映画の色彩が人間の脳や感情にどんな影響を与えるか【SXSW2016レポート】
公開日: 2016/03/30
Author:星野 有香
ー Sunday, March 13 12:30PM - 1:30PM : "1 + 2 = Blue: The Science of Color in Film" URL Bevil Conway (C/O The Mill Group) / Mikey Rossiter (The Mill) / Rama Allen (The Mill) |
映画やインタラクティブ、
映画監督、神経科学者、カラリスト(色彩設計監督)
実際の映画の製作では、
色彩について5つの質問
映像・広告のクリエィティブ・ディレクターであるAllen氏が、色彩についての5つの大きな質問を投げかけた。
1. カラーとは何か?
2. 人間の脳はどのように色を認知するのか?
3. 色は人間の感情にどのような影響を与えるのか?
4. 映画の製作において色彩表現をどう使うのか
5. あなたの脳は色をどう知覚するのか?
脳はどう色彩をとらえるのか?色彩は感情にどう影響するのか?
視覚でとらえられた情報が、脳に伝わり色として認識される。実際には同じ色のはずなのに、周りの色彩やフィルターの影響でどうみても違う色に見えるSXSWのロゴ、キューブブロックや、(ソーシャルメディア上で話題になった)女性のドレスの例が紹介された。同じ一枚のドレスの写真が人によって、白×ゴールド、水色×ブラウン、青×黒と人によって見え方が違うことをセッション会場の参加者に挙手させて証明した。
ビルの廊下で立ち止まり携帯電話に応えている女性のワンシーン。色彩のフィルターを変えるだけで、何かよくない知らせが届いた緊迫した瞬間に見えたり、ノスタルジックなアート映画のおだやかな日常のように見える例が紹介された。
”Color is Not Physics” 色は物理的に”ある”のではなく、光や周囲の色、 さらには文化社会的なイメージとともにバイアスがかけられ脳に認 知される
色は固有の色として物理的に”ある”のではなく、
映画監督たちは、色の力をどう使ったのか?
白黒で撮影されたフィルムに、1年かけて着色を加えたジョージ・
- デヴィッド・リンチ監督 悪夢とエロスを想起させる<赤>
- クエンティン・タランティーノ監督 歴史上の名作の色づかいを再現
- ニコラス・ウィンディング・レフン監督 各作品でテーマカラー設定。自身は色盲だそう。
- ウォシャウスキー姉妹監督 『マトリックス』は緑がキーカラーの珍しい作品
- スタンリー・キューブリック監督 危険、血、死。アテンション、恐怖を増幅させる<赤>
- ウェス・アンダーソン監督 赤、イエロー、ロマンティックで親密的でキュートな色
SキューブリックとWアンダーソンの”赤”はどうして違う感情を想起させるのか?
同じ赤でもキューブリックの赤は恐怖を感じさせ、アンダーソンの赤は温かくロマンチックな気持ちにさせるのは何故か?映画のシーンは色を含む単体のビジュアルイメージとして認知されるのではなく、コンテクスト、物語の全体の流れの中で理解されるからだ。観客はキューブリックの映画、シャイニンングは何か恐ろしいことが起きる映画だとわかった上でシーンを観る、エレベーターホールに突如流れ込む大量の血の赤は、アンダーソンの使う赤とは全く違う恐怖の増幅させる装置の役割を担うのだ。
人によって違う色? 映画製作における監督と色彩設計監督のコミュニケーションの重要性
朝はどんな色だろう?ハワイ出身のAllen氏と、ロンドン出身の色彩設計監督のMikey氏ではその感覚はまったく違う。ロンドンの曇り空とハワイの爽やかな朝はまったくの別物だ。だからこそ映画製作において、監督の意図するストーリーテリングを映像イメージに落とし込むためには、監督と色彩設計監督との映像言語とイメージの綿密な刷り合わせが重要になる。
色彩はストーリーテリングにおける感情やドラマを増幅させる武器
映画はもちろん映像表現や広告キャンペーンのコミュニケーション手法において、色彩の持つ役割の重要性について改めて気づかされる素晴らしいセッションだった。まさにIT、映画、音楽という3つのジャンルを融合したコンファレンスであるSXSWだから出会える貴重なプレゼンテーションに感心した。
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