第1章 宣伝戦略の今 「2:タレントパワーは健在か」
公開日: 2018/06/15
映画のマーケティングに携わる者は、いかにして確実に成功を収められる宣伝計画を立案するのでしょうか。そして、成功する配給戦略とはどのようなものなのでしょうか。”MASSIVE The Entertainment Marketing Summit”で行われた基調ディスカッション“Film Studio Keynote Conversation”では、各スタジオのマーケティングのトップが、具体的な作品の宣伝施策を例に貴重な経験の数々を披露しました。
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シリーズ第2回はプロモーション時に頼りになるタレントパワーに着目。しかし、実際にはどの程度の協力が仰げるのでしょうか。そして、もし出演俳優にそれほどの力が見込めないときに、我々に残された施策はあるのでしょうか。ドウェイン・ジョンソンやオプラ・ウィンフリーらを引き合いに各スタジオのトップマーケターが事例を赤裸々に語ります。
※本記事で触れられているサービス内容はカンファレンス開催(2018年3月)時点の情報です。
※スピーカーの概要は、連載第1回「第1章 宣伝戦略の今 「1:ヒットの鍵を握る映画のイベント化」」をご覧ください。
宣伝に大きなプラス! タレントパワーは健在
モデレーター
プロモーションにおいて、キャストの協力は必要です。端的に言って、宣伝側としては、彼/彼女らに道化を演じてほしいわけですよね。『デッドプール』のライアン・レイノルズは協力的であり、まさにそうだったといっていいでしょう。キャストは皆、彼のように宣伝活動に協力してくれるものなのでしょうか。
ブレア・リッチ(ワーナー・ブラザース)
彼のような協力が得られることは非常に幸運です。ここに異論をはさむ方はいませんよね。現在、私はソニー・ピクチャーズエンタテインメントが配給した『ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル』に続く、ドウェイン・ジョンソン主演の映画『ランペイジ 巨獣大乱闘』を手がけています。あれだけのヒット作の後に続けて公開できるのはありがたいですね。ドウェイン・ジョンソンの映画を観に来ると、観客はポジティブさに満ちた環境に包まれます。それは、次の映画の宣伝に対しても大きなプラスになるのです。
ブレア・リッチ(ワーナー・ブラザース)
監督自身もスターとなる時代であることも無視できないですよね。昨年、『ダンケルク』を手がけたのですが、これはフランスとイギリス以外では誰も発音すらできない場所で起こった第二次世界大戦中の様子を描いた作品です。しかし、監督であるクリストファー・ノーランのような人物の力を借りれば、それを軸に見事な宣伝ストーリーを構築でき、それ自体がイベントであるかのように感じさせられることができました。
強大なタレントパワーも不自然さを匂わせれば台無し
モデレーター
トークショーという映画宣伝もあります。これは今でも重要なのでしょうか?
リッキー・ストラウス(ウォルト・ディズニー・スタジオ)
出演するタレントにもよりますが、重要といえるでしょう。消費者がその言葉に耳を傾けたいと思うような俳優や製作者、もしくはその作品で共演しているスターを一堂に集められれば、非常に効果的です。最近の事例としてオプラ・ウィンフリーが出演した『A Wrinkle in Time(原題)』があります。彼女は宣伝に対して非常に協力的でした。同じ役を他の誰かに演じてもらったとしても、ここまで協力してくれることはなかったのではないでしょうか。彼女はSNSも精力的にやっています。実際、あらゆる面で精力的な人ですね。
モデレーター
なにせ、あのオプラ・ウィンフリーですからね(会場笑)。SNSを通じたプロモーションに関してはいかがでしょうか。
ブレア・リッチ(ワーナー・ブラザース)
我々は普段からSNSを利用していないキャストにプロモーションのための告知を依頼することはありません。宣伝告知をしてもらっても、違和感を持たれますし、嘘っぽくなるだけですからね。嘘っぽくなってしまうと絶対にうまくいきません。なんとかしてSNSで告知をしてもらおうと皆が努力していた時期もありましたし、私自身、お願いした相手もいました。
早い時期からSNSを利用していたのはザック・エフロンですね。私は彼が『グレイテスト・ショーマン』の宣伝にSNSを活用するのを見てきましたが、彼はとても自然です。つまり、嘘っぽくないのです。一方、仕事をともにした俳優には、こういった形での露出を好まない方も大勢います。自分の考えや気持ちをつぶやくなど、SNSを通じた宣伝をしたくない方々ですね。こういったことは強制できるものではありませんから、別の方法を見つけるべきです。
タレントパワー不足を関係者からの協力で解決したアマゾン
リッキー・ストラウス(ウォルト・ディズニー・スタジオ)
タレントパワーの面でみると、アマゾンはとても難しい状況なのではないでしょうか。オプラほどのタレントがいないので、別の宣伝方法を検討する必要がありますよね。ボブがそのあたりを話してくれるでしょう。
ボブ・バーニー(アマゾン・スタジオ)
先日、テレビドラマ「THIS IS US 36歳、これから」の脚本と製作総指揮を務めるダン・フォーゲルマンが監督した映画『Life Itself(原題)』のティーザートレイラーのプレミアを行いました。その際、フォーゲルマンの立場を利用して、「THIS IS US 36歳、これから」の番組内でトレイラーを公開することができました。奇妙に感じるかもしれませんが、後日アマゾンで配信されることが決まっている劇場公開映画であっても、テレビで宣伝を打つことがあるのです。
『マンチェスター・バイ・ザ・シー』も同様でした。出演こそしていませんがプロデューサーを務めたマット・デイモンは、TV広告に出演するなど非常に精力的な宣伝活動を行ってくれました。関係者からは、いろいろな形での協力を得ることができるのです。
<第1章 宣伝戦略の今 「3:宣伝が失敗…、その時、どうする?」に続く>
スタジオトップマーケターによる基調ディスカッション
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第1章 宣伝戦略の今
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2:タレントパワーは健在か
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第2章 メディア戦略・プロモーション施策事例
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第3章 ヒットを科学する
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