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「アニメはすでにグローバルカルチャーシーンの最前線にある」今後の展望と期待の劇場公開作品:Crunchyroll特別プレゼンテーション(後編)~特集:CinemaCon2024
公開日: 2024/04/25

特集:CinemaCon2024 第3回

米ラスベガスでアメリカを中心に世界中の映画興行・配給関係者が集まるコンベンション「CinemaCon2024」が開催され、その一環で「“THE STATE OF THE INDUSTRY” AND A SPECIAL PRESENTATION FROM CRUNCHYROLL」が実施されました。本記事ではCrunchyroll(クランチロール)のプレゼンテーション内容、アニメの現状と展望、そして北米での劇場公開映画ラインナップ発表をレポートします。
前編はこちら「アニメの存在感をグローバル映画市場において再発見する:Crunchyroll特別プレゼンテーション(前編)
※本記事で触れられている内容は2024年4月時点の情報です

《目次》
 

すでにアメリカ文化シーンにおいてもメインストリームとなっているアニメ

プレゼンテーションで登壇したのは、Crunchyrollのグローバルコマース担当シニアヴァイスプレジデントのミッチェル・バーガー氏(Mitchel Berger:SVP, Global Commerce, Crunchyroll)。同氏はアニメとアニメファンの説明に加え、映画興行会社にとっての価値を超えて、アニメがポップカルチャーシーンにおいてメインストリームとなっていると論じました。

Crunchyrollのグローバルコマース担当シニアヴァイスプレジデントのミッチェル・バーガー氏
Photo by Jerod Harris/Getty Images for CinemaCon 2024
 

続けて、アニメファンに向けたニッチな媒体だけでなく、フォーブス、ワシントン・ポスト、ヴァニティ・フェアなどの一般読者向けのメディアや経済誌でもアニメが論じられているのみならず、商業的な成功に加えて、賞レースや批評家からも評価を受けていると指摘。例えば、これまでのゴールデングローブ賞、ベルリン国際映画祭、アヌシー国際アニメーション映画祭での評価に加えて、本年のアカデミー賞で長編アニメーション賞を受賞した『君たちはどう生きるか』が世界各国でたくさんの人を動員したことに触れ、会場から拍手が沸き起こりました。そして、Crunchyrollが同作をオーストラリアとニュージーランドで配給したことを明かしました。ここでバーガー氏は日本に関連して、『ゴジラ‐1.0』がアカデミー賞で視覚効果賞を受賞した快挙に対し、東宝に祝辞を贈りました。また、批評家の評価についても取り上げ、評価のまとめサイト「ロッテン・トマト」において、『すずめの戸締まり』や『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』が96%や98%フレッシュの高得点を獲得している点などを紹介しました。

さらには、チャニング・テイタム、アリアナ・グランデ、キアヌ・リーブス、マイケル・B・ジョーダン、ポン・ジュノ監督らがレッドカーペットやインタビューにおいて、アニメのファンであることや、アニメから自分のアイデンティティや価値観、そしてクリエイティブ判断について大きな影響を受けていると公言している画像や映像を披露しました。また、クリエイター以外でも、スーパーボウル・チャンピオンのジュジュ・スミス・シュスター、ニューオーリンズ・ペリカンズのザイオン・ウィリアムソン、ドジャースの大谷翔平、全米オープン優勝者のココ・ガウフ、金メダリストのノア・ライルズらの一例を挙げつつ、NFL、NBA、MLB、プロテニス、オリンピックのスポーツの大舞台で世界中のアスリートがアニメを通じて自己表現を行っている例を紹介。そして。「アニメの影響が映画、テレビ、芸術、音楽、ゲーム、スポーツ、政治にまで及んでいることが分かるだろう。アニメを心から愛する有名人やその子どもたちのリストは、指数関数的に増えている。かつてアニメファンはアンダーグラウンドなムーブメントの一部だったが、アニメが世界的な盛り上がりを見せている今、人々は日常的なファンから注目すべきスーパーファンまで、自分がアニメファンであることを誇らしげに表現している」と締めくくりました。

 

そして改めてアニメファンの声とその姿

バーガー氏は、改めて、公開規模の大小にかかわらず、ファンにとって地元の映画館で一緒に集まってアニメを観る行為は家ではできない非常に大事なコミュニティ体験であり、彼らはIMAXなどのプレミアム・ラージ・フォーマットを好むことを強調。最後にファンにとってアニメは何なのかについて、世界各国のアニメファンから各国の言語で話されたコメント動画を共有しました。動画では、「行き場がないと感じていた多くの人々にとって、自分らしくいられる場所を与えてくれた」「アニメは私に自信を与えてくれて、私の人生を変えました。小さい頃、とても厳しい家庭で育ったので、自分らしくいられないような気がしていました。コンベンションに行けるようになってからは、自分を偽る必要はないと気づいた。大会では自分らしくいられるのです」「アニメはこれからも続いていくし、私が90歳になっても気にしない。私は90歳になってもアニメを見続けるし、孫も見るだろう」「子どもたちは成長して幸せになれる。私たちが大好きなものを子どもたちも大好きになる。これ以上のものはないでしょう」「アニメは常に進化している。これからも良くなっていくと思う」「私は生涯アニメファンです」などのコメントがあり、締めくくりには多くの人が「ありがとう、アニメ」と口にしました。

