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第1回:ハリウッドメジャースタジオのオーディエンスデータ活用の今
公開日: 2023/08/24

特集:デジタルメディア時代のマーケティング最前線 第1回
Entertainment Marketing Leaders Roundtable

米ハリウッドで4月に開催された「Variety Entertainment Marketing Summit」にて、パネルディスカッション「Truly Knowing Your Audience in Multiplatform Marketing」を実施。ユニバーサル、ワーナー、ディズニーといった大手スタジオで映画・テレビ作品の広告販売とオーディエンスデータの分析を担うリーダーと、広告出稿側でもあるシティ・ナショナル銀行およびサムスン・アドの担当者が登壇しました。

パネルではまず、動画配信やSNS、TV放送など、プラットフォームを横断して戦略的に広告を打つことが一般化しているものの、獲得した視聴率や回数、インプレッションといったオーディエンスデータを統合して計測・分析できていない状況を共有。本特集では上記を踏まえ、より正確で透明性のあるオーディエンスデータの測定方法について議論しあった模様をレポートします。

※本記事で触れられている内容は2023年4月時点の情報です

モデレーター
トッド・スパングラー(Todd Spangler)
バラエティ(Variety):デジタル・エディター

パネリスト
ブライアン・ムー(Bryan Mu)
ユニバーサルスタジオ・グループ(Universal Studio Group):リサーチ&インサイツ部門シニア・バイス・プレジデント

アンドレア・ザパタ(Andrea Zapata)
ワーナーブラザース・ディスカバリー(Warner Bros. Discovery):広告販売リサーチ・測定・インサイツ部門エグゼクティブ・バイス・プレジデント

ダナ・マックグロウ(Dana McGraw)
ディズニー・アドバタイジング(Disney Advertising):視聴者モデリング&データ・サイエンス部門シニア・バイス・プレジデント

リンダ・ダンコンブ(Linda Duncombe)
シティ・ナショナル銀行(City National Bank):チーフ・マーケティング・プロダクツ&デジタル・オフィサー兼エグゼクティブ・バイス・プレジデント

オーブリアナ・アルヴァレズ・ロペス(Aubriana Alvarez Lopez)
サムスン・アド(Samsung Ads):データ向けプロダクト・マーケティング部門ディレクター

より正確で透明性のあるオーディエンスデータの測定・分析方法について、米スタジオのデータ分析担当者と、広告出稿側でもあるシティ・ナショナル銀行とサムスン・アドの担当者が議論を交わしたパネルディスカッション。第1回は、各担当者の自己紹介とオーディエンスデータへの取り組みから始まり、膨大なデータから重要なメッセージを見極める方法について議論が交わされました。

《目次》

 

 

オーディエンスデータを測定・分析し、最大限の価値を引き出す

Truly Knowing Your Audience in Multiplatform Marketing

左からモデレーターのスパングラー氏、ユニバーサルのムー氏、ワーナーのザパタ氏、サムスン・アドのロペス氏、ディズニーのマックグロウ氏、シティ・ナショナル銀行のダンコンブ氏

はじめに、各パネリストが自己紹介とともに、自社で行っているオーディエンスの測定・分析手法について簡潔に説明しました。

ユニバーサルスタジオ・グループでリサーチ&インサイツチームを率いるブライアン・ムー氏は、同社が現在、世界26のプラットフォームで114本ものシリーズとプロダクションを進行中であるとしたうえで、「世界中におけるコンテンツ・パフォーマンスの可視化は、スタジオ運営をサポートする私たちの日々の仕事の基礎となるものです」と語りました。

ワーナーブラザース・ディスカバリーで広告販売などのマネタイズに特化したチームを率いるアンドレア・ザパタ氏は、「私の役割は、オーディエンスのストーリーを投資家や広告主に確実に伝え、KPI(Key Performance Indicator/主要業績評価指数)を達成するために有効な投資方法についてコンサルティングをすることです。特に、オーディエンスのエンゲージ状況を示すインプレッション数などから、最大限の価値を引き出せるようにしたいと考えています」と話しました。

ディズニー・アドバタイジングで、Disney+、Hulu、ESPN+を含むディズニー傘下の全ブランドにおけるデータ・サイエンティスト、アナリスト、アドバンスド・アナリティクス・プロフェッショナル、リサーチチームを統括するダナ・マックグロウ氏は、「広告主のパフォーマンスとインサイツ、ターゲティングに向けたオーディエンスのセグメント別データモデリング、そしてそれらの測定を可能にする責任を負っています」と自己紹介。

サムスン・アドで、オーディエンスの測定・分析の導入と商品化におけるデータ戦略を統括するオーブリアナ・アルヴァレズ・ロペス氏は、自身の役割について、「広告主やブランド、パートナーを、適切なタイミングで適切な消費者・視聴者につなげること、その動向を測定できるようにすること、そして望ましい結果を導き出すためにインサイトをフィードバックし、時間をかけて改善すること」だと説明しました。

シティ・ナショナル銀行で、マーケティング、スポンサーシップ、慈善活動、データ測定業務を行うリンダ・ダンコンブ氏は、「当社はいろいろな事業で知られていますが、エンタテイメント業界の存在は大きく、非常に重要視しています。業界で働く方々だけでなく、私のようにエンタテイメントが大好きで、いつも作品について話しているような個人ユーザーも含めてです」と同パネルに参加した意義を説明。自身の役割について、「クライアント主導のもと、コンテンツやマーケティング、メディアにおける仕掛けまで、すべての動きや結果を分析すること」だと話しました。

 

データ活用において重要なのはクライアントの立場から考え始めること

自己紹介がひと通り終わったところで、モデレーターである米バラエティ誌のトッド・スパングラー氏がパネリストたちに、「人々がより多くのコンテンツを複数プラットフォームで視聴するようになっています。そういった状況下で視聴率や回数、インプレッション数は依然として統合されずにバラバラのままなのでしょうか。分析に支障は生じますか?」と問いかけました。

シティ・ナショナル銀行のダンコンブ氏は、「データ量の多さと内容に圧倒されることもある」と認めたうえで、……(以下、会員限定記事にて掲載)

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