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第2章 “プラットフォーム”と“消費者”「3: ブランドマーケターへの処方箋」
公開日: 2018/11/16

トップマーケターが語るマルチプラットフォーム戦略(7)
massive2018

 

消費者のメディア接触の傾向が変わるなか、マーケターが最適な結果を得られる戦略にはどのようなものがあるのでしょうか。ARやインタラクティブ端末の誕生により、オーディエンスや消費者にリーチできる新たなプラットフォームが登場しましたが、どのようにリーチすればよいのでしょうか。また、動画配信やSNSといったOTTの契約者数増加によってマーケターが手にするチャンスとは一体?

”MASSIVE The Entertainment Marketing Summit”で行われたパネル・ディスカッション“Marketing to the Multiplatform Fan”では、プラットフォーム間でファンを生み出す方法について、トップクラスのマーケターとマーケティング・パートナーが議論を交わしました。

 

※本記事で触れられているサービス内容はカンファレンス開催(2018年3月)時点の情報です。

 

モデレーター:
ゲイル・フギット(Gayle Fuguitt)
フォースクエア(Foursquare) 顧客インサイト/イノベーション担当部門長

パネリスト:
レベッカ・ドハーティ(Rebecca Daugherty)
ABC/ABC スタジオ(ABC and ABC Studios) 執行副社長兼マーケティング部門長
――米ウォルト・ディズニー・カンパニー傘下の放送ネットワーク/テレビ番組制作会社

アシシュ・コーディア(Ashish Chordia)
アルフォンソ(Alphonso) CEO兼共同創業者
――TVデータ会社。TV広告プラットフォームを運営し、リアルタイムで消費者インサイトの分析、提供を行う(関連記事)。

JP・リチャーズ(JP Richards)
ワーナー・ブラザース・ピクチャーズ(Warner Bros. Pictures) ワールドワイドマーケティング担当執行副社長兼チーフ・データ・ストラテジスト
――映画製作・配給会社。

ゲイル・トロバーマン(Gayle Troberman)
アイハートメディア(iHeartMedia) 最高マーケティング責任者
――米大手ラジオ局運営会社。

 

※登壇したパネリスト全員の概要は、連載第1回「第1章 “科学“と“技術”「1:データを解釈してストーリーを描け! 不可欠な定性分析」」をご覧ください。

従来のビジネスモデルに留まるべきか、それとも新しい施策にチャレンジするべきか。デジタルマーケティングが日々進化するなか、ブランドマーケターはこれらの選択に迫られています。特集のラストを飾る第7回は、この判断に役立つ処方箋をトップマーケターたちが紹介。エモーション(感情)とイノベーション(技術革新)の2面から紐解いていく消費者とのつながりに注目です。

 

1:マーケティングのキーとなるのはデータ戦略

 

 モデレーター
会場の皆さんを正しいブランドマーケターへと導くために、パネリストの方々から処方箋、つまり今後なにをすべきかについて伺いたいと思います。従来のビジネスモデルに留まるべきか、それとも次々と登場する新しい手法にチャレンジすべきなのか。私たちはこのディスカッションを通して、ブランドマーケターがこれらの間で葛藤している現状について議論を重ねてきました。一体、留まるべきときと捨て去るべきときを、どのように判断したらいいのでしょうか? ブランドマーケターに向けての処方箋を手短にご紹介ください。

 

 アシシュ・コーディア(アルフォンソ)
アルフォンソのような企業がやっていることは、データを活用して多数派の動向を追い、より深い次元の消費者理解をもたらすことです。特別新しいことではありませんが、企業のCMO(最高マーケティング責任者)はCDO(最高データ責任者)に変わりつつあります。マーケティングのキーとなるのは、データ戦略なのです。

 

 モデレーター
新たなスキルが必要だということですね。

 

 アシシュ・コーディア(アルフォンソ)
そうです。優れたCMOは既に始めていると思います。ビッグデータ解析のための社内インフラを整えることなどもありますが、とてつもない規模のデータの存在を理解することです。ラジオやTV や劇場のデータを理解し、その理解を他のメディアにも活用できる能力が必要とされます。5年前にはただの構想でしたが、今ではそれが可能なのです。

 

ファン

 

 

2:消費者の感情を呼び起こせるかに尽きる

 

 モデレーター
レベッカ、いかがですか?

 

 レベッカ・ドハーティ(ABC/ABC スタジオ)
私は、感情面でのつながりに尽きると思います。我々のチームが何かのプロジェクトを手がけていたとして、その作品に対して泣いたり笑ったりといった感情的なつながりを持っていなかったとしたら、その作品を観た方に何かを感じてもらうことはできません。私たち自身が本当に感じたものをできる限り忠実に宣伝に反映することが大切です。

 

 JP・リチャーズ(ワーナー・ブラザース・ピクチャーズ)
100%同感ですね。誰かの感情を呼び起こせるかどうかがすべてなのです。しかも、正直に申し上れば、今日では瞬間的に呼び起こす必要がありますよね? Snapchatの方がここにいたら、3秒のうちに興味を喚起できなければ、それで終わりだと言うでしょう。

我々はそういった感情的なつながりを醸成し、消費者を捉えて我々の思う方向へと導かなければならないのです。それに加えて、私が毎日チームに言っているのがイノベーションです。すべてがイノベーティブでなければいけません。消費者がこれまでよりも多忙な日々を送っているなか、複数のプラットフォームで消費者の関心をひくためには、消費者の心にしっかりと届く仕掛けが求められるのです。

それにはイノベーションを通じて仕掛けていくのがベストです。あらゆる場所でアプローチしなければいけませんから、メディアミックスの見直しは必須でしょう。メディアミックスには、ラジオや屋外広告、デジタル、SNS、TVも含まれます。これまでのように仕掛けていきますが、人々の想像力をかきたてることが肝心です。そうすれば、感情的なつながりに訴えかけることができ、有効なタッチポイントとなります。

年間20本の映画を手がけていますが、各作品に対してイノベーティブになる必要があります。 つまり、新たな手法を見つけ出さなくてはいけません。ある程度の規模でデジタル施策やデータを活用してストーリーを語り、いかにして人々との間に心に響くつながりを熟成できるかにかかっているのです。ともかく賢くならなければいけません。これまでよりずっと多くの情報やインサイトを利用できるのですから、私は今日のマーケティングというものに対して強い期待を抱いています。

 

3:自分自身に対するマーケティングをやめるべき

 

 モデレーター
つまり重要なのは、エモーション(感情)とイノベーション(技術革新)ということでしょうか。そして、我々が競争力と積極性を持ち、常に現場に意識を向けて素早く決断すること、ということも伝わってきました。最後は、ゲイル、あなたにお願いします。

 

 ゲイル・トロバーマン(アイハートメディア)
私からは2点です。マーケターとして私は、自分自身に対するマーケティングをやめるべきだと思っています。我々自身はターゲットではありません。我々は幸運にもマーケティングという閉鎖空間で生きていますが、消費者はそうではありません。ですから、次のブームを追う時には、本当のアメリカの消費者を追い、いかにして彼らとのつながりを醸成するかを考えるべきです。それを怠ってきたのが、我々が犯してきた最大のミスの一つです。

もう一つは、マーケティングツールとしての音声です。音声は動画施策の代わりになることを覚えておいてください。今後は音声がすべてを動かすようになるでしょう。ブランドとして、そして資産や存在として、自分が消費者からどう聞こえているかを確認してください。音声は今後最も重要なマーケティングツールになっていくでしょう。

 

 

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