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第6章 初期認知の低い作品に勝機あり!?
公開日: 2020/05/07

「意欲/認知」の理解で“攻めの宣伝戦略”
第6章 初期認知の低い作品に勝機あり!?

「CATS」データの重要な指標である認知意欲意欲/認知に焦点を絞り、有用性を紐解くコラムの第6章。意欲/認知を高めることができた作品の傾向を探った前章に引き続き、意欲/認知の上昇幅傾向を分析します。今回はシリーズものでない洋画実写や初期認知の低い作品などで顕著になった“特性”をご紹介いたします。

第6章 目次

意欲/認知の上昇幅ランキングの上位は「シリーズものでない洋画実写」が占める

意欲/認知の上昇ランキング上位の作品を見ると(参照「第5章 『アナ雪』『ファブル』他から成功パターンを探る!」)、“シリーズものでない洋画実写”の多さに気がつくのではないでしょうか。実際、ランキングの上位50作品においても、ほとんどが“シリーズものでない洋画実写”となっています。

ただし、ここで注意が必要です。意欲/認知を大きく上げた作品のほとんどが“シリーズものでない洋画実写”であるというのは事実ですが、“シリーズものでない洋画実写”がすべて意欲/認知を大きく上昇させているわけではありません。つまり、「この作品はシリーズものでない洋画実写だから、意欲/認知が上がるだろう」とはいえないのです。

加えて、邦画実写やアニメの意欲/認知は上がらないという訳でもありません。前章でご紹介した『ザ・ファブル』のように、邦画実写であっても意欲/認知をしっかり上昇させた作品も存在します。

シリーズ作品でも、特に『スター・ウォーズ』シリーズや、ハリー・ポッターをはじめとした『魔法ワールド』シリーズなど、規模が非常に大きいシリーズ作品の意欲/認知の変動幅は小さくなっています。その理由の仮説の一つとして、規模の大きいシリーズ作品は、もともとどのような作品か知られているからと推察されます。すなわち、シリーズ個別の内容は作品ごとに違えど、大きな意味での内容は分かっているため、意欲を持つ人は最初から持ち、持たない人は意欲を変化させにくいと考えられるからです。

 

初期認知の低い作品はチャンスあり!?

もし、前項の仮説が正しければ、認知の初期値が低い(作品への理解度が低い)と、公開に向けて意欲/認知が大きく上昇することが予想されます。また一方で、認知の初期値が高い(作品への理解度が高い)と意欲/認知の変動幅が小さくなる傾向があることも期待されるでしょう。

ただし、認知の初期値が低いと「意欲/認知が上昇する確率が高い」というわけではないことにご注意ください。もともと知られていないため、露出が増えることで逆に期待していたものと違うという反応を得て、意欲/認知が下がることも考えられます。そのため、正確には認知の初期値が低いと、意欲/認知の上昇、減少の幅が広がることが予想される、ということになります。では実際に、そのようになっているか確認してみましょう。

上のグラフは、認知の初期値(横軸)と意欲/認知の増減値(縦軸)の関係を表した図です。予想通り、認知の初期値が小さな作品は意欲/認知の上下への広がりが拡大しています。また、意欲/認知が大きく上昇した作品は、認知の初期値が大きな作品群より、初期値が小さな作品群に多いことが見て取れます。

意欲/認知の上昇ランキング1位の『インセプション』は左上にあり、初期認知が低めであったことが分かります。つまり、本作は内容が明らかになるにつれ、認知者内でも理解が深まり、意欲が高まったと思われます。

初期認知が低い作品は特に「理解度が低い」ことが想定されます。前章で述べたように、認知を本格的に高める前に、意欲/認知をしっかり高めておくことが重要です。特に知られていない作品の意欲を高めるためには、認知者に対し意欲が高まるまでしっかりと作品内容を伝えていかなければなりません。

しかしながら、どのような内容であれば意欲を高められるのか、というのは事前にはなかなか分かりません。初期認知の低い作品では、意欲/認知が上昇する作品も増える一方で、減少する作品も増えているため、チャンスとリスクは表裏一体なのです。そのため、初期認知の低い作品は、事前に、「どのような内容」を「誰に」訴求すれば意欲/認知が高まるのか、逆に下がるのかをリサーチして見極めなければなりません。

リサーチでは、疑似的に回答者全員を「認知者」とした状況を作り出し、そのなかでの「意欲」を評価することで、「意欲/認知」を分析します。具体的には、予め設計したセグメント(=「誰に」)に対して、動画・説明文などのクリエイティブへの反応と興味理由(=「どのような内容」)を評価するという手法になります。GEM Standardではこのようなリサーチを個別設計サービス「DOGS」にて承っています。ご興味があればご相談ください。

 

次章では、これまで全体数値で探ってきた意欲/認知の推移を、性年代別や年間鑑賞本数別に分析。セグメント毎の特性を導き出します。


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