第1回:コロナ禍が映画業界に与えた影響
公開日: 2023/02/10
2022年12月、タイのバンコクで開催されたアジアの映画興行・配給事業者向けコンベンション「CineAsia(シネアジア)」より、ワーナー・ブラザース・ピクチャーズ・インターナショナルのカート・リーダー氏の基調講演「State of the Industry Keynote Address “Where Do We Go From Here”」の模様をレポート。コロナ禍が映画業界に与えた影響と、業界が今後発展していくために学ぶべき教訓について、過去、現在、未来の状況からリーダー氏が読み解きます。
カート・リーダー(Kurt Rieder)
ワーナー・ブラザース・ピクチャーズ・インターナショナル(Warner Bros. Pictures International):APAC地域劇場配給担当、シニア・バイス・プレジデント
特集連載第1回は、新型コロナウイルスの世界的大流行が映画業界にどのような変化を与えたのかについて、過去の事例を基に振り返りました。映画業界がコロナ禍で得たもの、そして失ったものはなんだったのでしょうか。そして大きな変革の一つであった動画配信サービスの台頭についても、映画館との対立構造を含めて紐解いていきます。
※本記事で触れられている内容は2022年12月時点の情報です
コロナ禍で映画業界が得た未来に向けた資産
新型コロナウイルスの世界的大流行など、映画業界がここ数年で直面した変化はとても大きなものでした。そこで、今日は基調講演のタイトルとしてあげたように「私たちはこれからどうするのか(Where Do We Go From Here)」について話したいと思います。未来の話をする前に、まずは過去を振り返ってみましょう。
エンタメ市場における映画の存在意義
コロナ禍を通じて、映画が私たちの世界にとってどれほどインパクトのあるものかを思いださせてくれました。トム・クルーズ、スパイダーマン、バットマン、ドクター・ストレンジ、そしてミニオンのヒットに感謝します。世界のエンタテイメント市場に映画の居場所があることを証明してくれたのではないでしょうか。
より効率的で筋肉質な経営体質
このコロナ禍で得たものの一つは、私たちは皆、大きな変革を断行したということです。映画館ビジネスにおいて、興行会社は全面的なコスト削減を余儀なくされました。これらの教訓はすべて、私たちが持ち続けなければならないものです。物事は決して元には戻りません。私たちは、常に効率的に進める方法を学ぶ必要があるのです。
小売業、特に大型ショッピングモールが苦戦していることは周知のとおりです。大手の小売業者やファストファッションの小売業者が、店舗数を減らしているのを目にしています。また、クリック&コレクト(※1)やドライブスルーに移行している業者もあります。このような事態が発生した場合、実は興行会社にとってはチャンスです。なぜなら、どのモールでも映画館が新しいアンカーテナント(施設の核となる店舗)となり、フードコート以外で唯一ショッピングモールに人々を引き付ける存在となるため、デベロッパー(貸主)との交渉の際に有利に働くのです。※1:ネット注文した商品を小売店や受取拠点の窓口、ロッカーで受け取ること
プライベート・シネマの可能性
もう一つ得たものは、プライベート・シネマというコンセプトです。多くの家族連れや友人グループが、……(以下、会員限定記事にて掲載)
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