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第3章 ヒットを科学する「1:デジタル時代を迎えた今、従来型リサーチは過去の遺物か?」
公開日: 2018/08/02

特集:スタジオトップマーケターによる基調ディスカッション 第3章(1)
massive2018

 

映画のマーケティングに携わる者は、いかにして確実に成功を収められる宣伝計画を立案するのでしょうか。そして、成功する配給戦略とはどのようなものなのでしょうか。”MASSIVE The Entertainment Marketing Summit”で行われた基調ディスカッション“Film Studio Keynote Conversation”では、各スタジオのマーケティングのトップが、具体的な作品の宣伝施策を例に貴重な経験の数々を披露しました。

 

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デジタル時代に突入した今、従来型のアナログリサーチは過去の遺物と化してしまったのでしょうか。膨大な量のデータを解釈する能力さえあれば、リアルタイムで消費者の趣味趣向が浮かび上がってくるなかで、コールトラッキングやフォーカスグループを実施する意味とは? スタジオのトップマーケターが明らかにする従来型リサーチの役割に注目です。

 

コールトラッキング
電話効果測定。媒体種別に用意した電話番号からの入電数や内容を分析することで広告の最適化を図る仕組み。

フォーカスグループ
定性調査。市場セグメント代表者で少人数のグループ(6名程度)を構成し、特定の製品やサービスに関して互いに意見を出し合ったり、議論をしてもらうことで、定量調査では得られないフィードバックを得る手法。

 

※本記事で触れられているサービス内容はカンファレンス開催(2018年3月)時点の情報です。
※スピーカーの概要は、連載第1回「第1章 宣伝戦略の今 「1:ヒットの鍵を握る映画のイベント化」」をご覧ください。

 

アマゾンは膨大なデータ活用とともに直感を重視

 

 モデレーター
アマゾンはデータをマーケティングツールの一環として使用しているという点で、他社とは一線を画していると理解していますが、それで正しいでしょうか?

 

 ボブ・バーニー(アマゾン・スタジオ)
みなさん自社データを持っていますから、我々と同じように活用しているのではないでしょうか。ただし、アマゾンではこれまで同様直観に頼る手法も採用しています。だからこそ、我々はデータに関しては厳格です。我々はみなデータを見て、分析します。アマゾンらしさとはなにかと言われれば、そこから学び、前進し、たとえうまくいかなくとも新しいことへの挑戦を恐れない点にあると思っています。学び身につくものがあれば、それでよいのです。

 

 モデレーター
あなたは従来の映画製作会社でのキャリアの方が長いですが、現在のアマゾンでの業務はこれまでと大きく異なりますか?

 

 ボブ・バーニー(アマゾン・スタジオ)
それほど変わりはありません。インディーズ映画を扱っているのですが、作品ごとに職人的、クリエイティブ的といったように異なったアプローチをするよう努めています。また、私は予告編部門、Kindleオーディブル部門、そしてメイン事業である小売部門の副社長でもあります。そのため、素晴らしいことに各部門が所有するデータを劇場公開する映画のマーケティングに利用できるのです。

アマゾンはプライム用に情報を出し惜しみするようなことはしません。劇場に足を運んでもらう取り組みにも注力しています。お客様はレビューや映画祭で高評価を得た映画についてはよくご存知です。そういった認知と早期の劇場公開時のアマゾンのサポートが、最終的にプライムのお客様に対しても非常に有効に働くのです。

 

 

 

デジタルメディアからの膨大なデータとリサーチを組み合わせる

 

 モデレーター
デジタル時代にリサーチはどう変わってきたのでしょうか。どなたもリサーチをしていらっしゃいますよね。しかし、昔とは違っているはずです。どのように違うのでしょうか?

 

 ブレア・リッチ(ワーナー・ブラザース)
リサーチは常に行っています。例えば、このパネルディスカッションが終わるまでには、現在取り組んでいるすべての案件に関する分析がアップデートされているはずです。どの企業も変わりはありません。ボブはアマゾンでデータという宝の山の上に鎮座していますし、ディズニーや20世紀フォックスも同じですよね。

膨大な量のデータドリブンアナリティクスとSNSアナリティクスをじっくり見比べてみると、リアルタイムで消費者の趣味趣向やその背景が見えてきます。ただし、それを解釈する能力が求められます。誰もがデータを利用していますが、結局は見る人次第といっていいでしょう。

シグナルにどのような意味があるかを戦略的かつクリエイティブに解釈できなければいけませんし、そこから「アフィニティカテゴリができたのだから、コンテンツをカスタマイズしよう」ということを導き出さなければなりません。誰もが広告のように見えないコンテンツ作ろうと試みていますよね。そうすれば、より自分に向けて発信されたように受け取ってもらえますし、次に向けた大きなステップとなるのは間違いありません。

同時にデータの読み違えには注意が必要です。消費者に関する膨大なデータがリアルタイムであがってくるのですから、いとも簡単に誤った判断をくだしてしまうものなのです。

 

 

 

他部門・他業種と連携し多種多様なデータから一つの答えを導き出す

 

 ブレア・リッチ(ワーナー・ブラザース)
ワーナー・ブラザースは数年前から親会社であるワーナーメディアの姿勢に沿って自社データの活用を推進しています。25億人以上もの個人情報を有しており、大手のSNSやデジタルプラットフォームと提携すれば、信じられないほど大量の情報を手にできるのです。

他部門、他業種と連携を取らずに独断で進めるような昔ながらの手法は、もはや通用しません。データやリサーチも同じです。多種多様な観点から一つの答えを導き出すのです。ですから、従来型のリサーチは今でも重要であり、過去の遺物だと言う方がいればそれは間違いなのです。実際、ワーナー・ブラザースでは従来型のリサーチといえるフォーカスグループを実施しています。

 

 パム・レヴィン(20世紀フォックス)
従来型のリサーチというと、昔ながらのコールトラッキング(電話計測)も実施しています。今ではデジタルで処理する調査も多いですが、我々はいまでもコールトラッキングで宣伝の成否を測っています。ブレアの意見を聞きながら考えたのですが、まだ効果のある従来型のリサーチと、どう折り合いをつけていくかについて我々はもっと考えていかなければならないですね。

 

 

【次回】
第3章 ヒットを科学する
2:メガヒットの兆候がみられるのはいつ? その究極の要素とは

 

 

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