続く黄金期と変化への覚悟
公開日: 2019/03/07
2018年11月、米国カリフォルニア州サンタモニカで開催された映画見本市アメリカン・フィルム・マーケット(AFM:American Film Market)より、映画業界団体のトップが登壇したカンファレンス“The Global Perspective”をレポートします。
米通信大手AT&Tとタイム・ワーナーや ウォルト・ディズニー・カンパニーと21世紀フォックスの事業統合、動画配信サービス大手ネットフリックスのアメリカ映画協会(MPAA)加盟など、産業構造の変化が進む映画業界。同カンファレンスでは、米メジャースタジオが加盟するMPAAのチャールズ・H・リブキン会長兼CEOと、インディペンデント系の映画/テレビプロデューサー、ディストリビューターが加盟するインディペンデント・フィルム&テレビジョン・アライアンス(IFTA)のジーン・M・プレウィットCEOが、双方の立場から激動の時代を迎えた映画業界の現状と展望に対する見解を話しました。
モデレーター:
エリック・シュワーツェル(Erich Schwartzel)
ウォール・ストリート・ジャーナル(The Wall Street Journal) 映画担当
パネリスト:
ジーン・M・プレウィット(Jean M. Prewitt)
インディペンデント・フィルム&テレビジョン・アライアンス(IFTA:Independent Film & Television Alliance) CEO
チャールズ・H・リブキン(Charles H. Rivkin)
アメリカ映画協会(MPAA:Motion Picture Association of America) 会長兼CEO
第4回は未来に焦点を当て、2019年に注目すべきポイントについて語られました。未来の映画市場は明るいのか、はたまた暗雲が垂れこめているのか。映画事業者が備えるべきこととは? 我々が歩むべき次なる一歩についての考察に注目です。
※本記事で触れられているサービス内容はカンファレンス開催(2018年11月)時点の情報です
MPAA:コンテンツの黄金期は続き、未来に向けて戦い続ける
エリック・シュワーツェル(モデレーター)
前を向いて歩き続けていきましょう。最後の質問です。今日この会場にお越しいただいた皆さんが、2019年に注目すべきポイントを一つ挙げるとすれば何でしょう?
チャールズ・リブキン(MPAA)
それが分かれば……と冒頭に思いましたが、今、少し見えていることがあります。統合はますます進むでしょうが、全体的にはポジティブなものになると考えています。コンテンツの黄金時代は続くでしょう。
2018年の興行成績は素晴らしいものでしたが、この流れはまだまだ終わりません。2017年の記録ですが、野球、フットボール、バスケットボール、ホッケー、サッカーまで合わせたすべてのチケット販売の50%が映画のチケットで、111億ドルでした。しかし、今年はこれを上回る勢いです。映画ビジネスは価値が低く見積もられている傾向がありますが、まだまだ価値があるのです。
MPAAの見地からは、冒頭でお伝えしたように、海賊版との戦いが水面下で続いています。我々は「最も正確に未来を予測する方法は、自ら未来を創ること」と申し上げたいと思います。我々は文字通り対策を倍増させ、世界中の海賊版を撲滅するために、12カ月以内にこれまで以上の規模の同盟を立ち上げるつもりです。新たなメンバーを迎え、新たな戦い方を採用し、新規資金も調達します。あらゆる面で来年は充実した年になるでしょう。
IFTA:観客はそこにいる、変化の覚悟を持て
ジーン・プレウィット(IFTA)
IFTAから2019年に向けてのメッセージを出すとすれば、「変化に向けて覚悟せよ」です。急激な変化の到来を前に、映画事業者のすべては身を引き締めて、柔軟かつ勇敢でいなければなりません。
今はっきり見えているのは、すでに戦略を転換している企業は、多彩な方法でポジショニングを変えているということです。異なるタイプのコンテンツを視野に入れ、長尺ものだけでなく、短尺ものも製作するといった多様性に取り組んでいます。さらにはVRの検討もあるでしょう。また、特定のジャンルや作品を押し出すために自身でサービスを立ち上げたり、新たなコンテンツパートナーシップに取り組んだりもしています。
合言葉は「観客はそこにいる」です。ハートを失わず、心折れることなく、過度なこだわりを捨て、 “古き良き黄金時代”には戻るべきではないという事実を受け入れるべきです。今は、“現在の黄金時代”です。インディペンデント系スタジオは順応性が高いと信じていますが、今は非常に怖い時代でもあります。ファイティングスピリットを鼓舞し、現在の市場や次なる市場を進んでいかなければなりません
特集:米映画市場をめぐるMPAAの期待とIFTAの懸念
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