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音楽鑑賞のデジタルサービスシフトを世代間で比較する
公開日: 2024/11/22

特集:エンタメリーチトラッカーが目指すもの 第3回

GEM Partnersは、エンタメブランドの価値基準を提供するデータサービスシリーズTIGERより「エンタメリーチトラッカー」を提供しています。映像、マンガ・書籍、ゲーム、音楽メディアにおいてエンタメブランドの真のリーチが分かることを目指しています。特集第3回は音楽メディアにおける楽曲接触のデジタルサービスシフトの現状について分析します。
※本記事は2024年11月21日時点に集計したデータに基づいています。

《目次》

 

 

音楽(アーティスト)への接触をメディア横断で捉える

「エンタメリーチトラッカー」では、音楽メディアの接触についても調査しています。チャネル・サービスを横断し、音楽アーティスト単位でどの程度リーチがあったのかを把握できるとともに、当該アーティストの楽曲鑑賞者の属性に加え、聴いたチャネルが定額制音楽配信サービスなのか、Webサービスなのか、記録メディアなのか、あるいはほかの方法なのかが分かります。

データの単位は「リーチpt」で、エンタメブランド(音楽メディアではアーティスト)に接触した延べ人数を日次調査し週単位で集計したもの。どのエンタメブランドにどの程度の人が接触しているのかを可視化しています。

 

サブスク・CD横断でリーチptの高いアーティストを明らかにする

下図は、2024年1月から10月までで、音楽メディアの全チャネル・サービスを横断してリーチptが多かったアーティストのランキングです。『Mrs. GREEN APPLE』が1位、僅差で『YOASOBI』が2位となりました。今年の前半は『YOASOBI』がリードしていましたが、後半になるにつれ『Mrs. GREEN APPLE』がリーチptを伸ばし1位をキープしています。続いて『米津玄師』『Ado』『あいみょん』などソロで活動するアーティストがランクイン。そして『back number』『サザンオールスターズ』『Official髭男dism』と人気バンドが並びます。アイドルグループで最高位を獲得したのは9位の『Snow Man』でした。

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なお、上位アーティスト接触者の性別構成比を見ると、ほとんどのアーティストが概ね男女均等に聴かれていますが、『Snow Man』『BTS』『SixTONES』などのボーイズグループで女性の接触者が8割超え、対照的に『サザンオールスターズ』『Mr.Children』などベテランバンドや『乃木坂46』といった日本のガールズグループでは、男性が7割程度を占めるなど大きく比重が異なります。年代別構成比では『サザンオールスターズ』『松任谷由実』で50代以上が6割以上を占め、高年齢層の割合の高さが突出しています。

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Webサービス「YouTube」とサブスクサービス「Spotify」が圧倒的にリーチpt総数が多い

楽曲を聴いた方法別にリーチptを見てみると、「定額制音楽配信」が最も多く、その次に「Webサービス」が続きます。CDなどの記録メディアやテレビ/ラジオ、ライブ演奏などを含め、その他の方法で聴いた人は少数であることが分かります。

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聴いた方法の内訳をサービス別、形態別などで詳しく見ると、「YouTube」が圧倒的に多く、次に「Spotify」「Apple Music」の定額制音楽配信サービスが続きます。「YouTube Music」「Amazon Music Unlimited / Amazon Music Prime」もそれぞれ5位、6位と、デジタルサービスが上位の大半を占めており、「音楽CD、DVD、Blu-ray、レコード」などの記録メディアは7位となっています。

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次にアーティスト別に視聴方法やサービス別の内訳を見ます。多くのアーティストが「定額制音楽配信」で一番聴かれているのに対し、STARTO ENTERTAINMENT所属の『Snow Man』『SixTONES』『なにわ男子』は「Webサービス」が半数以上を占め、中でも「YouTube」で聴かれた割合が突出しています。

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アーティストのファン層の年齢とデジタルサービスシフトを把握。ファン層が若ければデジタルサービスにシフト?

