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産業構造の変化が意味するもの~コンテンツの黄金期
公開日: 2019/03/01

特集:米映画市場をめぐるMPAAの期待とIFTAの懸念(3)
afm2018

 

2018年11月、米国カリフォルニア州サンタモニカで開催された映画見本市アメリカン・フィルム・マーケット(AFM:American Film Market)より、映画業界団体のトップが登壇したカンファレンス“The Global Perspective”をレポートします。

米通信大手AT&Tとタイム・ワーナーや ウォルト・ディズニー・カンパニーと21世紀フォックスの事業統合、動画配信サービス大手ネットフリックスのアメリカ映画協会(MPAA)加盟など、産業構造の変化が進む映画業界。同カンファレンスでは、米メジャースタジオが加盟するMPAAのチャールズ・H・リブキン会長兼CEOと、インディペンデント系の映画/テレビプロデューサー、ディストリビューターが加盟するインディペンデント・フィルム&テレビジョン・アライアンス(IFTA)のジーン・M・プレウィットCEOが、双方の立場から激動の時代を迎えた映画業界の現状と展望に対する見解を話しました。

 

モデレーター:
エリック・シュワーツェル(Erich Schwartzel)
ウォール・ストリート・ジャーナル(The Wall Street Journal) 映画担当

パネリスト:
ジーン・M・プレウィット(Jean M. Prewitt)
インディペンデント・フィルム&テレビジョン・アライアンス(IFTA:Independent Film & Television Alliance) CEO

チャールズ・H・リブキン(Charles H. Rivkin)
アメリカ映画協会(MPAA:Motion Picture Association of America) 会長兼CEO

 

第3回は米通信大手AT&Tとタイム・ワーナーや ウォルト・ディズニー・カンパニーと21世紀フォックスの事業統合といった産業構造の変化に着目。MPAAとIFTAが立場の異なる視点から統合の波をどのように捉えているかについて明かしたほか、その影響や不安に関しても赤裸々に語りました。
※本記事で触れられているサービス内容はカンファレンス開催(2018年11月)時点の情報です

 

MPAA:統合の波によって、より多くのコンテンツが求められるようになる

 

 エリック・シュワーツェル(モデレーター)
シリコンバレーと言えば、様々な形で統合を仕掛けていますね。動画配信会社や通信会社が業態を変え、スタジオの優先順位を変えるのを目にすることも少なくありません。この統合の波は会員企業や製作者、出資者にとってどのような意味を持つと見ていますか?

 

 チャールズ・リブキン(MPAA)
私は非常にポジティブに考えています。我々はコンテンツの黄金期を生きています。例に上がった事業者はすべて、良質なコンテンツを必要とします。今後、自社製作の素晴らしい作品も増えていくでしょう。

MPAAに加盟している事業者も変化しています。ウォルト・ディズニー・カンパニーと 21世紀フォックスは事業統合が完了した際に、ストリーミング配信のコンテンツを必要とするOTT サービスの提供を発表しています。AT&T傘下のワーナーメディアもOTTサービスの提供を公式に発表しました。これにもコンテンツが必要です。コムキャストも積極的姿勢を見せています。これらは、より多くの機会、枠、コンテンツ、クリエイティビティが必要とされると考えられます。私は歓迎しますね。

 

 

IFTA:システムの外にいる事業者にもチャンスが提供されるのか疑問!

 

 ジーン・プレウィット(IFTA)
私はチャールズの意見を真っ向から否定しませんが、この動きには慎重な見方をしています。

一般的に言って、コンテンツの配給網やネットワークを敷く事業者は、リスクコントロールを望みます。そのため、自分たちでコンテンツの権利を持とうとします。こういったアグリゲーターの手法は、システムの外に存在する事業者の考えとは相容れません。彼らは新たなことに挑戦したいと願っており、それによってクリエーターとして抜きん出たいのであって、アグリゲーターに貢献することに重きを置いているわけではないのです。

私たちは、先ほどから話に出てきている統合に対しては非常に懸念を感じています。なぜなら、IFTA会員のように、システムの外にいる事業者にもチャンスが提供されるのかどうか疑問視されるからです。

ネットフリックスは多数のコンテンツを製作しています。しかし、ほとんどのプロデューサーの手には何も残りません。彼らはネットフリックスから多額の資金を得て、作りたいものを作れます。その額はインディペンデント系では決して得られない規模です。この点においては満足できる点もあります。しかしながら、彼ら自身の未来に残る作品や将来につながる資産価値を作っているわけではないのです。

これらの懸念を指摘したうえで、ネットフリックスのような事業者によって、ローカル市場に多額の資金が流入し、海賊版の存在や正規サービスの不在で大きな打撃を受けてきた市場が再び活性化することを願っています。

業界全体に投下される資金が増えることは望ましいという点では、私もチャールズと同意見です。業界人の大きなサポートになります。今日、再びサイクルは始まったといえます。今後、浮き沈みや逆行するようなこともあるでしょう。しかし、そのうちまた新しい規範に収束すると思います。

本日お越しの皆さんをはじめとしたクリエーターの価値とは、世界を違った視点で見ることなのだと思います。クリエーターは自分の作りたいものを作るために戦います。市場が再び活性化し、そんな方たちの作品が観客に届く理想的な道ができていくことを心から願います。

特集:米映画市場をめぐるMPAAの期待とIFTAの懸念