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活況な2019年映画総興行収入、鍵は「イベント性」と「上映訴求性」
公開日: 2020/01/10

2019年12月27日付毎日新聞夕刊映画欄において掲載された『映画館ならではの特別感』の転載に、補足を加えています

 

2019年映画総興行収入は前年を15%上回って2500億円を超えるとみられている。『天気の子』『アナと雪の女王2』『アラジン』『トイ・ストーリー4』など、例年より多く生まれた100億円級のヒット作が好況をけん引した。

 

いつの時代も映画興行を引っ張るのは創造性、娯楽性を兼ね備えた「強い作品」。しかし、近年は映画館ならではの体験価値である「イベント性」「上映訴求性」が加わっている。

 

「イベント性」とは、誰かが、いま、すごく見たい、という要素。つまり、多くの観客とともに目撃すべき旬な話題作、あるいは共通のキャラクター・世界観を支持するファンが集まる場という付加価値である。背景には、話題度の沸騰と、ファン同士のつながりや交流を可能にするデジタルメディアが映画の情報入手経路として存在感を増していることがある。

 

情報入手経路別の認知率推移
情報入手経路別に認知率の推移を2011年から2019年まで記した。「TVCM」や「TV番組」から映画作品を知った割合は2011年に比べ、2019年は約0.6倍に落ち込んでいる。一方、“ファン同士のつながりや交流を可能にするデジタルメディア”の筆頭ともいえる「SNS」や、利用端末となる「モバイル」は、約4倍の伸びを見せている。「TVCM」「TV番組」の絶対的な割合はまだまだ高いが、情報入手経路としての「SNS」の存在感は年々増していることが分かる。

 

 

一方の「上映訴求性」は、技術を結集させた上映・音響設備が活きる映像体験であること。”IMAX”や”DolbyCinema”など、上映技術規格の普及が下支えしている。

 

映画産業において動画配信サービスの存在感が増しているが、興行も好調なのはこういった映画館ならではの特別感を訴求していることも要因の一つ。逆にそれが欠けた時、動員の難しさにもつながっている。来年以降も興行の盛り上がりにおいて重要な要素となるであろう。

 

(GEM Partners代表、梅津文)=毎月最終金曜日掲載

 

◆掲載元◆
毎日新聞:シネマの週末・データで読解 『映画館ならではの特別感』(毎日新聞2019年12月27日 東京夕刊)

 

 

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