強力な顧客データを活かしたAdVOD事業(広告収入ベースの配信ビジネス)
公開日: 2019/06/07
コンテンツ配信先進国のアメリカでは、NetflixやAmazonプライム・ビデオ以外にも多くのサービスがあります。その中で「リアル店舗の小売り事業者傘下」という少し特殊な展開をしている例として、米スーパーマーケット大手ウォルマート傘下の動画配信サービス「Vudu」があります。Vuduは順調にユーザー数を伸ばしていますが、その強みや戦略はどのようなものでしょうか。
2019年3月、米カリフォルニ州ロサンゼルスで開催された“Variety’s 2019 Entertainment Marketing Summit”より、動画配信サービスVuduのヘッド・オブ・マーケティング&マーチャンダイジングを務めるアミット・バラン氏と、AdVODを取りまとめているジュリアン・フランコ氏が登壇したパネル・ディスカッション“New Branding Opportunities: Walmart's Vudu and Exclusive Programming “をレポートします。
モデレーター:
トッド・スパングラー(Todd Spangler)
米バラエティ紙(Variety) ニューヨーク デジタル・エディター
パネリスト:
アミット・バラン(Amit Balan)
ブードゥー(Vudu) ヘッド・オブ・マーケティング&マーチャンダイジング
ジュリアン・フランコ(Julian Franco)
ブードゥー(Vudu) ヘッド・オブ・AdVOD
特集第1回は、VuduのAdVOD戦略に着目しました。これまで、TVOD(レンタル型動画配信:Transactional VOD)サービス、EST(動画配信販売:Electric Sell Through)サービスのみを展開してきたVuduが、なぜAdVOD(広告運営動画配信)サービスをローンチしたのでしょうか。親会社にウォルマートを持つ、Vuduならではの手法に注目です。
※本記事で触れられているサービス内容はカンファレンス開催(2019年3月)時点の情報です
アメリカに住んでいる人は一人残らずウォルマートのお客様
モデレーター
本日のパネル・ディスカッションで取り上げるのは、みなさんご存知の動画配信サービス「Vudu」です。米スーパーマーケット大手ウォルマート傘下にあるVuduは、10年以上の歴史を持ち、これまで映画作品やテレビ番組のTVOD(レンタル型動画配信:Transactional VOD)サービス、EST(動画配信販売:Electric Sell Through)サービスを展開してきました。しかし、ここ約1年半で、AdVOD(広告運営動画配信)サービスも開始しています。アミット、自己紹介とともに、AdVODサービスに着手した理由も教えていただけますか。
アミット・バラン(ブードゥー)
Vuduでは現在、マーケティングとマーチャンダイジング部門をまとめています。トッドが触れましたが、AdVODサービスのローンチ理由は10年前に遡ります。サービス開始当初、Vuduはダウンロード型の販売やレンタルサービスを展開していました。HBOのドラマ「シリコンバレー」には、データ圧縮技術を開発するスタートアップ企業パイド・パイパーが登場しますが、まさにそのような変化が訪れたといっていいでしょう。実際、Vuduは一般家庭のテレビにストリーミング配信を行う最初の会社になりました。
それから数年が過ぎ、我々は配信サービスの大手になりました。TVOD事業に関していえば、2位か3位に位置しているでしょう。これまで我々は、ウォルマートのお客様のニーズや要望から多くのことを学び、事業を発展させてきました。ご存知の通り、アメリカに住んでいる人は一人残らずウォルマートのお客様といえます。この場所から10マイル四方に3店舗のウォルマートがあるといえば納得していただけるかもしれませんね。この膨大な人数のお客様が、日常的にウォルマートに関わっているわけです。
お客様のニーズや要望を伺うなかで、お客様が無料のコンテンツを求めていることが分かってきました。こういったお客様からは、「自分たちを対象とした広告を見せるのなら、喜んで広告を見るよ。広告を通じて商品のことを知れるだけでなく、良質なコンテンツを無料で見られるわけだろ。素晴らしいじゃないか」といった声が聞こえてきました。つまり、これがこの10年でVuduに起こった革新なのだと思います。
我々はTVODサービスから開始しましたが、このように転換期が訪れたのです。そして、「ここには無料で手に入る素晴らしいものがあるよ」と打ち出すことを決心しました。我々はウォルマートの実店舗のほか、ECサイト「Walmart.com」でもこういったことを求める多くのお客様を抱えています。
Vuduの会員数は約4000万人で、毎月、1500万から2000万人のユニークユーザーが訪れています。本日、このようにVuduが成すべきことについて話せる機会をいただき、非常に興奮しています。私は広告業界で媒体購入を手がけているわけですから、マーケッターの目を通したお話をさせていだきます。
実店舗とECサイトの顧客データをまとめて扱える唯一の企業
モデレーター
なるほど。ありがとうございます。Vuduは4000万人の会員数ということですが、ウォルマート自体は毎週1億5000万人の来店者がいる。
ジュリアン・フランコ(ブードゥー)
そうです。
モデレーター
なるほど。それでは次にAdVOD戦略について教えてください。Vuduの来訪者数を増やしたいんですよね?
ジュリアン・フランコ(ブードゥー)
もちろん。米ウォルマートで来店者数が最も多い店の一つが、この近所にあるバーバンク店です。美しい店舗ですね。昨年はアメリカ人の95%がウォルマートを訪れました。現在5000店舗を構えており、ウォルマートが抱えるブランドには、ModCloth、Bonobos、Hayneedle、Moosejaw、Shoes.com、Art.com、Jet.comなど、挙げきれませんがほかにもたくさんあります。Eloquiiもそうですね。これらブランドの顧客すべてがウォルマートのお客様といえるわけです。つまり、我々はウォルマートの顧客というバックボーンの上にAdVODサービスを構築してきたということです。
我々と他社ではAdVODサービスに対する姿勢が異なります。消費者の興味分析や行動データをもとにした素晴らしいマーケティングを行う企業がいますが、我々は実店舗とECサイトの顧客データをまとめて扱える唯一の企業なのです。誰もが商品を販売したいわけですが、お客様が何を購入するかを予想する最適な指標は、購買履歴であることは明らかですよね。我々は購買履歴を含む顧客データを保有しています。つまり、それらを利用して非常に効果的なマーケティングを実施できるということです。
動画配信サービスの成功事例研究:大手小売り事業者による戦略
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