記事

広告主としてのNetflixが求めていること- アドテック東京2015より
公開日: 2015/12/22

2015/12/1~12/2、東京で開催された「アドテック東京2015」のカンファレンスをレポートします。


2015年12月1日~2日、デジタルマーケティングの最先端企業が集うアドテック東京2015が東京国際フォーラムで開催された
メディア、アドテクノロジー、データ、コンテンツなど、デジタルにおける様々なテーマのパネルディスカッションが行われたが、その中で、「激変するメディア環境の中で、広告主が求めるもの」というセッションにNetflixのデジタルマーケティングマネージャー鴨下豊氏が登壇した。本セッションのモデレーターとして、学校法人グロービス経営大学院 准教授川上 慎市郎氏、他に資生堂ジャパン株式会社 マーケティング本部長音部 大輔氏が登壇。

ここでは、本セッションの中から、鴨下氏のプレゼン内容を中心にレポートする。

 

何が激変しているのか?

本セッションのテーマは、「激変するメディア環境の中で、広告主が求めるもの」というテーマであったが、まずモデレーターから、「何が激変しているのか」という点に関して、以下のとおり言及があった。

インターネットは狭い人々を相手にしていたところから、まず、拡散が起こった(Penetration)。「みんなが見ている広告」にどのようにして近づけるか。その後インターネットが普及し、重要度が増したのがEngagement。いかにして印象付けられるか。また、Page view (枠売り)からUnique audience (「人」売り)へのシフトが起こっている。

こうした点を踏まえて、広告主としてのNetflixが何を求めているのか、Netflixのデジタルマーケティング戦略のフォーカスにつき、鴨下氏が以下のとおり話をした。


Netflixのデジタルマーケティングの柱:機能よりもオリジナルコンテンツを訴求し、新規会員獲得にフォーカス

Netflixは、アメリカ本社にIn houseでプログラマティック広告のバイイングチームが存在しており、日本での立ち上げにおいても、すぐにデジタルマーケティングの成果を出せた。

現状のマーケティングゴールは新規会員獲得。サービスの機能(function)より、オリジナルコンテンツを訴求していく。「NetflixにしかないコンテンツがあるからNetflixに入ろう」と思ってもらうことがゴール。


効果測定は「Post View」を重視

Post Click よりも Post View のコンバージョンをメインの指標としてみている。

ある人が会員になったとしたら、その人の過去一週間のインプレッションをさかのぼって計測、広告を見てから7日のうちに加入したかどうか。たとえば、ある広告を見て、その三日後に検索を経由して加入に至っても、当初に見た広告の効果として計測する。
(つまり、「新規加入」をコンバージョンとした広告において、その場で広告をクリックして会員にならなかったとしても、広告を見た人が1週間以内に会員になった場合、コンバージョンにつながったインプレッションであるとして評価している)


求めているものは「Quality inventories」

「視認性の高い(ビューアビリティの高い」広告を求めている。ポテンシャルの高いオーディエンスに、良いクリエイティブを、よい枠に出していきたい。

広告枠のクオリティの基準は「ビューアビリティ」。USのインハウスで運用を行っているので、アメリカでの厳しい基準が課せられている。日本の広告のビューアビリティは、アメリカに対して非常に低い。媒体社にはここを高めてほしい。いかにコンバージョンからさかのぼって、いかに質の高いインプレッションを提供できるかに全力を傾けている。

(広告「掲載」ではなく、ユーザーが実際にその広告を目にする「閲覧可能状態」が実現されていたという、ビューアブルインプレッションを注視している)

 

プログラマティック「でも」

プログラマティック広告(※1)はクオリティの低い広告が多いが、今後媒体社、広告代理店と組んで、質を高めて新規獲得をしていきたい。非会員に向けてNetflixのコンテンツの素晴らしさを伝えて、その結果、会員になっていただくために。

インストリームの動画枠が少ないという日本固有の問題もあるが、定額制のコンテンツプラットフォームがたくさんあるなかで、最大の差別化であるNetflixの「オリジナルコンテンツ」を訴求点として生かし、主にはプログラマティックで広告出稿をする。


ポストインプレッションの計測結果は、パブリッシャーごとに数字が大きく変わっている。
PMP(PrivateMarketPlace)の取り組みをドライブしようと考えている。PMP系列で買付したら、既存会員を排除して配信することなどができる。こういったことができるサイトのほうが結果的にパフォーマンスは高くなる。

 

(※1)プログラマティック広告:プログラムでリアルタイムにWebの広告を自動的に取引すること
 

コンテンツのクリエイティビティに関して

テレビ放映された「世にも奇妙な物語」のYahoo!でのプロモーション(※2)は、ビューアビリティなどの点では興味深い。来年にかけてよりインタラクティブな取り組みは増やしていこうと考えている。

 

(※2)”ヤフーで「ががばば」検索すると恐ろしいことが起こる“というプロモーション企画で注目を集めた。検索すると、検索窓に「たすけて……」とメッセージが勝手に打ちこまれたり、画面の向こうに女性が出現したりといった不気味な演出で検索結果を表示し、「世にも奇妙な物語」のサイトへリダイレクトされるといったもの。


(Netflixオリジナル映画 『Beasts Of No Nation』のデジタル広告は繰り返し同じものが流れているという指摘に対して)より様々なパターンでの広告クリエイティブを出していくことは課題。

とにかく大事なキーワードはビューアビリティ。Netflix USにはチャネルデベロップメントチームがいる。パートナーと目標を共有し、新しいメニューを作れるメディアを探すことや、新しいメディアメニューをパートナーと一緒に作ったりしている。日本のメディアとのやりとりも、一方通行ではなく、提案などを受けたいと思う。