「GO GLOBAL!日本から世界へ発信!日本のエンタテイメントの未来!」レポート
公開日: 2025/03/19
コンサート、フェスなど各種ショーの関係者が集う「第12回 ライブ・エンターテイメントEXPO」(会期:2025年1月22日~24日 会場:幕張メッセ)にて1月23日、特別講演「GO GLOBAL!日本から世界へ発信!日本のエンタテイメントの未来!」が行われました。日本アーティストのグローバル進出について詳しい事例をもとに共有するとともに、新設された国内最大規模の国際音楽賞「MUSIC AWARDS JAPAN」の開催についての紹介がありました。本記事では、その一部をレポートします。
※本記事で触れられている内容は2025年1月時点の情報です。
田村 優
株式会社インクス トゥエンター:代表取締役
中川 悠介
アソビシステム株式会社:代表取締役
モデレーター
柴 那典
音楽ジャーナリスト
- 『新しい学校のリーダーズ』『YOASOBI』など北米で存在感を増すJ-POP
- 現地のパートナー企業との協業が海外ツアーを成功へと導く
- J-POPを世界に発信する、新たな音楽アワード「MUSIC AWARDS JAPAN」
『新しい学校のリーダーズ』『YOASOBI』など北米で存在感を増すJ-POP
冒頭にモデレーターを務める音楽ジャーナリストの柴那典氏が、近年日本アーティストによる海外公演や、グローバルヒットチャートへのランクインなど、日本音楽業界のグローバル進出が進んでいることを共有。グラミー賞を主催する「ザ・レコーディング・アカデミー」から、2025年の音楽トレンドとして、「J-POPの世界的なブーム」が発表されるなど、世界的にもJ-POPの影響力が高まっていることが紹介されました。
アソビシステム代表取締役の中川悠介氏は、コロナ禍以降、北米でアジアのパワーが強まっているとし、「2010年代まで、北米ではアジアの音楽はニッチなものとして扱われていましたが、近年は当たり前な存在になりつつあると感じています」と語りました。
中川氏は、昨年所属アーティスト『新しい学校のリーダーズ』が、アメリカ最大級の野外音楽フェス「コーチェラ・バレー・ミュージック・アンド・アーツ・フェスティバル」に出演した際、自身が感じた変化について語りました。「『YOASOBI』『Number_i』など日本のアーティストはもちろん、K-POPアーティストの出演が増えており、イベント全体を通してアジアの盛り上がりを感じました」。インクストゥエンター代表取締役の田村優氏も、自身が携わった『初音ミク』のパフォーマンスを配信で観た際、ファンの熱狂ぶりから、世界で日本のポップカルチャーが注目されていることを感じたといいます。
一方、モデレーターの柴氏は、世界的なJ-POPの人気を語る上で、アニメの存在が欠かせないとし、パネリストの2人も参加した北米最大級のアニメコンベンション「Anime Expo」の様子について問いかけました。田村氏は「コロナ禍以前とは、イベントの様子が大きく変わったと思います。コロナ禍中にNetflixやPrime Videoといった配信サービスで、世界的に日本のアニメに触れる機会が増えたのだと考えます」と推測。中川氏も直近のイベントの変化について、「今まではいわゆる『アニメ好き』の人が集まっていましたが、昨年行くと、親子や友人同士で来ている人もいて、より一般に開けたイベントになったと感じました」と言及しました。そしてアニメだけでなく、ボーカロイドやVTuberといったネットカルチャーや日本食のブースなど、日本文化が幅広く楽しまれていたと共有。アニメの人気拡大を通じて日本のカルチャーがより海外で親しまれることで、音楽のシェアも徐々に伸長していくであろうと考えを述べました。
現地のパートナー企業との協業が海外ツアーを成功へと導く
2024年には『新しい学校のリーダーズ』をはじめ、『EVE』『YOASOBI』『Ado』『BABYMETAL』『藤井風』など多くのアーティストが海外ツアー・ライブを実施。現場での体験をパネリストが披露しました。田村氏は、『Eve』が初めてアジア7カ国でツアーを行ったことを明かし、ファンの熱狂ぶりについて共有しました。「インドネシアのジャカルタではファンが全力で熱唱していて、その盛り上がりぶりから海外ファンの熱量を実感しました」とし、事前に配信を通してアーティストに触れることで、よりリアルなイベントへのモチベーションが高まったのだと述べました。
一方、『新しい学校のリーダーズ』は2024年の6月からヨーロッパ、北米、中米、アジアと広域での海外ツアーを実施。中川氏も海外ファンの熱量の高さに驚いたと述べた上で、「メキシコでは当初、定員2,000人で開催する予定だったのですが、チケット販売を開始すると8,000人の応募が集まってしまいました。会場は受け入れ可能だったので、急遽ライブの規模を拡大することになりました」と明かしました。
続いて、日本のアーティストがより一層海外で活躍する上での課題について語られました。中川氏は、海外公演の障壁の1つとして、北米に渡航する際のビザを挙げました。「アーティストに紐づいたサポートメンバーや、照明といった技術スタッフが帯同するのですが、メンバーが一部変更になると申請が却下されることもあります」。また、申請から承認まで時間が読めず、実際にビザが間に合わなくなり、『FRUITS ZIPPER』の北米公演を中止する事態になった事例も共有しました。
また、慣れない海外活動ならではのトラブル対応が重要になると語る中川氏。「盗難にあったことがありますし、現地の日本人に詐欺にあったこともあります。また、現地の技術スタッフと上手くコミュニケーションが取れず、音響機材を一切触らせてもらえなかったことがありました」。田村氏も同様に、中国ツアーを行った際、現場に到着すると機材が届いていなかったなど、海外では不測の事態が発生し急な対応を迫られるケースがあると述べました。
中川氏は、現地でのトラブルを解決するためにも、海外で信頼できるパートナーの獲得が重要であると明かしました。また、「海外でライブを行うだけではなく、現地のエージェント、レーベル、メディアといったパートナー企業と信頼関係を築くために何ができるか、目的を持って1つひとつの海外渡航に臨むべきです」と強調しました。
J-POPを世界に発信する、新たな音楽アワード「MUSIC AWARDS JAPAN」
最後に、モデレーターの柴氏から、今年5月に京都で開催される日本最大級の国際音楽賞「MUSIC AWARDS JAPAN」について紹介されました。60以上の受賞部門があり、最優秀楽曲賞などメジャーな賞はもちろんのこと、「Top Global Hit From Japan」「最優秀アジア楽曲賞」など、日本・アジアのアーティストを世界に発信するための賞が用意されていると説明。同氏は、個々のアーティストの魅力発信にとどまらず、J-POP全体でファンを掴んでいくために、新たなイベントが今後も新設されていくことを期待しているとし、ディスカッションを締めくくりました。 ※本展は業界関係者のための商談展です。一般の方はご入場できません。
- 第1回:「グローバル視点から考える日本グッズ市場の可能性」レポート
- 第2回:「日本のライブ・エンターテイメント産業の進化と可能性」レポート
- 第3回:「GO GLOBAL!日本から世界へ発信!日本のエンタテイメントの未来!」レポート
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