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映画ヒット×デジタルマーケティング成功事例~『ジュマンジ』
公開日: 2018/04/05

デジタルマーケティングによる映画鑑賞者ターゲティング最前線 (1)
massive2018

 

これまで以上に精緻なターゲティングが求められているデジタルマーケティング業界。成功へと導くターゲティングのカスタマイズとそのリーチ規模のバランスとは? そして求められる対応速度とは? 2018年春、米ロサンゼルスで開催された映像業界関係者向けのカンファレンス”MASSIVE The Entertainment Marketing Summit”で行われたパネルディスカッション“Masters of Targeting and Holding the Audience”にて答えを探ります。
 

 

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宣伝における成功とは、適切な人々にリーチし、獲得することです。完璧なターゲティングに必要な理想的なカスタマイズと規模のバランスはどのように導きだせるのでしょうか? 独自の切り口を持った顧客情報を提供してくれるデータやアナリティクスサービスにはどのようなものでしょうか? 大手ブランドとアナリティクスパートナーが、宣伝効果を最大化するための適切なターゲティング方法を明かしてくれます。

連載第1回は、4月6日(金)に日本公開となる『ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル』の成功を事例に、デジタルマーケティングに求められる対応速度と、軌道修正のポイントに迫ります。
※本記事で触れられているサービス内容はカンファレンス開催(2018年3月)時点の情報です

モデレーター:
スザンヌ・クンケル(Suzanne Kounkel)
デロイト・コンサルティング(Deloitte Consulting) 最高マーケティング責任者

パネラー:
ウォルト・ホーストマン(Walt Horstman)
ティーボ(TiVo) アドバンスト・メディア&アドバタイジング担当副社長兼GM

エイミー・ラピック(Aimeé Lapic)
パンドラ・メディア(Pandora Media) 最高マーケティング責任者

エリアス・プリシュナー(Elias Plishner)
ソニー・ピクチャーズ(Sony Pictures) デジタルマーケティング部門長

アンジー・バリック(Angie Barrick)
グーグル(Google) メディア/エンターテインメント産業部門長

『ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル』のヒットを導いた“舵の切り直し”と“結合組織”

 

『ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル』

『ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル』
4月6日(金)TOHOシネマズ 日比谷ほかで全国ロードショー

 

スザンヌ・クンケル(モデレーター)
皆さんはデジタルマーケティングを利用した宣伝において、リアルタイムで方針を変更したり、実験的な試みを行う際に、データの分析や解析結果をどのように活用されているのでしょうか? 具体例をいただけると分かりやすくてありがたいです。

 

エリアス・プリシュナー(ソニー・ピクチャーズ)
『ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル』は、世界興収9億ドル以上という成功を収めていますので、恐らく最高の事例になるでしょう。

 

大失敗の予告編立ち上げ

 

本作の米国での製作発表の際、最初に制作した予告編をYouTubeなどのデジタルプラットフォーム上で流したのですが、これが大失敗でした。「子ども時代の思い出を台無しにしてくれた」「ハリウッドはアイデアが枯渇したことを公式に認めた」など、かの名作(1996年に日本公開されたロビン・ウィリアムズ主演『ジュマンジ』)の焼き直しと捉えたファンから酷評する声が延々と届いたのです。

予告編に対するこのような感情や、そのほか我々が手に入れられるデータの分析や解析結果を見る限り、マーケティングチームが舵を切り直して次の新しい手を考えなければならないのは明らかでした。そこで、ファンの動向(=シグナル)をくまなく調査するとともに、特にデータに注視したところ、宣伝に欠けていたのは私が“結合組織(connected tissue)”と呼ぶものだったことが分かったのです。

 

結果のデータ解析からの学びを踏まえて軌道修正

 

1作目へのオマージュをどう示せばよいのか。この作品がリメイクではなく、子どもの頃に愛した作品の続編であることをどのように伝えればいいのか。最終的に、本作は前作のエンディングに直結していることを強調しようということになりました。前作では、ボードゲームが浜辺に打ち上げられるシーンで終わりました。今回はまさにそこから始まるのです。

つまり大切なのは、オーディエンスの持つ前作の記憶と今回の作品とを密接につなぐ“結合組織“を提供することだったのです。あらゆる評価基準において、第2弾の予告編の評価は180度変わりました。作品の第一印象を拭い去ることは簡単ではありません。しかし、本作ではそれを成し遂げたのです。

この判断により、宣伝活動は正しい軌道に乗りました。この業界では宣伝が終了してから敗因を探ることがあまりにも多い。ですが、率直に言わせてください。終了時に何をしたところで、「いいでしょう。でも次の宣伝には役に立っても、今回の軌道修正には役立ちません」ということなのです。

我々は、一度立ち止まって現状を認識し、そこから前に進むために何をすればいいかを考えることが少なすぎるのではないでしょうか。『ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル』は、それを示す最高の事例だと思います。

 

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