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VODビジネスにおける脅威とチャンス
公開日: 2018/01/19

VOD(動画配信)ビジネスの未来~北米での最新ビジネス事情から~(6)

 

2017年11月初頭に米国カリフォルニア州サンタモニカで開催されたAFM(American Film Market)のカンファレンスから、世界中でいつでもどこでも映画が配信される中どのように鑑賞者に映画を届けて収益を上げるべきなのか。また、未来はどうなっていくのかについて、第一線で活躍するマーケッターたちが語ったセッション(AFM Distribution Conference Future of Video on Demand)をレポートします。

※本記事で触れられているサービス内容はカンファレンス開催(2017年11月)時点の情報です

 

スピーカーやパネリストの詳細は、連載第一回「「どのVODが儲かっているのか?」~コンテンツホルダーにとってどの形式が収益源なのか(前編)」をご覧ください。



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ブルース・エイセン(モデレーター)

業界の第一線で活躍する皆さんは、今後3~5年のスパンでみたとき、この市場において何にワクワク感を感じていますか? あるいは、夜どんなことが頭によぎったとき寝られなくなりますか?

VODの時代は続く

タニア・ジョーンズ(Shift72)

この業界のお客様の鑑賞行動の急速な変化を考えると、状況は好転していくと考えています。それでは、どこに着地するかですよね?

現状では、VODプラットフォームは大幅な伸びを示しており、テクノロジーの進歩によりサービスのレベルが上がっています。今後はサービスの細分化が見られるのではないかと思っています。すでに始まってはいますが、今後もその傾向が続くでしょう。

では、統合の動きは見られるでしょうか? 今まで以上に存在を強める大手エンターテインメントブランドが出てくるのでしょうか?同時に、VOD業界で大成功を収めた中から、新たなプレイヤーが登場するのでしょうか?現在非常に成功しているプロバイダーの中に失速する会社が出てくるのでしょうか?

最終的に収益モデルがどうなるのか見えにくいなかで、その道筋を照らすことが自分の役割だと考えています。だれにも否定できないこと、それは今はネット配信の時代であり、それが今後もしばらく続くということ。若い世代をみていれば、ネット配信の時代がいつか終わるかもしれないけど、それは近い未来ではないでしょう。
 

これまでの画一的なやり方を打破し、変化に対応していく

ハニー・パテル(AT&T)

我々の課題は、業界のあり方やコンテンツの消費状況が急速に変化している中で、多種多様なお客様のそれぞれに適した商品をどうやって用意するか、ということになりますね。我々は、「汎用サイズです」というように、どのコンテンツにも同じやり方を適用する、画一的なやり方に慣れてしまっています。鑑賞方法にもコンテンツにも多くの選択肢がある中、常にメインの戦場に身を置き消費者ニーズを惹きつけていなければなりません。流れの先を読み、消費者のニーズが変わるのと同様に、我々が適切で進化しつつある商品を提供し続けなければなりません。

私がワクワクするのは、AT&Tのエコシステム全体に価値を与えるコンテンツを提供できるか検討することです。弊社では、モバイル画面とコンテンツの移動性に関する新たな部門を立ち上げました。我々もその一員なのですが、今以上の体験を提供するにはどうしたらよいか、共感を得られるコンテンツは何かを検討しています。それはTVとモバイルでは観るものが違うのかという疑問とはまた異なる答えのあるものなのでしょうか? それを考えるとワクワクしますね。

3~5年前には、今のような競合環境やコンテンツの消費状況に直面しているとは考えもしませんでした。この先の3~5年を予測するのは難しいと思いますが、変化は急速でそれに遅れないようにすることが最大の課題になってくるのではないかと見ています。

 

トーマス・ヒューズ(Lionsgate)

私たちは商業的に成功し企業として継続可能な形で映画を作り続けていかねばなりません。そんななかで私が何にワクワクするかという観点では、少し勝手なことをいうと、私たちは今後環境がどのように変化しても対応できる体制があります。我々は、映画を除いても、世界中の40のネットワークで90もの番組を運営しています。ウィンドウの破たんに関して過去10年くらいになされた大胆な予測はいまだ現実のものとはなっていませんし、我々ライオンズゲートは今後も成功し続けられるポジションにいると考えています。
 

技術の進歩による脅威もあるが、コンテンツと鑑賞者の結びつきは強くなるのではないか

アンディ・ボーン(The Film Arcade)

私が夜も眠れなくなるとすれば、要因は2つあります。

ひとつは、コンテンツの価値が下がっていることです。言い換えれば、劇場での鑑賞であれ、ESTであれ、TVODであれ、またサブスクリプションであれ、消費者に再びコンテンツに対してお金を使ってもらえるようにできるのか。

ふたつめは、いかに自分たちに注目を惹きつけるかです。弊社は、コンテンツで溢れかえっている世界にインディーズ映画をリリースしている小さな会社です。ある部分では、消費者の財布を巡ってマーベルとも競合しています。どうやって我々の方を向いてもらえばいいのでしょうか?

また、将来に関して言うと、ワクワクさせられることはふたつあります。これらのサービスのUI(ユーザーインターフェース)が大きく改善して、3~5年のうちには鑑賞者にコンテンツをみつけてもらう問題が改善し、どのデバイス上でもコンテンツにもっと便利にアクセスできるようになってくれるのではないかということです。また、劇場ウィンドウに関しても様々な取り組みがなされていますが、伝統主義者としては、劇場での映画鑑賞というものがもう一度盛り上がるか、せめて安定化してくれればと思います。

 

VOD(動画配信)ビジネスの未来~北米での最新ビジネス事情から~

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