられてしまう」と内情を明かしました。
土居氏はまた、インディペンデント長編アニメーションの面白さはそのユニークなグラフィックにあるものの、「インターネットやスマホの影響で、映画にかける時間やお金が減ってしまっているなか、新しくて見慣れないものをみつけようというよりは、間違いのない作品を観に行くという傾向が強くある」ことを危惧。しかし、そういったなかでも、アニメーションスタジオのカートゥーン・サルーン※3が重要な存在となってきているといいます。彼らの作品を配給するGKIDSのジェステット氏によると、「カートゥーン・サルーンは統一されたルックがあるわけです。例えば、数年前に観たカートゥーン・サルーンの作品が気に入ったのであれば、新作が出た際に、過去作の体験からまた観たいという予測ができるわけです」と作品単体だけでなく、ブランド認知の重要性を説きました。
対談の最後では『羅小黒戦記(ろしゃおへいせんき)』をはじめとした中国アニメーションの質が向上してきたことに触れ、「ローカルオーディエンスに向けて作品を作るようになってきたからだと思う」とジェステット氏はその理由を分析しました。
日本アニメに限らず、ヨーロッパをはじめとした世界各国のアニメーションが持つ、ユニークかつ多様な表現を多くの人に届けることに重きを置く両氏。その強い思いをいかにして形にしていくのかが垣間見え、来場者も熱く耳を傾ける対談となりました。
2015年にアニメーション研究・評論家の土居伸彰氏が設立。国内外のアニメーション映画作品の配給や、映画祭のプロデュース、アニメーションに関する書籍・記事の執筆を手掛ける。16年に日本配給を行った『父を探して』は、米アカデミー賞長編アニメ映画賞にノミネート。同作の北米配給はGKIDSが手掛けた。
※2:GKIDS
米国のアニメーション配給会社。日本アニメの配給に積極的で、『千と千尋の神隠し』『かぐや姫の物語』などのスタジオジブリ作品やTVシリーズ『新世紀エヴァンゲリオン』の北米配給を手掛けている。これまで米アカデミー賞長編アニメ映画賞に12作品のノミネート実績があり、直近では『ウルフウォーカー』(2020年、アイルランド)、『未来のミライ』(2018年、日本)がノミネートされた。
※3:カートゥーン・サルーン
アイルランドのアニメーションスタジオ。『ブレンダンとケルズの秘密』『ソング・オブ・ザ・シー 海のうた』『生きのびるために』などが米アカデミー賞長編アニメ映画賞にノミネートされている
新着記事
-
『薬屋のひとりごと』推しファン人数記録更新、『Snow Man』推しエンタメブランド価値2カ月連続で1位~2025年6月エンタメブランド調査結果
(2025/06/25) -
映画産業の発展を技術・AIが後押しする可能性~映画とAI活用の現在地
(2025/06/20) -
『8番出口』『国宝』はじめ、カンヌ国際映画祭上映作品の話題度・浸透度
(2025/06/13) -
キャストとドラマの関係を可視化、『本田響矢』放送後に推しファン増加~4月ドラマのヒット分析【後編】
(2025/06/06) -
ファン熱量の『最後から二番目の恋』、キャストパワーの『キャスター』~4月ドラマのヒット分析【前編】
(2025/06/06)
新着ランキング
-
劇場公開映画 認知率 週間TOP10【最新週】
(2025/06/30) -
劇場公開映画 週末動員ランキングTOP10【最新週】
(2025/06/30) -
劇場公開映画 週末動員ランキングTOP10(2025年6月20日~6月22日)
(2025/06/30) -
劇場公開映画 認知率 週間TOP10(2025年6月21日実査)
(2025/06/30) -
音楽アーティスト リーチpt 週間TOP10【最新週】
(2025/06/26)
アクセスランキング
(過去30日間)
-
動画配信の国内市場規模は5,930億円(24年、前年比3.3%増)、2029年には7,873億円規模へ
(2025/02/28) -
2024年の定額制動画配信市場は推計5,262億円、U-NEXTがシェア最大の伸び、6年連続首位のNetflixに迫る
(2025/02/25) -
『8番出口』『国宝』はじめ、カンヌ国際映画祭上映作品の話題度・浸透度
(2025/06/13) - ランキング ジャンル別一覧
-
定額制動画配信サービス 週間リーチptランキングTOP20【最新週】
(2025/06/26) -
「映画館離れ」と「映画離れ」の今
(2024/10/04) -
U-NEXTがシェア拡大し5年連続首位のNetflixに迫る、成長続く定額制動画配信市場は5,000億円超え(前年比12.1%増)
(2024/02/16) -
クランチロール幹部が見据える10億人のアニメファンを「配信から劇場」へ導く戦略~カンヌ国際映画祭2025
(2025/05/30) -
プロ野球の球団人気は成績に左右されるのか、推しファン人数セパ最多『阪神』『日本ハム』ほか球団別に分析
(2025/04/28) -
ファン熱量の『最後から二番目の恋』、キャストパワーの『キャスター』~4月ドラマのヒット分析【前編】
(2025/06/06)