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『ワンピース』『トップガン』がけん引、夏興行の熱気が映画参加者人口を押し上げ
公開日: 2022/09/30

2022年9月30日付毎日新聞夕刊映画欄において掲載された「シネマの週末・データで読解 『市場に熱もたらした夏』」を再構成して、補足を加えています。

例年、その年の総興行収入を大きく左右する夏興行。9月24日~9月25日の週末観客動員数ランキングでは、8月公開の『ONE PIECE FILM RED』が8週連続で1位を獲得し、現時点で興収は156億円。『トップガン マーヴェリック』も5月公開から異例のロングランヒット中で5位にランクインし、興収128億円を超えた。興行展開まっただなかの夏公開作品もまだ多いが、現時点の見込みを含めて過去と比較するとコロナ前の水準に戻った感のある夏興行であった。

6月~8月公開映画のジャンル別興収合計/割合(興行収入10億円以上作品)2018年~2022年

6月~8月公開作品の10億円以上作品の合計をみると533億円となった。コロナ直前の2019年に記録した751億円には及ばないものの、2018年の581億円に迫るレベルである。作品の顔ぶれをみると、邦画、洋画、アニメ、実写それぞれに50億級、100億級のヒット作が生まれた結果である。

2022年 6月~8月公開映画の最終興行収入10億円以上見込み作品

こうした活況の夏興行を受けて、映画興行のベースとなる映画参加者人口も増加が続いた。コロナ禍前から30%以上減少していた映画参加者人口(年に一本以上映画館で映画を見る人の数)は5月から8月にかけて4か月連続で前月比で増加を続け、特に8月は前月比4%と力強く増加した。その結果4月と比べて8月時点で9.4%増加している。

映画参加者人口 月次推移- 「GEM映画白書ダッシュボードより」 -

また、下落が続いていた年配層や「恋人・夫婦で映画に行く」「子供と映画に行く」層でも増加が見られたことは好材料である。

性年代別 映画参加者人口 月次推移 - 「GEM映画白書ダッシュボードより」 - 「ジャンル・タイプ別」の映画参加者人口 月次推移 - CATSデータより - 「良くいく同伴者別」の映画参加者人口 月次推移 - CATSデータより -

人々を劇場に向かわせるのは個々の作品の訴求力だが、その行動自体に習慣性がある。久しぶりに映画館に来た人が多数いたことが今後の作品の後押しになる。秋にも中規模作品の公開が多数あり、冬に向けては今回リマスター版上映により週末観客動員数ランキング9位にランクインした『アバター』の続編や新海誠監督の新作、人気漫画「SLAM DUNK」の劇場版など、多くの期待作が控える。引き継がれるべき市場の熱をもたらした夏だったといえる。

参考データ(2018年~2021年における6月~8月公開映画の最終興行収入10億円以上作品)

2018年 6月~8月公開映画
最終興行収入10億円以上作品
(白地:邦画、黄色地:洋画)
 
順位 作品名 分類 最終興行収入(億円)
1位 劇場版 コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命- 実写
93 1位 劇場版 コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命- 93億円
80.7 2位 ジュラシック・ワールド/炎の王国 80.7億円
49 3位 インクレディブル・ファミリー 49億円
47.2 4位 ミッション:インポッシブル/フォールアウト 47.2億円
45.5 5位 万引き家族 45.5億円
37 6位 銀魂2 掟は破るためにこそある 37億円
30.9 7位 劇場版ポケットモンスター みんなの物語 30.9億円
29.6 8位 検察側の罪人 29.6億円
28.8 9位 未来のミライ 28.8億円
21.4 10位 ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー 21.4億円
18 11位 デッドプール2 18億円
17.4 12位 空飛ぶタイヤ 17.4億円
17.2 13位 僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ※1 17.2億円
16.9 14位 オーシャンズ8 16.9億円
13.2 15位 アントマン&ワスプ 13.2億円
12.6 16位 50回目のファーストキス 12.6億円
12.3 17位 センセイ君主 12.3億円
10.2 18位 劇場版 仮面ライダービルド Be The One※2 10.2億円
2位 ジュラシック・ワールド/炎の王国 実写
3位 インクレディブル・ファミリー アニメ
4位 ミッション:インポッシブル/フォールアウト 実写
5位 万引き家族 実写
6位 銀魂2 掟は破るためにこそある 実写
7位 劇場版ポケットモンスター みんなの物語 アニメ
8位 検察側の罪人 実写
9位 未来のミライ アニメ
10位 ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー 実写
11位 デッドプール2 実写
12位 空飛ぶタイヤ 実写
13位 僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ※1 アニメ
14位 オーシャンズ8 実写
15位 アントマン&ワスプ 実写
16位 50回目のファーストキス 実写
17位 センセイ君主 実写
18位 劇場版 仮面ライダービルド Be The One※2 実写
※1:『僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ~2人の英雄(ヒーロー)~』
※2:『劇場版 仮面ライダービルド Be The One/快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー en film (アンフィルム)』
出典:一般社団法人日本映画製作者連盟「日本映画産業統計」より
2019年 6月~8月公開映画
最終興行収入10億円以上作品
(白地:邦画、黄色地:洋画)
 
