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第3回:映画業界が学ぶべき教訓
公開日: 2023/02/24

特集:コロナ禍を体験した映画業界の過去・現在・未来 第3回

2022年12月、タイのバンコクで開催されたアジアの映画興行・配給事業者向けコンベンション「CineAsia(シネアジア)」より、ワーナー・ブラザース・ピクチャーズ・インターナショナルのカート・リーダー氏の基調講演「State of the Industry Keynote Address “Where Do We Go From Here”」の模様をレポート。コロナ禍が映画業界に与えた影響と、業界が今後発展していくために学ぶべき教訓について、過去、現在、未来の状況からリーダー氏が読み解きます。

登壇者
カート・リーダー(Kurt Rieder)
ワーナー・ブラザース・ピクチャーズ・インターナショナル(Warner Bros. Pictures International):APAC地域劇場配給担当、シニア・バイス・プレジデント

特集の第1回ではコロナ禍における映画業界の過去を、第2回では現在を紐解いてきましたが、最終回となる第3回は業界の未来に着目しました。未来の映画市場を育み活性化するために私たちがやめるべきことはなにか、そしてなにに取り組むべきなのでしょうか。業界を知り尽くしたワーナー・ブラザース・ピクチャーズ・インターナショナルのカート・リーダー氏が説きました。
※本記事で触れられている内容は2022年12月時点の情報です

《目次》
 

私たちがやめるべきこと

宣伝でのキャスティング詐欺

失礼なことを言うつもりはありません。しかし、独立系のジャンル映画で、明らかに、誰かに10分、20分だけ出演させ、宣伝やポスターではあたかもその人が主要な役割かのように見せて、世界中でその映画を売るという手法をとるセールスエージェントが多く見られます。ところが、映画館でこういった映画を見た若い人は、「ここは自分たちの場所ではない」と感じるのです。

長尺の映画が多すぎる

これも何とかしなければなりません。2時間半以上の素晴らしい映画がダメだと言っているのではありません。ジェームズ・キャメロン、スティーブン・スピルバーグ、マーティン・スコセッシは許されるべきだと思います。しかし、観客が映画を見るかどうかを決める前に、まず上映時間を確認するようになると(これは新しい傾向ですが)、私たちは監督に「あなたの作品が2時間45分だとしたら、それは一日の上映回数を減らし、人々が配信になるまで待とうと思わせる」と伝えなければいけません。

「2時間半以下」が新しい基準です。過去を振り返ると、「『レイダース/失われたアーク《聖櫃》』や『カサブランカ』は2時間未満でした。そのような状況に戻ることはないでしょうが、「2時間半以下」が新しいスタンダードであるべきなのです。

 

合法を装う海賊版の氾濫

世界各国で、4K画質で、広告付きで、美しいユーザーエクスペリエンスの海賊版アプリが存在しています。広告があり、見栄えがよく、4Kですし、盗撮されたものではないため、消費者はこれを100%合法だととらえます。私たちは、MPA(Motion Picture Association)や自身の法務チームと協力して、これらを取り締まる努力をする必要があります。

キャンセルカルチャー

私たちは皆、興行と配給の両方で、キャンセルカルチャー(※1)に悩まされています。観客がアーティストをスクリーンの外でのふざけた態度ではなく、作品に基づいて判断するように、どうにかして業界と協力する方法を見つけなければなりません。私たちは共にキャンセルカルチャーの犠牲者なのです。※1:著名人らの過去の発言や行動をSNSなどで糾弾し、その対象を社会から排除しようとする動き

 

未来に向けて取り組むべきこと

「平均的」な設備、作品では不十分

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