『キングダム』大ヒットの背景をCATSデータで読み解く
公開日: 2019/04/26
『キングダム』 公開中
© 原泰久/集英社 ©2019映画「キングダム」製作委員会
<シネマの週末・データで読解:週末興行成績(20、21日)>
1. (1) | 名探偵コナン 紺青の拳(フィスト) | (2週目) |
2. (NEW) | キングダム | (1週目) |
3. (NEW) | 映画クレヨンしんちゃん 新婚旅行ハリケーン−失われたひろし− | (1週目) |
4. (NEW) | シャザム! | (1週目) |
5. (NEW) | 劇場版 響け!ユーフォニアム−誓いのフィナーレ− | (1週目) |
6. (2) | 映画ドラえもん のび太の月面探査記 | (8週目) |
7. (5) | 翔んで埼玉 | (9週目) |
8. (3) | ハンターキラー 潜航せよ | (2週目) |
9. (6) | キャプテン・マーベル | (6週目) |
10. (4) | ダンボ | (4週目) |
※()の数字は前週順位。興行通信社調べ
先週末は『キングダム』が2位に初登場、興行収入40億円も視野に入る大ヒットスタートを切った。本作は累計部数4000万部超の人気漫画の実写映画化。中国春秋戦国時代を舞台に、孤児の少年と中華統一を目指す若き王(後の秦の始皇帝)を描く。激しいアクションや何万人もの軍隊の戦闘シーンも見どころのスケールの大きな物語だ。
原作のある話を実写映画化する方法はさまざま。オリジナリティーを加えて成功するものもあれば、原作に忠実に映像化するアプローチもある。本作は後者の方法で大成功した。原作者と製作段階から協業し、全国公開前の試写では映画としての質の高さの評価に加え、原作ファンから「原作に忠実」とのお墨付きも得た。忠実な実写化は難しいと思われていたがゆえに、実際の作品を見た際の驚きは大きかったであろう。そのメッセージが拡散し、多数のファンや映画関心層の期待を高めた。
ダイナミックな市場の期待の高まりは、公開前に「認知率」を超えるペースで「鑑賞興味率・意欲率」が急上昇していたことにも表れている。公開後の鑑賞者の反応もよく、大型連休の動員も期待できそう。本作は人気ストーリー・キャラクターの劇場版の大成功例として、今後も取り上げられるであろう。
以下は『キングダム』の認知率と意欲率の公開12週前から公開週にかけての推移をグラフにしたものである。オレンジ線は『キングダム』、グレー線は同規模邦画※の平均上昇カーブを示している。
※2017年から2019年にかけて、250~499スクリーン規模で公開された邦画111作品の平均上昇カーブを前提に、12週前の値を『キングダム』の値と揃えたもの
認知率の上がり方に対して、意欲率の上がり方は急激であることが分かる。特に、公開3週前(-3w)以降の意欲率の高まりは、邦画の一般的な傾向を大きく上回る。
下図は各メディアにおける『キングダム』の露出推移を示している。これらから、本作の浸透度の上昇は各メディアでの露出によるものであることが分かる。なお、公開3週前(-3w)の実査直前に「ワールドプレミア完成披露試写会」(3月27日)、公開1週前(-1w)の実査直前に「公開直前イベント試写会」(4月8日)が開催されている。
この宣伝展開が非常に効果的だったことは、以下の意欲/認知率の上昇に表れている。認知が上がっても、その中の意欲の割合、「意欲/認知率」は通常フラットであるが、『キングダム』は下図の通り、公開3週前(-3w)以降大きく高まっている。
意欲率:映画観賞者全体の中で、本作を「絶対に映画館で観る」と回答した人の割合 (「すでに観た」と回答した人は含まない)
※「映画鑑賞者」は、過去1年間に映画館で1本以上映画を観た人
(GEM Partners代表、梅津文)=毎月最終金曜日掲載
◆掲載元◆
毎日新聞:シネマの週末・データで読解 『「原作に忠実」が大成功』(毎日新聞2019年4月26日 東京夕刊)
そのほか、同時期公開作品の浸透度を俯瞰して把握できる「CATS 市場概況レポート+(プラス)」もおすすめです。認知、興味、意欲といった指標をはじめ、公開初週土日の興行収入シミュレーションやテレビ露出量、劇場予告編到達率、さらにはデジタルにおける最新露出状況を、同時期公開作品間で比較いただけます。
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