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モバイル時代にヤフーが唱える「コミュニテインメント」
公開日: 2017/09/08

【連載】狙い通り!モバイル時代のターゲットプロモーション(1)

この連載は、2017年春に、ロサンゼルスで開催された米バラエティ誌主催の映像業界関係者向けのカンファレンス”MASSIVE The Entertainment Marketing Summit”において、デジタルマーケティングのトップやプラットフォームパートナーたちが、モバイルメディアでのマーケティングコミュニケーションの事例を語ったセッションレポートです。

 


マーケターは、常にモバイルメディアに注目してきました。最近の調査で、アメリカ人は1日あたり延べ800万回モバイル機器をチェックすることがわかっています。しかし、現在のモバイル広告においてはユーザーのプライバシー問題やローディングに要する時間、そしてバナーやスポンサード投稿からメールマガジンなど無数の出稿形態からどう選択するかなど課題が山積で、TVと比べて未開拓の要素を残していると言えます。

しかしながら、個別のユーザーごとに正確でパーソナライズしたマーケティングが可能であることは大きな魅力であり、モバイルはますます活用されていくと考えられています。ここでは、デジタルマーケティングのトップやプラットフォームパートナーを迎えて、モバイルメディアでのマーケティングコミュニケーション成功の要件を掘り下げていきます。

 

モデレーター:
ゲイル・フギット(Gayle Fuguitt)
フォースクエア(Foursquare) 顧客インサイト/イノベーショーン部門

スピーカー:
ラグ・コディゲ(Raghu Kodige)
アルフォンソ(Alphonso Inc) 最高製品責任者兼共同創業者

ショーン・ギャリガン(Sean Galligan)
ヤフー(Yahoo) テクノロジー、メディア&テレコム担当副社長兼イン・ダストリー

デビッド・グロスマン(David Grossman)
ツイッター(Twitter) TV&エンターテイメント/コンテンツ・パートナーシップ部門長

アリシア・ジョーンズ(Alicia Jones)
アメリカン・ホンダ・モーター(American Honda Motor Co., Inc.) ホンダ/アキュラ・ソーシャル・メディア・マーケティング部門長

エリアス・プリッシュナー(Elias Plishner)
ソニー・ピクチャーズ(Sony Pictures) ワールドワイド・デジタル・マーケティング担当取締役副社長

マーク・ヤング(Mark Young)
ファンダンゴ(Fandango) 戦略/事業開発部門上級副社長

ターゲティングが可能なモバイル時代はすでに始まっている

ゲイル・フギット(モデレーター)

私は Foursquare (フォースクエア)で顧客インサイト/イノベーション部門長をしています。フォースクエアにおける理解では、消費者をターゲット可能なオーディエンス集団として認識できる時代が到来しています。スマホや携帯電話が消費者の生活への入口となってきています。「モバイル時代の到来」ではなく、既に時代は始まっていて、消費者は既にオプトイン(*1) しています。しかも、特にファーストパーティ(*2) の場所でそれは顕著であり、基本的には消費者はこう告げています。「私の都合に合わせてつながりたい。好みを教えるから、そちらの方から出向いて私を見つけてソリューションを提供して」。

*注1:ここではユーザーが広告・宣伝を受け取ることを許可している状態を指す/*注2:ここでは自社のサイトから得た自社のユーザーデータを指す

 

様々な事例を通して、この現状をご紹介しましょう。

ヤフー傘下のFlurryのデータからわかること

ゲイル・フギット(モデレーター)

消費者がモバイルに対して飽くなき関心を抱いていることはよくご存知であると思います。ヤフーがその状況をどう見ているか、また、モバイルの展望に非常に期待している理由をお話しいただけますか?そして、Flurry(*3) のバックグラウンドについてもお願いします。かなり長期にわたって関わっていらっしゃるのですよね?

*注3:Flurry: US ヤフー傘下のモバイルアプリ開発・提供者向けの分析ツール
 


ショーン・ギャリガン(ヤフー)

私はFlurryという会社が買収された際にヤフーに入社しました。ご存知ない方のために申し上げると、FlurryはiOSおよびアンドロイド用モバイルアプリの分析ツールを初めて開発した会社です。そして、ずっと市場リーダーであり続けています。

我々は、消費者がモバイルで何をするかに関して広範囲かつ独自の見解を持っています。我々のソフトは100万もの外部アプリに組み込まれています。それにより、20億以上のデバイス上で消費者の行動をトラッキングできます。その量は、おおまかに言って、今日、世界中で行われているアプリのセッションの1/3にあたります。

そのため、我々には消費者の行動や使用・利用する物、その方法に関するインサイトを構築してきました。特に注目しているのは、当然ながらこのプラットフォームの成長性、モバイルアプリの成長性です。我々はこのサービスを始めて10年になり、史上最高の成長を誇る家電製品を有していながら、いまだ急成長を続けています。

 

モバイルの驚くべき成長の背景「コミュニテインメント」

ショーン・ギャリガン(ヤフー)

昨年、モバイルアプリの使用時間は70%増加しました。平均的な消費者は毎日5時間をアプリに費やしています。エクリプス・テレビジョンが2014年後半に視聴時間3時間で注目を浴びていたのに対して、アプリは短期間で5時間に到達したのですから、これは驚くべきことです。アプリに費やした時間はそうですが、メディアの接触時間を見てみると約2時間にとどまっています。

ただ、過去2年間の成長率を見ると、その2時間の中でもTVの接触時間が減少しており、この傾向は次の2年間においても続くでしょう。モバイルは驚くべき成長を遂げていますが、興味深いのはむしろそれがどこから来ているかです。コンテンツ利用やメール、SNSアプリの使用は前年対比で約400%に達しています。

そこで、我々はこの状態を表現する“コミュニテインメント”という造語を生みだしました。基本的には消費者がコンテンツ利用のみを目的としてコミュニケーションアプリを使用することを指します。我々ではこれをビッグトレンドと見ており、成長が見込まれるエリアだと考えます。

我々のデータや調査から、「TV」ではなく、特定セグメントの「TVストリーミング」の受容性が非常に高いことがわかっています。事実、若い世代はスマホ・携帯電話において、映画やTV番組の視聴に長時間を費やしている、またはその傾向が強まっています。したがって、これもモバイルプラットフォームの消費・使用が拡大している一因と言えます。

ここで注目すべきは、これらの動画コンテンツはマーケターやブランドにとって、消費者との間にエンゲージメントを醸成し、つながりを作る機会となることです。
 

< (2)ファンダンゴの「デジタルエコシステム」創造と既存顧客ベースの「映画ファン向けEC」 に続く >

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