リーチptランキング上位のアーティストについて、接触方法や接触者の属性を見てきました。音楽メディアでは「定額制音楽配信」が一番多く聴かれており、デジタルサービスシフトが進んでいるように感じられますが、アーティスト別に見るとどうでしょうか。若者に人気があるアーティストほど、定額制音楽配信などのデジタルサービス中心に聴かれているのでしょうか。「定額制音楽配信」「Webサービス」「記録メディア/テレビ・ラジオ/ライブ演奏などその他」別に状況を棚卸ししてみました。

「平均年齢」×「定額制音楽配信で聴いた比率」

下図は、横軸に接触者の「平均年齢」、縦軸に「定額制音楽配信で聴いた比率」をとり、アーティスト別にマッピングしたものです。右に行くほど接触者の平均年齢が高く、上に行くほど「定額制音楽配信(サブスク)」での接触割合が高くなります。

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全体としては平均年齢が若いほど、サブスク利用が高い傾向にあることが分かります。平均年齢が高く、サブスク割合が低いチャートの右下には、活動歴が長いアーティストが多くマッピングされました。サブスク配信が解禁されているアーティストも多いですが、ファン歴が長く、すでに購入済みのCDなどで楽曲鑑賞していると考えられます。但し、最も下に位置している『山下達郎』は、一部の楽曲を除いて定額制音楽配信サービスでの配信が行われていないため、突出してサブスク割合が低くなりました。

また、平均年齢30歳前後にもサブスク割合が低いアーティストが集まっています。これらSTARTO ENTERTAINMENT所属の『KinKi Kids』『Snow Man』『timelesz』『SixTONES』WEST.』『Aぇ! group』や『SMAP』『モーニング娘。』などは、サブスクの全面解禁に至っていないアーティストになります。

「平均年齢」×「Webサービスで聴いた比率」

下図は、横軸に接触者の「平均年齢」、縦軸に「Webサービスで聴いた比率」をとったものです。右に行くほど接触者の平均年齢が高く、上に行くほど「Webサービス」での接触割合が高くなります。

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Webサービス割合が高いアーティストは30歳前後に多く、『Aぇ! group』『WEST.』『KinKi Kids』『Snow Man』『モーニング娘。』『SixTONES』』『timelesz』、前述したサブスク全面解禁に至っていないアーティストがマッピングされました。Webサービスメディアの内訳を確認すると、主にYouTubeでの接触が目立ちました。

「平均年齢」×「記録メディア/テレビ・ラジオ/ライブ演奏などその他で聴いた比率」

下図では、横軸に接触者の「平均年齢」、縦軸に「記録メディア/テレビ・ラジオ/ライブ演奏などその他で聴いた比率」を取りました。そのため右に行くほど接触者の平均年齢が高く、上に行くほど記録メディアなどのデジタルサービス以外で聴いた割合が高くなります。

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全体としては接触者の平均年齢が高いほど、記録メディアなどで聴かれた割合が高くなる傾向にあり、若年層でのデジタルサービスシフトが進んでいることが推察できます。

プロモーション施策により、平均年齢と関係なく接触方法が選ばれるケースもあります。平均年齢が低いなかでも『アイドルマスター』は平均よりもかなり上に位置しています。こちらはオリジナルストーリーの閲覧にCD同封のシリアルコードが必要となるなど、CD購入者限定で楽しめるコンテンツを提供していることに起因していると考えられます。同じく若年層に人気のある『timelesz』はデジタル配信を行っておらず、ランダムトレカ付き、DVD付きといった異なる特典を備えたCD販売のみを行っています。

「エンタメリーチトラッカー」で明らかになったように、様々なメディアで音楽アーティストの楽曲に接触が可能ななか、「アーティストの真の人気度合」を把握するには、メディア横断でリーチptを測る必要があります。さらに、アーティストによって接触チャネル・サービスの構成比が異なるほか、鑑賞者の年齢が低ければデジタルサービスの利用が高めとはなりますが、その度合いも異なります。アーティストの真のリーチを把握するためには、チャネル・サービス横断でリーチを把握するとともに、接触者の属性、聴いた方法と具体的なサービスなど内訳を詳しく分析する必要があります。

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特集:エンタメリートラッカーが目指すもの