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MyAnimeList(MAL)データから見える海外アニメファンのリアル〜異世界アニメ編〜 AnimeJapan 2025セミナーレポート
公開日: 2025/04/11

世界最大規模のアニメイベント「AnimeJapan 2025」が、2025年3月22日~3月23日に東京ビッグサイトで開催されました。また、同イベント終了後の24日~25日にかけては「アニメ関連ビジネス市場の拡大と成長」を目的とした、業界関係者向けの「AnimeJapanビジネスデイ」も催され、アニメプロダクション、放送局はじめ、国内外の約60社が商談ブースを出展したほか、アニメビジネスに関連したセミナーが行われました。本記事では、「ビジネスデイ」にてMyAnimeList社 溝口敦代表取締役が登壇したセミナー、「データで解き明かす!海外アニメファンのリアル〜異世界アニメ編〜」の様子をレポートします。

※本記事で触れられている内容は2025年3月時点の情報です。

プレゼンテーター
溝口 敦
株式会社MyAnimeList:代表取締役
株式会社MyAnimeList 溝口 敦代表取締役株式会社MyAnimeList 溝口 敦代表取締役

 

《目次》

 

 

MyAnimeListではユーザー約2000万人、12億レコードデータから36万件のアニメ・マンガファンの動向をトラッキング可能

はじめに、MyAnimeList社の溝口淳代表取締役が、世界最大級のアニメ・マンガコミュニティーサービス「MyAnimeList(以降、MAL)」の概要を説明しました。同サービスでは、約36万のアニメ・マンガを、ユーザーがリストに登録し、評価することが可能で、現在約1,950万人のユーザーが登録していることを明らかにしました。また、ユーザーがリストに登録・視聴・評価した作品をトラッキングでき、12億レコードを超えるユーザーのアクティビティがデータベースに貯蓄されているとし、それらを活用してコンテンツビジネスに関わる様々な分析を行うことに注力していると述べました。利用者の属性としては、99%が海外ユーザーであり、その内米国が20%を占め、次にインド、ブラジル、インドネシアの順に多い事を説明。そして、男女比は7:3で、34歳未満が約90%と、若い世代で親しまれていると明かしました。

続いて、MALで取得可能なデータを、アニメ『葬送のフリーレン』を例として紹介。同アニメへの評価を表す「スコア」が10点満点中9.32と非常に高い評価を得ており、作品のリスト追加や、視聴登録といった何らかのアクションをしたユーザーである「メンバー」が約92万人に上ることを共有しました。そして、MALではスコアやメンバーの推移をデータで取得し、どのタイミングでユーザーのアクションがあったのかを把握できると強調しました。

そして、MALの大きな特徴として、作品が「ジャンル」と「テーマ」分類されていることを挙げました。MALでは現在、作品を「アクション」「アドベンチャー」「コメディ」「ロマンス」といった18種類のジャンルと、「音楽」「擬人化」「学園」「歴史」といった52種類のテーマで分類していることを共有。溝口氏は、「テーマやジャンルは、ユーザー同士の議論により生まれるので、増減することがあります」と補足しました。テーマのなかには「異世界」が含まれており、現在420作品が紐づけられていることを明かしました。

 

「異世界アニメ」は海外アニメファンにどう受け止められているのか

溝口氏は、「異世界アニメ」についてMALの視聴・読書データを用いて、海外ユーザーからの人気ぶりを共有しました。MALのデータによると、直近10年間、異世界アニメと分類された作品が年々増加していることが分かりました。また、MALの海外ユーザーを対象とした独自アンケート調査によると、「異世界アニメを知っている」と回答した人はおよそ90%に上り、高い認知率を誇っていることを明かしました。加えて、異世界アニメを認知したタイミングについては、5年、10年以上前から知っていると回答した人が6割を占めるものの、コロナ禍中に知ったと回答した人が18%であったと示し、コロナ禍で更なる認知を拡大したことをデータから説明しました。

そして、同アンケート結果から海外ユーザーが好きなテーマとして、アニメでは「異世界」が1位、マンガでは「サイコロジカル」に続き、2位にランクインしたことに触れました。「好きなアニメ作品ランキングTOP20」においても、2位に『葬送のフリーレン』が入ったほか、『無職転生 〜異世界行ったら本気だす〜』『Re:ゼロから始める異世界生活』がランクインしていることを共有し、海外での異世界アニメの人気ぶりを改めて共有しました。また、溝口氏は日本との比較として、GEM Partnersが行った調査(※)に基づいた、日本での「好きなアニメ作品TOP20」を紹介。海外では2位に位置していた『葬送のフリーレン』が日本では11位に、『無職転生 〜異世界行ったら本気だす〜』が日本ではランキング圏外になる代わりに、『転生したらスライムだった件』がランクインしていることから、日本と海外では好きな異世界アニメで乖離があると明らかにしました。
※出典:「推しエンタメブランドスコープ

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溝口氏は、現在GEM Partnersと共同で開発中のダッシュボードサービスについても紹介。同ダッシュボードでは、「異世界アニメ」に限らず、作品をリストに登録したメンバー数やスコアの高さがより具体的に可視化されており、作品ごとにメンバーの「性別」「年代」「国」別の内訳を、グラフで確認できるようになると説明しました。

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そのほか、「視聴予定(“Plan to Watch”)」「視聴中(“Watching”)」「視聴完了(“Completed”)」「離脱(“Dropped”)」といったアニメ視聴登録状況と、その推移を可視化することができると示し、「MALというコアなコミュニティーで、マーケティング活動がどのように作用したのか把握できます」と特徴を述べました。

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次に、人気異世界アニメを、「メンバー数」と「スコア」で分布させた図を提示し、横軸に『メンバー数』、縦軸に『スコア』、バブルサイズに『お気に入り登録数(“favorite”) を設定していることを説明しました。「バブルが大きく、右上にある作品ほど、こよなく愛している人が多い傾向ということが視覚的に分かるデータを提供しています。左上にある作品は、今後メンバー数が増えていくと、次は右側にいくことが期待できますし、左下にある作品もスコア7点以上かつメンバーも100万程度いますので、ここから大きく動く可能性があります」とグラフから異世界アニメ作品の立ち位置を読み解きました。

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溝口氏は、MAL独自のアンケート調査から、異世界アニメの人気は今後も増していくと予想。アンケートによると、「今後、異世界を見続けたい/読み続けたいと思いますか?」という質問に対して、半数以上が「はい」と回答したと共有しました。また、今後の異世界コンテンツに対して期待することも調査しており、「よくある異世界設定からの脱却」が挙げられていることを明かしました。現実でも巻き起こる社会問題や心理描写を含んだ「現実的な社会要素」や「政治・経済・軍事要素」を求める声が多くあったと述べました。

 

これから来るアニメを原作マンガ・ラノベのデータから予測する

セミナーの終盤では、今後アニメ化が確定している原作マンガ・ラノベの、スコアとメンバー数を発表。『この素晴らしい世界に祝福を!3 ―BONUS STAGE―』をはじめ、スコアが高く、メンバー数が多い原作は、アニメでもメンバーが多く登録されていることを明らかにし、原作とアニメのデータの関係を確認できると語りました。

また、MALの強みは、マンガの連載開始直後からデータを追うことができることとし、単行本がまだ発売されていない時点から、早期に追うことができると強調しました。そして、「各出版社で海外と日本で同時にマンガを発売するパターンが増えているなかで、早期から世界のファンに問いかける仕組みとして活用し、世界中で可能性のある作品の発見と支援に繋げていきたいです」と今後のデータの活用への希望を語り締めくくりました。