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動画配信で映画鑑賞が増える一方、「映画は映画館で観たい」割合も上昇~GEM映画白書より
公開日: 2021/03/26

2021年3月26日付毎日新聞夕刊映画欄において掲載された「シネマの週末・データで読解 『豊かな春 さらに弾みを』」の転載に、補足を加えています。
『トムとジェリー』『奥様は、取り扱い注意』

(左)『トムとジェリー』 ©2020 Warner Bros. All Rights Reserved.
(右)『奥様は、取り扱い注意』 ©2020映画「奥様は、取り扱い注意」製作委員会

<シネマの週末・データで読解:週末興行成績(20、21日)>

1.(1) シン・エヴァンゲリオン劇場版:|| 2週目
2.(NEW) 奥様は、取り扱い注意 1週目
3.(NEW) トムとジェリー 1週目
4.(NEW) 映画ヒーリングっど・プリキュア ゆめのまちでキュン!っとGoGo!大変身!! 1週目
5.(2) ブレイブ -群青戦記- 2週目
6.(3) 花束みたいな恋をした 8週目
7.(4) 劇場版「鬼滅の刃」無限列車編 23週目
8.(5) 名探偵コナン 緋色の不在証明 6週目
9.(7) ラーヤと龍の王国 3週目
10.(NEW) ミナリ 1週目

※()の数字は前週順位。興行通信社調べ

ランキングは「コロナ以前の春」を感じさせるバラエティーの豊かさだ。アニメ作品の大ヒットが続く中、人気俳優主演ドラマの劇場版『奥様は、取り扱い注意』が2位スタート。ハリウッド製の『トムとジェリー』が続き、アカデミー賞候補の『ミナリ』も小規模公開ながら10位につけた。しかし動員全体では例年を下回るペースで推移。まだまだ作品の供給が足りない。

年次の市場調査ではコロナ禍前と比べて、映画館で映画を年に1回以上観る映画参加者の割合は減少し、動画配信で観る割合が増加。一方で「映画は映画館で観たい」と答える割合はむしろ上昇している。映画を家で楽しむようになった人もいれば、家で多くを堪能したからこそ、これぞという作品は映画館でという人もいるだろう。

映画館/DVD/配信等における映画鑑賞率 「映画は映画館で観たい」「映画は映画館〈以外で〉観たい」割合 経年変化

また、映画館で映画を観ることに「気分転換」「日常生活からの解放」を求める割合が高まっている。映画館に行く理由は「大画面・高画質」が最も高く、「大音量・高音質」「集中して鑑賞」「非日常感」が続く。映画館ならではの体験に魅力を感じる人も増えているようだ。

「映画を映画館で見るときに求めるもの」上位項目の経年推移 映画を映画館で観たい理由(トップ20)

【21位以下の回答・回答者の割合が多い順】映画館の売店で飲食物(ポップコーンなど)を買うことができる/映画館の売店で映画関連グッズ(パンフレットなど)を見たり、買ったりすることができる/映画館のポイントを貯める・使うことができる/映画のポスターを見たり、チラシやフリーペーパーを持ち帰ることが出来る/自分しか知らないものを観ることが出来る/好きな人、気になってる人、仲良くなりたい人を誘いやすい/他の用事に合わせていける/他の人の反応や、一体感を感じることができる/映画館で映画を観ると、他の施設で割引を受けることが出来る/流行に乗っていると感じることが出来る/映画館による作品セレクトが良い/映画館で観たいとは思わない/舞台挨拶や舞台挨拶中継がある/特殊な上映イベント(応援上映、爆音上映、ママ向け上映など)で鑑賞できる/SNSで発信できる/その他

あとは映画館で観るべき作品の供給量。邦画の期待作が多く控え、ロサンゼルスの映画館も営業再開し、ハリウッド大作が待たれる。動員に弾みがつくことに期待がかかる。


補足:「映画は映画館で観たい」性年代別、鑑賞本数別割合

「映画は映画館で観たい」と答える割合を性年代別(全回答者ベース)でみると、男性40代以上と女性全般で数値が高まっている。年間鑑賞本数別ではライト層の方が「映画を映画館で観たい」と回答している割合が高く、年間鑑賞本数が最も多い、12本以上の層では数字が低くなっている。これは鑑賞本数の多い人は、映画によってどのように観るか選別しており、鑑賞本数の少ない人はこれぞという映画を映画館で観る、という行動特性の現れとみられる。また、鑑賞本数が0本の人でも「映画は映画館で観たい」と答える人の割合が高まっていることから、「映画は映画館で観たいが、観たい映画がない」、つまり作品供給が足りない、観たい作品の供給がない、ことから映画館での鑑賞率が減少していることもうかがえる。

「映画は映画館で観たい」性年代別、鑑賞本数別割合

(GEM Partners代表、梅津文)=毎月最終金曜日掲載

◆掲載元◆
毎日新聞:シネマの週末・データで読解 『豊かな春 さらに弾みを』(毎日新聞2021年3月26日 東京夕刊)

今回の調査結果について
今回の調査結果は、弊社が販売している「GEM映画白書ダッシュボード」をもとにしています。「GEM映画白書ダッシュボード」は、7年にわたるトラッキングデータにより分析作業を支援し、“具体的なデータ”で映画鑑賞者の実像を浮かび上がらせることができる画期的なオンラインツールです。2021年のアップデートでは、コロナ禍における映画鑑賞者の行動心理にフォーカスした企画調査や 新機能を実装。映画市場の“変化”を的確に捉えることができるため、映画ビジネス従事者様にとって欠かせないツールです。興味のある方はお気軽にお問い合わせください。

 

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