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プロ野球の球団人気は成績に左右されるのか、推しファン人数セパ最多『阪神』『日本ハム』ほか球団別に分析
公開日: 2025/04/28

プロ野球の2025年シーズンが3月28日に開幕しました。昨シーズン、セントラル、パシフィックの両リーグを合わせた公式戦の総観客動員数は、2668万1715人を記録(※)。コロナ禍前の2019年を上回る過去最多を更新するなど、人気が高まっています。そこで今回、人気を測る指標の一つ、球団を推しているファンの人数=「推しファン人数」に注目。毎シーズン熱い戦いが繰り広げられるプロ野球において、良い成績を残した球団は推しファン人数が増えるのか。さらに、成績が良ければ、推しファンの熱量も高まるのか。球団別に成績と推しファンの関係について分析していきます。
※ 参照「NPB.jp 日本野球機構:2024年 セ・パ公式戦 入場者数

《目次》
 

3シーズンの成績を球団別に定量化、『阪神』『ソフトバンク』が首位

まず、各球団のシーズン成績をみてみます。セントラル、パシフィック両リーグ(以下、セ・パ両リーグ)における過去3シーズンの最終順位は以下の通りです。

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この直近3シーズンの順位から、球団の成績を比較するために、シーズン毎の順位に応じてポイントを付与し、過去3年間の合計ポイントでランキング化したのが以下です。ポイントは、各シーズンの1位に6ポイント、2位に5ポイント、3位に4ポイント……、のように、6~1ポイントを付与し、3シーズンの獲得ポイントを合計しました。併せて、ポイントでの順位が同じ場合に優劣をつけるためのサブ指標として、3シーズンの勝率平均も用いました。

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集計の結果、最も成績が良かったのはセ・リーグでは『阪神タイガース』、パ・リーグでは『福岡ソフトバンクホークス』で、ともに15ポイントを獲得しました。

 

成績が良ければ推しファン人数が多いが、セ・パで傾向に差

球団の成績は推しファン人数に影響するのでしょうか。上記で算出した順位ポイントを用いて、成績と推しファン人数の関係を球団別にみていきます。以下は、横軸に順位ポイント、縦軸に直近12カ月(2024年5月~2025年4月)の月当り平均推しファン人数をとった散布図です。

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全体の傾向として、順位ポイントが高い=成績が良い球団は推しファン人数が多くなっています。特に右上に位置する『阪神タイガース』の推しファン人数は、他球団に比べて非常に大きいことが分かります。また、オレンジの傾向線を境に、上部にセ・リーグ、下部にパ・リーグが集中しており、良い成績であっても、セ・パで推しファン人数に差があることもみえてきました。

 

推しファン人数の推移から成績との関係を読み解く

次に、過去3シーズンの推しファン人数の推移から成績との関係を深堀りしてみます。下記はセ・リーグの球団別推しファン人数推移です。

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いずれの球団もリーグ優勝、日本シリーズ優勝を機に推しファン人数が上昇していることが分かります。そのなかでも特に『阪神タイガース』は、2022年シーズンから推しファン人数を多く抱えていましたが、2023年シーズンのリーグ優勝と日本シリーズ優勝を機に大幅に推しファンを増やしたことがみてとれます。

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続いて、上記はパ・リーグの球団別の推しファン人数推移です。パ・リーグもセ・リーグ同様、リーグ優勝、日本シリーズ優勝を機に推しファン人数が上昇しています。注目は『北海道日本ハムファイターズ』の動きです。2023年4月に推しファン人数が躍進していますが、これは同球団の新しい専用球場となる「エスコンフィールド」で3月末に初の公式戦が開催されたタイミングと重なり、推しファンを押し上げた効果があったと推察されます。しかし、その後2023年は2022年から続く最下位と成績は低迷したこともあってか、2024年の開幕まで推しファン人数の減少傾向が続きました。しかし、2022年シーズンから指揮をとる新庄剛志監督体制で、2024年シーズンに初めてクライマックス・シリーズ進出を果たしたタイミングで推しファン人数を大幅に増やし、以降もその水準を維持、直近はさらに上昇しています。

 

成績の良さとファンの"熱量"の関係

成績の良さと推しファン人数の増加には関係があることが分かりました。次に成績が推しファンの"熱量"にどのような影響があるのか深堀りしていきます。下図は横軸に先述の順位ポイント、縦軸にファンの熱量の度合いを示す"信者割合"をとった散布図です。

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散布図の全体傾向をみると、成績が良いからといって信者割合が高いとは限らないことが分かりました。一方で、各球団の位置関係をみると、散布図下側にはパ・リーグの球団が、上側にはセ・リーグの球団が多く位置していることが特徴としてみてとれます。平均信者割合はパ・リーグが26.47%、セ・リーグが36.16%となり、セ・パで熱量に大きな差があることが分かりました。

熱量が低い傾向にあるパ・リーグのなかで、『千葉ロッテマリーンズ』は際立って高い信者割合を誇っています。同球団のファンは熱狂的でユニークな応援スタイルで知られており、そうした事実が信者割合の高さにも影響しているのかもしれません(※)。
参照:「文部科学省:千葉ロッテマリーンズ:熱狂的ファンがもたらす影響とファンベース拡大戦略

推しファン分析を通じて、プロ野球の球団人気=推しファン人数は、成績が良いほど増加する傾向にあることが分かりました。特に『阪神タイガース』のように好成績を収めた球団は推しファン人数が顕著に増加しています。しかし、一方で球団に対するファンの熱量=信者割合は成績には左右されないことも判明しました。つまり、たとえ成績が悪くても、応援スタイル、ファンクラブ、ファンミーティング、アパレル、グッズなど、球場内外においてファンとの関係性を深める場を設け、熱量を高めることが可能です。そして、信者割合が高いほど、ファン歴が長くなる傾向にあります。推しファン人数を増加するには成績を向上することがまずは大切ですが、長期的な視野に立ち、プロ野球全体を盛り上げていくためにも、勝敗以外の部分でのファンとの関係性を深め、推しファンの熱量を「人生の一部/信者」に引き上げていくことも重要だと考えられます。

出典:「推しエンタメブランドスコープ
毎月約3万人、全国に住む15~69歳の男女に対して、メディアを横断し「いま、推しているエンタメブランド」に関する大規模調査を実施。エンタメブランドの価値をメディア横断でとらえ、<推しファン人数><支出金額><接触日数>を集計しているほか、これらの値から総合指標<推しエンタメブランド価値(単位:GEM)>を算出しています