映画市場の根本変化とAIによる革命と未来(1/2)~ヨーロッパの映画業界が見る"The Big Picture"
公開日: 2025/04/04
第75回ベルリン国際映画祭の併設マーケット「EFM (European Film Market)」では、プロデューサー、バイヤー、マーケター向けに"Industry Sessions"として、最新のトレンドや方法論を学べるセミナー、様々な分野の第一人者らが集まるパネルディスカッションが多数開催されました。そのなかでも、フォーカステーマの一つであるAIを軸に、プロデューサー、アナリスト、未来予測のプロフェッショナルらが、ヨーロッパの映画市場の現状のトレンドと、今後の方向性、課題について語ったセッション、" The Big Picture: Decoding Newest Industry Trends and Shifts"の内容をレポートします。前半では、市場変化とそれを踏まえた新たな取り組みについて語られました。
※本記事で触れられている内容は2025年2月時点の情報です。
安定的なヨーロッパ映画市場を取り巻く根本変化
ヨーロッパ映画興行概況
冒頭、European Audiovisual Observatory(※)の映画アナリスト、マニュエル・フィオローニ氏が、2024年のヨーロッパ映画市場についてプレゼンテーションを行いました。同氏は「昨年、ヨーロッパで何枚の映画チケットが販売されたと思いますか?」と問いかけ、その答えとして8億4,100万枚という数字を示しました。そして、2023年からわずか2%の減少であり、「良くも悪くもなく、安定しています」と評価。入場者数が増加しなかったのは2020年以来初だが、大幅な落ち込みもなく、パンデミック後の「New normal(新しい常態)」に入ったと分析しました。
※ 欧州評議会の一部門で、本拠地はフランス・ストラスブール。ヨーロッパの視聴覚(Audio Visual) 産業に関するデータを収集・分析・報告することをミッションとする
EU域内では約6億4,000万枚が販売され、前年比3%減と発表。依然としてフランス、イギリス、ドイツ、イタリア、スペインが主要市場を占めるとしました。興行収入は66億ユーロで前年比1%減にとどまり、世界の映画市場におけるヨーロッパのシェアは24%と、過去8年で最も高い水準を記録したことを明かしました。
フィオローニ氏は、2024年に中国、北米で入場者数が減少したなか、ヨーロッパ市場が好調だった要因として、ローカル作品の健闘を挙げました。フランス映画“A Little Something Extra(原題:Un p'tit truc en plus)”や、トルコのアニメ映画“Rafadan Tayfa: Hayrimatör”、ブルガリア映画“Gundi: Legend of Love”などが、各国内市場で大きな成功を収めたことを紹介。そして、2024年のヨーロッパ映画の市場シェアは33%に上昇し、近年では高い数値に達したといいます。
最後に同氏は、コラリー・ファルジャ監督作品『サブスタンス』や、アレクサンドル・ド・ラ・パトリエール監督作品“The Count of Monte-Cristo”のように、今後もヨーロッパ映画がグローバル市場でも成功を収められるかが重要だとし、締めくくりました。
配信とWEB動画の成長
ヨーロッパ映画興行概況の共有に続き、リサーチ会社Ampere Analysisの共同創業者で、エクゼクティブ・ディレクターのギー・ビッソン氏が、映画業界で巻き起こっている変化について、グローバル視点で分析したプレゼンテーションを行いました。
同氏はまず、コロナ禍以降のグローバル映画興行収入の推移に触れ、劇場市場は回復傾向にあるものの、依然パンデミック前の水準には届いていないとの前提を共有。続いて、グローバルでの2024年の全ウィンドウを横断した映画市場規模が、約8,000億ドルと示し、約半数を占める劇場、購入/レンタル、無料/有料のテレビ放送が縮小傾向にあり、残り半分の「配信」と「WEB」が成長を牽引していることを明らかにしました。そして、このような収益モデルの変化が、映画製作の資金調達や戦略の根本的な変化を意味し、業界の勢力図の再編成につながると述べました。さらに、その変化の中心には視聴者の配信への移行があり、それが業界全体の構造を再定義していると強調しました。
また、業界の動向として、大手スタジオ、配信サービス企業がハリウッドでのストライキを経て、「より少ない作品数でも十分」と判断し、その結果、映画製作の発注数は約20%減少、製作費も10%減少したと発表。一方で、「それでも映画市場全体が横ばいであるということは、大手以外の独立系製作会社や配給会社がその差を埋めていることを意味します」と分析しました。最後に、同氏は最新のトレンドとして、配信サービス用に製作される映画について言及。コロナ禍中では、製作された映画の内、約半数が配信サービスでプレミア公開されていたのに対し、現在は約17%と減少し、劇場公開が再び重視されていることを共有しました。
映画製作を持続可能にするためにーカリン・チェン氏が語る新たな挑戦
フィオローニ氏とビッソン氏が語った映画産業の現状と構造変化に対応するかのように、米国でプロデューサー兼ディストリビューターとして活躍するカリン・チェン氏から、新しいビジネスモデルの必要性と、同氏の取り組みが紹介されました。
同氏は、中国・香港のインディペンデント映画を北米で配給する立場として、製作から配給までを包括的に捉える視点を提示しました。そして、特にドキュメンタリーを中心に、現在のプロジェクト単位の資金調達モデルが「最も持続不可能」であると指摘しました。買い手が減少する市場では、この従来型モデルは限界に直面しているとし、プロジェクト単位で考えるのではなく、独立したIP(知的財産)を構築し、世界観を創造することを重視すべきであると主張。チェン氏自身も、グラフィックノベルやビデオゲームなどの多岐に渡るメディアを通じて世界観を構築し、そこから複数の作品を展開するIPベースの製作に取り組んでいると語りました。
現在、劇場収入の減少に直面し、収益源の維持が難しくなるなかで、「収益モデルの革新」が重要になると語るチェン氏。 「誰もが参加できる開かれた映画製作環境を守るために、新たな収益構造と業界横断的な協力が必要です」 とし、創造性と、挑戦を恐れずに進む姿勢が、未来の映画製作の鍵になると強調しました。
- 第1回:開かれた映画祭としての可能性
- 第2回:今、AIが映画ビジネスにもたらすもの(1/2)~創造性を奪うのではなく、サポートする
- 第3回:今、AIが映画ビジネスにもたらすもの(2/2)~正しい期待値設定が生産性向上をもたらす
- 第4回:映画市場の根本変化とAIによる革命と未来(1/2)~ヨーロッパの映画業界が見る"Big Picture"
- 第5回:映画市場の根本変化とAIによる革命と未来(2/2)~生成AIは「恐れるもの」ではなく「共に設計すべきもの」
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