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観客動員数と興収のズレ
公開日: 2016/06/24

2016年6月24日付毎日新聞夕刊映画欄において掲載された記事の転載です。
©2016「貞子vs伽椰子」製作委員会

(C)2016「貞子vs伽椰子」製作委員会/『貞子vs伽椰子』 2016年6月18日公開

 

<シネマの週末・データで読解:週末興行成績(18、19日)>

1. (3)

植物図鑑 運命の恋、ひろいました

(3週目)

2. (1)

64―ロクヨン―後編

(2週目)

3. (2)

ズートピア

(9週目)

4. (ー)

貞子vs伽椰子

(1週目)

5. (4)

デッドプール

(3週目)

6. (ー)

クリーピー 偽りの隣人

(1週目)

7. (5)

オオカミ少女と黒王子

(4週目)

8. (ー)

MARS―ただ、君を愛してる

(1週目)

9. (6)

64―ロクヨン―前編

(7週目)

10.(7)

高台家の人々

(3週目)

※()の数字は前週順位。興行通信社調べ

 

観客動員数と興収のズレ

先週末のランキングは、有川浩の恋愛小説を映画化した「植物図鑑」が公開3週目で1位に返り咲いた。続くのは、後編が公開された「64」、累計興行収入70億円超えが見えた「ズートピア」、日本のホラー2大キャラクターの対決を描いた「貞子vs伽椰子」。

 

このランキングは週末2日間の動員数ベースだが、興収ベースでは、動員3位の「ズートピア」が1位、同4位の「貞子vs伽椰子」が2位となり、3位は動員数で1位の「植物図鑑」、これに同2位の「64」が続く。動員数と興収でランキングの並びが違うのは顧客単価の違いによる。顧客単価は、作品の上映方式や客層の違いで変わる。

 

(c)2016「植物図鑑」製作委員会/『植物図鑑 運命の恋、ひろいました』 2016年6月4日公開

 

たとえば順位が逆転している「植物図鑑」と「ズートピアでは、若い年齢層の動員比率が高かったとみられる「植物図鑑」の単価が200円近く安かった。動員2位の「64」も単価が低く、これは50代以上の鑑賞意欲が高く、「夫婦50割引き」「シニア割引」を利用した人が多かったためとみられる。一方「貞子vs伽椰子」は座席が揺れるなどの「アトラクション型」であるMX4Dや4DX方式で上映されたが、これらは追加料金が必要で、結果的に単価を高めたと考えられる。

 

ここまで動員数と興収で順位が異なることは多くないが、今回は上位作品の興収が僅差だったなか、顧客単価の違いで動員数ランキングが変動した。多様化する興行様式と観客のニーズを反映した興味深い現象とも言えそうだ。

 

(GEM Partners代表、梅津文)=毎月最終金曜日掲載

 

◆掲載元◆
毎日新聞: シネマの週末・データで読解 「観客動員数と興収のズレ」 (毎日新聞2016年6月24日 東京夕刊)

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