順位 作品名 分類 最終興行収入(億円)
1位 天気の子 アニメ
140.6 1位 天気の子 140.6億円
121.6 2位 アラジン 121.6億円
100.9 3位 トイ・ストーリー4 100.9億円
66.7 4位 ライオン・キング 66.7億円
55.5 5位 ONE PIECE STAMPEDE 55.5億円
30.6 6位 スパイダーマン ファー・フロム・ホーム 30.6億円
30.6 6位 ワイルド・スピード/スーパーコンボ 30.6億円
29.8 8位 ミュウツーの逆襲 EVOLUTION 29.8億円
26.5 9位 劇場版 おっさんずラブ LOVE or DEAD 26.5億円
21.6 10位 ペット2 21.6億円
19.3 11位 アルキメデスの大戦 19.3億円
18.2 12位 劇場版 うたの☆プリンスさまっ♪※1 18.2億円
17.7 13位 ザ・ファブル 17.7億円
14.2 14位 ドラゴンクエスト ユア・ストーリー 14.2億円
12.4 15位 Diner ダイナー 12.4億円
11.8 16位 ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド 11.8億円
11.7 17位 劇場版 仮面ライダージオウ※2 11.7億円
11.1 18位 引っ越し大名! 11.1億円
10.3 19位 メン・イン・ブラック:インターナショナル 10.3億円
2位 アラジン 実写
3位 トイ・ストーリー4 アニメ
4位 ライオン・キング 実写
5位 ONE PIECE STAMPEDE アニメ
6位 スパイダーマン ファー・フロム・ホーム 実写
6位 ワイルド・スピード/スーパーコンボ 実写
8位 ミュウツーの逆襲 EVOLUTION アニメ
9位 劇場版 おっさんずラブ LOVE or DEAD 実写
10位 ペット2 アニメ
11位 アルキメデスの大戦 実写
12位 劇場版 うたの☆プリンスさまっ♪※1 アニメ
13位 ザ・ファブル 実写
14位 ドラゴンクエスト ユア・ストーリー アニメ
15位 Diner ダイナー 実写
16位 ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド 実写
17位 劇場版 仮面ライダージオウ※2 実写
18位 引っ越し大名! 実写
19位 メン・イン・ブラック:インターナショナル 実写
※1:『劇場版 うたの☆プリンスさまっ♪ マジLOVEキングダム』
※2:『劇場版 仮面ライダージオウ/劇場版 騎士竜戦隊リュウソウジャー』
出典:一般社団法人日本映画製作者連盟「日本映画産業統計」より
2020年 6月~8月公開映画
最終興行収入10億円以上作品
(白地:邦画、黄色地:洋画)
 
順位 作品名 分類 最終興行収入(億円)
1位 今日から俺は!!劇場版 実写
53.7 1位 今日から俺は!!劇場版 53.7億円
38.4 2位 コンフィデンスマンJP プリンセス編 38.4億円
33.5 3位 映画ドラえもん のび太の新恐竜 33.5億円
23.4 4位 事故物件 恐い間取り 23.4億円
22.7 5位 糸 22.7億円
18.8 6位 劇場版 Fate/stay night[Heaven’s Feel] III.spring song 18.8億円
2位 コンフィデンスマンJP プリンセス編 実写
3位 映画ドラえもん のび太の新恐竜 アニメ
4位 事故物件 恐い間取り 実写
5位 実写
6位 劇場版 Fate/stay night[Heaven’s Feel] III.spring song アニメ
出典:一般社団法人日本映画製作者連盟「日本映画産業統計」より
2021年 6月~8月公開映画
最終興行収入10億円以上作品
(白地:邦画、黄色地:洋画)
 
順位 作品名 分類 最終興行収入(億円)
1位 竜とそばかすの姫 アニメ
66 1位 竜とそばかすの姫 66億円
45 2位 東京リベンジャーズ 45億円
36.7 3位 ワイルド・スピード/ジェットブレイク 36.7億円
33.9 4位 僕のヒーローアカデミア THE MOVIE※1 33.9億円
25 5位 るろうに剣心 最終章 The Beginning 25億円
22.3 6位 機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ 22.3億円
19 7位 ゴジラvsコング 19億円
17.7 8位 映画クレヨンしんちゃん 謎メキ!花の天カス学園 17.7億円
16 9位 キャラクター 16億円
14.2 10位 ザ・ファブル 殺さない殺し屋 14.2億円
12.8 11位 ドライブ・マイ・カー 12.8億円
10.6 12位 かぐや様は告らせたい※2 10.6億円
10 13位 ハニーレモンソーダ 10億円
2位 東京リベンジャーズ 実写
3位 ワイルド・スピード/ジェットブレイク 実写
4位 僕のヒーローアカデミア THE MOVIE※1 アニメ
5位 るろうに剣心 最終章 The Beginning 実写
6位 機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ アニメ
7位 ゴジラvsコング 実写
8位 映画クレヨンしんちゃん 謎メキ!花の天カス学園 アニメ
9位 キャラクター 実写
10位 ザ・ファブル 殺さない殺し屋 実写
11位 ドライブ・マイ・カー 実写
12位 かぐや様は告らせたい※2 実写
13位 ハニーレモンソーダ 実写
※1:『僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ワールド ヒーローズ ミッション』
※2:『かぐや様は告らせたい ~天才たちの恋愛頭脳戦~ ファイナル』
出典:一般社団法人日本映画製作者連盟「日本映画産業統計」より

(GEM Partners代表、梅津文)=毎月最終金曜日掲載

◆掲載元◆
毎日新聞:シネマの週末・データで読解 『市場に熱もたらした夏』(毎日新聞2022年9月30日 東京夕刊)

今回の調査結果について
今回の調査結果は、映画製作・興行・配給・宣伝向け分析サービス「CATS(Cinema Analytical Tracking Survey)」の調査結果を基にしています。本調査を基にした商品には、劇場公開映画の宣伝状況を俯瞰する業界スタンダード・レポート「CATS 市場概況レポート+(プラス)」や、映画鑑賞者のスタイル・ニーズの<変化>が「こだわり」や「嗜好」の切り口でひと目で分かる「GEM映画白書ダッシュボード」などがございます。CATSデータの部分販売も可能ですので、興味のある方はお気軽にお問い合わせください。

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