興行の春を伝える『映画 ドラえもん』、映画参加率も2022年初め以降最高値に
公開日: 2023/03/31
![『映画ドラえもん のび太と空の理想郷』](/uploads/column/main_image/688/doraemon.jpg)
©藤子プロ・小学館・テレビ朝日・シンエイ・ADK 2023
先週末(2023年3月24日~26日)の動員ランキングは、公開4週目の『映画ドラえもん のび太と空の理想郷(ユートピア)』が1位に返り咲いた。
『映画ドラえもん』は例年、春休みの3月に公開されてきた。最終興行収入は30億円程度から近年拡大傾向にあり、2018年、19年は50億円台に達していた。新型コロナウイルス禍で延期となり、8月公開となった20年は33.5億円、春休み公開に戻った22年も26.9億円にとどまったが、今年は40億円を超えそうなペースである。コロナ禍の終息ムードも強まり、『映画ドラえもん』の興行にも平常化が感じられる。
興行全体にも春の訪れが感じられる。市場全体はほぼコロナ前の水準となり、日本は世界的にも異例な復興を成し遂げている。週次で調査している1年に1本以上映画館で映画を見る映画参加率は先週末、22年初めに底を打って以来、最高の数字となった。
一方、鑑賞者の嗜好やメディア行動は元に戻ったのではなく、変化している。アニメ作品がファンを集めて力強くヒットする現象が顕著となった。動画配信サービスが伸びるなか、ヒット映画と動画配信される関連作品の視聴が連動するようになった。「換気が悪い」という映画館のイメージも変わり、チケットをインターネット経由で購入する割合もさらに高まった。情報入手経路としてデジタルメディアも存在感を増した。
ピンチをチャンスに、変化を好機とした取り組みが市場をけん引するのが世の常である。コロナ禍を見事乗り越えた映画興行も同様だろう。今後、顧客ニーズをくみ取り、さらなる価値実現、復興を超えた発展に期待したい。
(GEM Partners代表、梅津文)=毎月最終金曜日掲載
◆掲載元◆
毎日新聞:シネマの週末・データで読解 『危機と変化をチャンスに』(毎日新聞2023年3月31日 東京夕刊)
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