プレゼンテーションではこのようにアニメファンの熱い思いや、その多様性に触れる機会が用意されました。例えば、バーガー氏から、米国においてアニメファンは、ヒスパニック、アフリカ系アメリカ人、アジア系アメリカ人、LGBTQ+などの割合が高めであることが明かされました。また、その特徴として、アニメファンは年を取らず、大人になっても卒業することなく、次の世代とファンダムを共有することが挙げられました。理由として、「アニメが歓迎され、ファンに帰属意識を与えるからこそ、このようなコミュニティ意識が生まれる」と解説。そして、「アニメファンはあなたの身の回りのいたるところにいる。アニメファンはすでにあなたの生活やビジネスの一部であり、その影響力は大きくなる一方だ。アニメはやってこない。アニメはすでにここにある」と締めくくりました。

 

劇場公開ラインナップとして、『ブルーロック』『SPY×FAMILY』を含めた4作品を紹介

プレゼンテーションの最後にバーガー氏は劇場公開を控えている4作品を紹介しました。トップバッターは、日本でも興行収入100億円が目前に迫る“Haikyu!!: The Dumpster Battle(全米公開5月31日/邦題『劇場版ハイキュー!! ゴミ捨て場の決戦』)”です。「先週10周年を迎えたこのアニメシリーズは、2020年以来オリジナルエピソードがなく、ファンはスクリーンでの復活を心待ちにしています。この度、『ハイキュー!!』の英語字幕版予告編を公開し、5月31日に字幕版と吹替版の両方で全国公開されることを正式に発表できることを嬉しく思います」と説明し、予告編を上映しました。

続いて紹介されたのは、“BLUE LOCK THE MOVIE -EPISODE NAGI-(全米公開6月28日/邦題『劇場版ブルーロック -EPISODE 凪-』、予告編)”。バーガー氏は本作について、「このアニメシリーズは前回のワールドカップのころに始まり、その直後のスペイン戦で日本チームがありえない勝利を収めました。このアニメのおかげで日本が勝ったとは言いませんが、そうでないとも言えません」と紹介し、この日のために仮の字幕が入った特別映像が日本国外では初上映され、あらすじとともに紹介されました。

2つ続いたスポーツジャンルから雰囲気を変えて、“OVERLORD: The Sacred Kingdom(全米公開今秋/邦題『劇場版「オーバーロード」聖王国編』日本公開今秋、予告編)”が紹介されました。「この映画は、かつて繁栄していた王国とその勇敢な聖騎士たちが、悪魔の皇帝の攻撃によって崩壊の危機に直面する姿を描いています。王国は対抗しうる力を求め、アンデッドの軍勢と邪悪な同盟を結ばなければならないが、その代償は? この冒険は、主人公がお気に入りのオンラインRPGの中に入り込んでしまったことから始まっています」と紹介され、予告編が上映されました。

最後は、CinemaConの約2週間後となる4月19日に全米公開予定の“Spy × Family Code: White(邦題『劇場版 SPY×FAMILY CODE: White』)”。本作についてはIMAXや他のプレミアム・ラージ・フォーマットでの上映を予定しており、「アニメに親しみのある観客や、アニメの世界に足を踏み入れたいと思っている人々にとって、とても親しみやすく、家族向けの作品」と紹介され、吹き替え版での本編冒頭10分が上映されました。

上映前に、バーガー氏から聴衆に向けて、「アニメがいかに特別なものであるか、ファンがいかに素晴らしいか、そして未来がいかに明るいかを少しでも知っていただけたなら幸いです。Crunchyrollのアニメのパワーと、これからの数カ月、数年の映画館での展開にご期待ください。Crunchyrollとソニーは、これからも皆様とのコラボレーションを楽しみにしています。映画館でお会いしましょう」と締めくくりました。

Crunchyrollのグローバルコマース担当シニアヴァイスプレジデントのミッチェル・バーガー氏
Photo by Jerod Harris/Getty Images for CinemaCon 2024
 

全米、各国の劇場運営者に向けたプレゼンテーションの意義

スタジオラインナッププレゼンテーションが行われるメイン会場のザ・コロシアム(ホテル「シーザーズ・パレス」内)は、4,000人以上を収容できるとされています。動画配信サービスとして知られるCrunchyrollのラインナップ発表は、ほかのハリウッドメジャースタジオのプレゼンテーションほど人が集まっていたかといえば必ずしもそうではなく、会場の反応もすごく盛り上がっていたともいえませんでした。一部の人は反応しつつ、ほとんどの人が初めて知る、という様子でした。しかしながら、その場に集まった全米、世界各国の劇場運営者に向けて、アニメの定義や映画鑑賞者としてのアニメファンの位置づけ、そして人気アニメの映像を伝えたことの意義は大きいです。一つひとつの作品の編成、一つひとつのイベント開催時に、現場のスタッフやファンからの要望に際して、「知っているもの」「可能性のあるもの」として対応していく可能性が広がったからです。今後の強いコンテンツの登場とともに、そうした一つひとつの現場での判断が、月日を重ねておきなうねりになっていくのではないでしょうか。

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