記事

映画『バービー』の大成功と今後の映画化戦略~特集:映画『バービー』ヒットとマテル社の変革 - イノン・クライツCEO基調講演(前編)
公開日: 2023/10/25

特集:映画『バービー』ヒットとマテル社の変革 - イノン・クライツCEO基調講演(前編)

米ロサンゼルスで行われた「Variety Entertainment & Technology Summit 2023」(9月21日開催)にて、映画『バービー』の成功に沸くマテル社のイノン・クライツCEO兼チェアマンが、玩具会社からIP会社へと変貌しつつある同社の方針と今後について語った基調講演の模様を前後編の2回に分けてレポートします。

前編は、映画『バービー』がマテル社にもたらした影響と、今後の映画化戦略についてクライツCEOが語りました。

※本記事で触れられている内容は2023年9月時点の情報です

モデレーター
アンドリュー・ウォーレンスタイン(Andrew Wallenstein)
Varietyインテリジェンス・プラットフォーム:代表&チーフメディア・アナリスト

スピーカー
イノン・クライツ(Ynon Kreiz)
マテル(Mattel):CEO、チェアマン
《目次》

 

 

映画はマテル社のIP事業という大きなパズルのピースの一つ

世界興収14億ドル超(2023年10月15日時点)、オスカーの呼び声も高く、名実ともに2023年を代表する映画となった『バービー』。バービー・ブランドを擁するマテル社が同映画から得た売上は、1億2500万ドル以上といわれています。こうしたなか、モデレーターのアンドリュー・ウォーレンスタイン氏は、映画『バービー』の成功が同社に与えた影響について問いました。

マテル社のイノン・クライツCEO兼チェアマンは、同作の成功は喜ぶべきものだが、「映画はあくまでも、マテルが目指すIP事業という大きなパズルのピースにすぎない」と回答。「マテルは、世界最強のキッズ&ファミリー向けエンタテイメント・ブランドをいくつも所有しています。私たちはまず、核となる玩具ビジネスを立て直し、それを基に映画やテレビ、キャラクター商品、テーマパーク、ライブイベント、デジタル体験などを通して、ファンと感情的なつながりを築くことを考えてきました。『バービー』も、そうした数年にわたるIP戦略のなかの一つなのです。映画の成功は喜ぶべきものですが、私たちにとって大切なのは映画というメディアだけでも、バービーというブランドだけでもありません」。

 

事業の対象は“消費者”ではなく“ファン”
『LEGOムービー』や『ワイルド・スピード』に見たヒント

その上で、「今回の映画の成功で気づいたことは、私たちの事業の対象が“消費者”ではなく、“ファン”であるということ。ファンが集まると“オーディエンス”が形成され、会話が生まれます。映画には文化的インパクトを与える力があるのです」と説明したクライツ氏。

「これまでも、ある強いブランドを一つのメディアで成功させ、その他の分野に広げて成功を伸ばす例はありました。私たちのIP戦略は決して革新的なものではなく、他の会社や人々が過去にも行ってきたことです。ただ、マテルは長くビジネスをしていながら、これまで映画を作ったことがなかったのです。LEGOは、人気キャラクターがあるわけではないのに、ブロックから素晴らしい映画を作ってみせました。乗り物ブランドでいうなら、映画『ワイルド・スピード』シリーズは10本も展開されているのに、年間7~8億台を売り上げる(マテル社IPの)ダイキャストカー、ホットウィールの映画はゼロだったのです」。

 

優秀なタレントとのコラボレーションでブランド強化

こうしたなか、IP戦略に映画を取り入れるべく、映画業界の才能に目を付けたクライツ氏……(以下、会員限定記事にて掲載)

※本記事はGEM Standard会員様限定となります。
新規登録(無料)いただくと閲覧いただけます。

未登録の方はこちら新規会員登録(無料)
会員様はこちら記事を読む※パスワードを忘れた方はこちら

レポート・データ解説