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リアルタイムの試行錯誤――デジタルマーケティングの本来の価値を最大化
公開日: 2018/04/12

デジタルマーケティングによる映画鑑賞者ターゲティング最前線(2)
massive2018

 

これまで以上に精緻なターゲティングが求められているデジタルマーケティング業界。成功へと導くターゲティングのカスタマイズとそのリーチ規模のバランスとは? そして求められる対応速度とは? 2018年春、米ロサンゼルスで開催された映像業界関係者向けのカンファレンス”MASSIVE The Entertainment Marketing Summit”で行われたパネルディスカッション“Masters of Targeting and Holding the Audience”にて答えを探ります。

 

※スピーカーやセッションの概要は、連載第1回「映画ヒット×デジタルマーケティング成功事例~『ジュマンジ』」をご覧ください。

 

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「本当にデジタルマーケティングは役立つのか?」。グーグルのアンジー・パリック氏(メディア/エンターテインメント産業部門長)は毎週のようにこの質問を受けるという。連載第2回では、より速度が求められるリアルタイムでの試行錯誤に話題は移行。その結果とどのように対峙すべきかを先の問いと共にバリック氏が答えてくれました。
※本記事で触れられているサービス内容はカンファレンス開催(2018年3月)時点の情報です

 

ティーボ(TiVo)
内蔵HDDにテレビ番組を録画する同名の家庭用DVR(デジタルビデオレコーダー)や、電子番組表「Gガイド」の提供で知られる企業。DVR「TiVo」はユーザーの趣向を反映して自動的にテレビ番組を録画する機能や、視聴状況に応て動画配信サービスを含めた番組検索のレコメンデーション機能を搭載するなど、ユーザーの視聴情報を有益に活用している。

 

リアルタイム調整と精緻なターゲティングによる柔軟なアプローチ

 

ウォルト・ホーストマン(ティーボ)
今日、世界は莫大なデータであふれています。そのような状況下でコンテンツマーケティングに携わることの面白さのひとつに、ほぼリアルタイムでTVの宣伝活動を調整できるツールがあることが挙げられます。

従来のコンテンツマーケティングでは、「必要なGRP(延べ視聴率)に応じ、オーディエンスに対してバランスよく宣伝を行う」ものだと考えられていた節がありましたが、我々はこの考え方に疑問を持ち、新たな技術を持ち込みました。広告に支えられたエコシステムから消費者が離脱したら、獲得し直すのは至難の業です。より多くのコンテンツをアピールし続けるには、視聴者に現行のエコシステムに留まってもらうことが極めて重要なのです。だからこそ、この技術は不可欠だったのです。

ティーボには「ある番組の直近5回のうち2回を観ている層にアプローチしてエンゲージメントを獲得したい」という、非常に限定したターゲットを追っているコンテンツマーケターが大勢います。そして実際にそういった層をターゲットすることは可能です。さらに、狙い通りのインプレッションが出ているか、コンバージョンをどの程度獲得しているかを、毎日ほぼリアルタイムで追跡できるのです。この精緻なターゲティングと最適化によって、これまでのアプローチよりもはるかに柔軟な対応が可能になりました。

 

ターゲティングの迅速な最適化が顧客中心主義へとつながる

 

スザンヌ・クンケル(モデレーター)
自社データとTV データを組み合わせる試みといえばティーボです。先程、データ中心の考え方が顧客中心主義につながると説かれていましたが、そちらにも触れて少しお話しいただければと思います。

ウォルト・ホーストマン(ティーボ)
あらゆる宣伝活動から得られたデータを迅速に適用していくことが重要になります。現在進行形で起こっている事例をご紹介しましょう。我々はSNSマーケターを使って、間もなく始まる番組のプロモーションを行っています。SNSプロモーションに触れたのはどのような層で、その層のTV番組に対する行動パターンはどのようなものかはすぐに分かります。それを直ちに反映して継続的に最適化していくのです。

興味深いと思ったのは、媒体ごとに柔軟性が異なるということ。そこに配慮しなければいけません。最適化の調整やターゲティングに関して、TVはモバイルやSNSほどの柔軟性がないことは、まず先にお伝えしておくべきでしょう。モバイルやSNS ならば、分単位で調整可能です。

番組の認知や視聴率を上げるという最終的な狙いを念頭に置いて迅速に最適化をやり直すことで、カスタマー・エクスペリエンスは効果を上げ、すべてのデータの中心に消費者を据えることになるのです。


 

デジタルマーケティング

 

デジタルマーケティングは役立つのか? グーグルに投げかけられた問い

 

スザンヌ・クンケル(モデレーター)
アンジー、あなたはデータの分析、解析結果を意識するとおっしゃいました。それは、いったん始めた宣伝活動に対して抱く感情に、その結果をぶつけてみるということでしょうか? 例えば結果を見て、「それでも、もう少しやってみよう」と思いますか? それとも不調であれば、「いや、潮時だ。結果がついてこない」と考えて別の策に切り替えるのでしょうか?

アンジー・バリック(グーグル)
我々のビジネスにはこの葛藤する美しいハーモニーが不可欠だと、私は考えています。エンターテインメント業界なのですから、何をすべきかという肝心なところを機械に任せるわけにはいきません。

時にはただの直観と思われるもので動かざるを得ないこともあります。しかし、最終的には常識とデータ結果の折り合うところを見つけて、恐れずにそれを実行していくことになるのです。

これは我々が今でも乗り越えようとしているものではないでしょうか。いろいろな意味でデジタルデータの分析、解析の有用性は証明されていますが、私は今でも毎週のように「本当にデジタルマーケティングは役立つのか?」という質問を受けます。まだそこに疑問を抱いている人は多くいますし、それを説得するためにもデータ分析や解析は欠かせないのです。

 

<「(3)メディアが持つデータを活用した精緻なターゲティング~Pandoraの手法」に続く>

 

 

デジタルマーケティングによる映画鑑賞者ターゲティング最前線